コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS ( No.232 )
- 日時: 2015/07/07 16:10
- 名前: Garnet (ID: KBFVK1Mo)
「まいごのまいごのこねこさん…あなたのおうちはどこですか…」
お家を訊いても、わからない。
名前を訊いても、わからない。
にゃんにゃんにゃにゃん、にゃんにゃんにゃにゃん。
泣いてばかりいるこねこさん。
い、ぬ、の、お巡りさん…
困ってしまってわんわんわわん、わんわんわわん…
「……うわあぁぁっ」
歌詞を紡ぐ度、涙が溢れた。
だって、この歌は、陽菜の主題歌だから。
——陽菜。ママたち、お仕事だから…良い子にしてるのよ?
——じゃあな、陽菜。
そう言って、ふたりは、陽菜の頭を撫でてくれた。そして、別の大人に 陽菜を任せて。
小さくなる後ろ姿に、その人と一緒に手を振った。
——う、うそ…
大人の人が、小さく声をあげた。
その目線の先には、テレビに映った、原型を留めずに海に浮かぶ 飛行機。
最早それは、金属の塊としか言えなかった。
陽菜が憶えているのは、此処まで。
でも、奈苗ちゃんのお陰で 盗み聞きが上手くなってしまったから、聞いちゃったんだ。
あの子は、「迷子の子猫」だった、って。
鼻をかんだティッシュで ポシェットがパンパンになってきたので、近くにあった公園に入った。
積もりはしないものの、少しずつ雪が強くなってきている。
不気味な空間から早く立ち去ろうと、ポシェットをひっくり返した、その時。
小さな高い音と、かさかさという物音が聞こえてきた。
「誰…?」
たった1つの遊具、滑り台の奥の茂みから それは聞こえてくる。
ごみを捨て終えると、その正体を探るべく、ゆっくりと茂みに近付いた。
水滴のついた冷たい草を、そっと退かしてみる。
すると、比較的新しそうな段ボールが覗いた。
カタカタと音をたてるそれに、思いきって 茂みに潜り込むと、なんと、其処には———
- Re: COSMOS ( No.233 )
- 日時: 2015/07/09 23:10
- 名前: Garnet (ID: KBFVK1Mo)
「わ、ワンちゃん?!」
ふわふわとした雪色の毛。
青い左目と、奈苗ちゃんと同じな翠の右目———つまり、オッドアイ。
垂れた耳。
可愛いというよりかは、『美しい』という感情の方が勝る、不思議な仔犬がいたのだ。
仔犬は 寒さに震えていた。
「ひとりなの?ママはいないの?」
そう言うと仔犬は、白く短い睫毛をパチパチと動かして、箱の縁に前足を引っ掛けた。
「ん?」
何かを指しているつもりなのだろうか。
そう思って草とうっすら積もり始めた雪を両手で分けてみると、箱の側面に字が書いてあるのに気が付いた。
黒いペンで書かれたその平仮名は、角張っていて、所々滲んでいた。
「ひ、ろっ、て、く、だ、さ、い……拾って下さいっ?!」
「ワン!」
「うわっ。」
初めて吠えられて、吃驚した。おまけに尻餅1つ。
「…ねえ」
悴んだ手を擦りながら、訊いてみた。
「家に、来る?」