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Re: COSMOS ( No.34 )
日時: 2015/06/13 18:00
名前: Garnet(コメント返信です!) (ID: oOaw6UvZ)

「「行ってきまーす!」」
「はい、行ってらっしゃい。」

私たち小学生組は 鈴木さんに送り出され、7時半に『此処』を出た。
因みに、女の子の1年生は私だけ。
残暑が静かに、陰になっていく。
1人ぽつんと 列の後ろを歩いていると、風がやけに冷たく感じた。

夏休み以降、奈苗ちゃんとは碌に話せていない。
あの2人も 秘密を知ったようだった。

でも…。
これで良かったのかもしれない。
1人は慣れてるし、彼女にも そろそろ新しい世界を見て欲しい。
そんな想いがあった。

ため息をつこうとした、その時。

「知美ちゃ〜ん!」

奈苗ちゃんの声がした。

不思議な感じ。
いつも聞いているのに、今日は すごく懐かしく感じて…。

「ハイ、これ。」
「あ…体操服!忘れてたんだ…。ありがとう。」
「いいの。」

奈苗ちゃんが、わざわざ 忘れ物を届けるために来てくれたのだ。
小さな手で、ちょっと無理して 袋を握っている。

私は紐を解き、中身を確認する。

「白シャツ、ハーフパンツ、紅白帽子。
 ちゃんと揃ってる。良かったぁ…。」
「鈴木さんが、帽子にアイロンかけてたよ。…いつものことだけど。」
「…お母さんみたいだね。」
「ほんと…」

あぜ道みたいに 何も無い広い道路を、ただただ歩いて行く。
何を考えているのか、奈苗ちゃんは まだついてくる。
流行りのJポップを歌っているみんなは、随分と小さくなっていた。

「私、決めたの。」
「え?」

奈苗ちゃんが、意を決したように言った。

「私立の幼稚園、行こうと思う。小学校受験もする。」
「え…?う、嘘……?」
「本当。」

一瞬、すべてがモノクロになった。
何か、怖いよ…。
また 私、置いていかれちゃうの?

深呼吸をすると、色付きの世界に戻った。


翡翠の瞳。
赤みがかった 艶やかな茶髪。
ホントは、少し、羨ましかった。

彼女の髪が、太陽に照らされて 金色に光った。