コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS ( No.49 )
- 日時: 2015/04/23 18:12
- 名前: Garnet(コメント返事!) (ID: J/brDdUE)
「トモ!今日、何か用事ある?」
「無いよ。…もしかして、引っ越しの整理が終わったの?」
「Yes!お父さん、もう遊んでいいって言ってたよ!」
帰り道、私は エマと2人になった。
翔君と麻衣ちゃんは、塾があるから と先に帰ってしまったのだ。
「そっか。じゃあ、何処で遊ぶ?」
エマのことだから 街に出たい、って言うかと思って、ちょっと身構えていたんだけど…
「トモの家!!」
突拍子もないことを、さらりと言ってのけた。
「ここだよ。『私たち』の家。」
「うわー。すごくBIGだね。」
案の定、彼女は『私たち』の意味に気がつかなかったようだ。
「血の繋がっていない家族が、ここには沢山住んでいるの。
3歳の女の子から、高校3年生のお兄さんまで、色々なんだ。」
そう言いながらドアを引くと ギィ、と嫌な音が鳴った。
「え…じゃあ…トモには…」
「パパもママもいない。自分から捨てたよ、あんな人間。」
「そんな…」
きつい言い方をしながらも、少し悲しくなった。
エマとあのお婆さんに 申し訳ない気がして…。
気にしないで、と口を開こうとしたその時、奈苗ちゃんが奥から走って出てきた。
「お帰りなさい、知美ちゃん。今日も1番だよ…って、誰?その人。」
奈苗ちゃんは、エマを怪訝そうに見つめた…ような気がする。
エマも、同じように奈苗ちゃんを見つめていた。
気まずい雰囲気が漂っている。
「えっと…。
な、奈苗ちゃん!この子はね、エマ・ハリス。最近 アメリカから引っ越してきたんだよ!」
「…そう。」
アメリカ、という単語に、一瞬だけ目を見開いた。
「まだ、Japanese上手く話せないの!…Emmaって言いマス。よろしくね!!」
エマがいきなり話し方を変えたので、びっくりした。
よくアニメとかで見るような、イントネーションがおかしいのに 文法は合っている、そういう話し方。
「私は…奈苗。Nanae・Ailey(エイリー)です。」
奈苗ちゃんまで、英語っぽく話し出した。
もう…
何が何だか、訳分からないよ…
布団から抜け出し、星空を見上げた。
秋になって空気が澄んできて、更に星が増えている。
やっぱり…
朝言ってたことは、私を安心させる為だったの…?
窓を開けようとして伸ばした手が、止まった。
後ろから 他のルームメイト達の 静かな寝息が聞こえてきたからだ。
みんなを起こすわけにはいかない。
私はカーテンを半分だけ閉め、奈苗ちゃんの部屋へと向かった。
一番奥の部屋。
角部屋だ。
隙間から蜜柑色の光が漏れてくるドアを 小さくノックすると、どうぞ、と微かな返事が返ってきた。
「どうしたの?知美ちゃん。」
豆電球だけ灯してある中、奈苗ちゃんがスケッチブックを開いていた。
「何となく…眠れなくて。」
「…」
「見ても、いい?」
「うん」
そこには、エマの似顔絵が描いてあった。
「あ…」
「やっぱり、似てると思った?」
「うん…この子…もしかして…」
ページを 前の方に捲る。
そして、現れた似顔絵は 『あの子』のものだった。
「私、絶対 何かあると思うの。———エマ・ハリスって子。」
碧の瞳に、私の顔が映りこんだ。
「全然気づかなかったよ…」
エマを『あの子』を見比べてみると、目元の雰囲気がそっくりなのが 分かった。
柔らかくも 鋭い目つき。
そして、奈苗ちゃんへと視線を移すと、とんでもないことに気がついてしまったのだ。
二重なのに切れ長。
最近目立つようになってきた、長い下睫毛。
2人と同じような、目元の雰囲気。
私達は、一番 近くにあった真実に、気がつかなかっただけだったんだ。
もしかして この3人は———