コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: COSMOS ( No.240 )
日時: 2015/07/17 00:28
名前: Garnet (ID: KBFVK1Mo)

Short Story・a certain three brothers life・Ran's story


「あー、疲れたあ…」

目の前には、ボロボロになるまで使い込んだ過去問集。
元テニス部の先輩の厚意で、頂いたものだ。
シャーペンをノックして 指で芯を仕舞った。少しチクリとして痛いが、こんな習慣も 中3になれば慣れるものだ。
机にぶつけて芯を仕舞う…なんて乱暴なことはしない。

私の居る部屋には 生憎勉強机なんていう贅沢なものは無いので、冷たい床に薄っぺらい座蒲団を敷いている。
足が冷えるわ痺れるわ。
大人たちも、少しは此方の身になって欲しいものである。
ビリりと痛む右足を引き摺り、曇った窓を 手で拭った。外は雪が降り頻っている。

本番まで、あと少し。
終わってしまえば、桜が咲けば。
皆より一足先に、この生活から抜け出せる。

時計を見れば、もうお昼になっていた。

「ああっ!いっけない!皆のご飯が!!」

普段のご飯は ほぼ毎日私が作っているけど、学校が休みになると、週1回に減らしてもらえる。
しかし、今日がその当番だったことを、今の今まで忘れていたのだ。
まだ痺れの残る足で1階に駆け降りたことは、言うまでもない。


食堂のドアを勢いよく滑らせたが、其所には 誰の姿も無かった。
どおん、と煩い音が響き渡るばかりである。

「あれ…?」

前にも同じような事をしでかしたことがあったが、その時には 皆が悪戦苦闘してご飯を作ってくれていた。
遂に愛想を尽かされたのか、なんて馬鹿げたことを考える。

取り敢えず中に入って 流しの方に行ってみると、メモ書きが置いてあった。
どうやら、皆 用があって出掛けてしまったらしい。
そういえば、奈苗ちゃんは 幼稚園でクリスマスパーティーをやるとか言ってたっけ。
拓は 学校でサッカー部の中練習、大人たちは、役所に色々と手続きやらがあって忙しい。
小学生グループも高校生グループも、何かしらあるようだ。

『昨日のシチューが朝で一人分残ったから、温めて食べてね。おつかれさま、蘭ちゃん。』

この綺麗な文字は、清水さんか。
隣に置いてある シチューの入ったお皿は、丁寧にラップしてあった。
部活を引退してから少食になった私には これくらいで丁度良い。

皿を電子レンジにかけ、一人きりの、暇な3分間を過ごした。


なっちにでも電話しようかなあ………なーんてね。

Re: COSMOS ( No.241 )
日時: 2015/07/19 19:04
名前: Garnet (ID: J/brDdUE)

あ、そういえば。
入試といえば、面接もあるんだ。しかも集団面接。

私が受験するのは、この辺りでは そこそこ偏差値の高いところ。
特待生制度がある高校を調べまくって、条件がしっくり来る所を 漸く見つけられたのだ。
これは運命だとこれまた勉強しまくり、初めての校内模試の偏差値から15以上は上げた。
頑張ったよね、私。
…"街"にあって、此処からだと、自転車を走らせれば二、三十分。
その辺も悪くはい。

志望理由。うん、言える、完璧。
交通の便。只今言いました通り。
時事について。多分、大丈夫。
入学してからしたいこと。部活と勉学の両立。海外研修の参加を希望。それから…部活。
あれ?部活、って。どうしよう。このまま、テニスを続ける?それとも……。

小川を流れる枯れ葉が、突然、岩に張り付いた。
水は押し寄せる一方だ。岩から離れられない。

古くなってきたソファーに、身を投げ出してみた。
正解こたえは、出てこない。
今まで、見て見ぬふりをしてきた問題だ。もう、成り行きで テニスを続けるつもりだった。
軽く考えていいとは、思えない。思っていない。


——最後まで、馬鹿だよね…私…


なっちの涙が蘇る。
そっか。私、まだこのことを忘れられなくて…。

そこまで考えかけたところで、電子レンジの加熱終了音が聞こえてきた。
取り敢えず、食べてしまおう。