コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS ( No.274 )
- 日時: 2015/08/30 23:20
- 名前: Garnet (ID: /JJVWoad)
「エマ。今日はお父さん居ないの?」
知美ちゃんが隣でペタペタとスリッパを引き摺る音の中、前を歩くエマに訊ねる。
「Bath……じゃなくて、トイレの隣にドアがあるでしょう?その部屋で、寝てるかコンピューター使ってるかだね。」
「へえ。」
エマが左を指さした先に、"お手洗い"と書かれた電気のスイッチの隣に、プレートも何も無いドアを見付ける。
金色のノブがキラキラ光っていた。
「パソコンあるんだ?すごいね。」
知美ちゃんが そう言って目を輝かせた。
コンピュータ室でしか触ったことがないらしい。
彼女曰く、ダブルクリックが難しいらしいけど、私は 幼稚園の図書室でやっても、普通に出来てしまった。
前に来たときの リビングの前も通りすぎていく。
「実は、就職難でさ。外国人だから、って受け入れてくれる所が無くて。そういう差別が無いのは、建設の労働とか、清掃員くらい。
でもお父さん、怪我が治ったばっかりだし、抑、日本に来たのは体を休める為だから、そういう職には就けないんだ。
それで、お父さんの同僚の紹介で コンピューター関連の仕事をすることになったから、今のうちに 色々練習してる。
元々何でも出来ちゃう人だから、苦労はしないだろうね。
それに、貯金には余裕があるから。」
「何か、世界が違うね。」
私の言葉に、エマが苦笑する。
彼女は髪を右サイドで結うと、此所だよ、と言って、お父さんの部屋と同じ、金色のドアノブに手を掛けてドアを開けた。
同時に、ふわりと 花のような香りが中から押し寄せてくる。
部屋は 淡いピンクと白で統一されていて、とても綺麗だった。
ピンクのベッドと窓の端で纏まっているカーテンが陽に照らされて、其所だけ桜が咲いたようだ。
床には、窓際の勉強机(なんだろうけど、どう見ても家具店のCMに出てくるような 一人暮らしの大人が使うやつ)の近くには 高級そうな桜色のマットが敷かれていた。
こういう光景に免疫が無い私達には、なんとも眩しいものだ。
「うわあ、いいなー。女の子の部屋って感じ。家なんて、二段ベッドをドンドン、か、布団をずらーって並べるだけだよ。」
知美ちゃん。御尤も。
「えー、二段ベッドも布団も良いじゃん。嫌いなの?」
一方で、エマは 彼女の言ったことの意味が解らないようで 笑いながらそう言う。
知美ちゃんと私はじっと見つめ合うと、小さく溜め息を吐いた。
無自覚って怖いね、という思いといっしょに。
「んー。じゃ、好きなように座ってていいよ。
枕の横に置いてあるクッションを使っても良いし、あの椅子に座っても良いから。何処でもどうぞ。
私、お茶取ってくる。」