コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS ( No.64 )
- 日時: 2015/04/25 20:09
- 名前: Garnet (ID: z5Z4HjE0)
はぁ…。
来年になったら、受験生なのか…
こんな季節だと、何となく 未来に不安を抱いてしまう。
セーラー服が 妙に重く感じた。
「えー…では、明日から定期テスト期間だ。
部活は 今日の午後練習から無くなるから、各自 しっかり学習に取り組むように。」
「「はーい」」
中学生には耳が痛い話の締めで、ホームルームが終わった。
「蘭〜。ラケット持って帰る?」
なっちがパタパタと走って来た。
ワークと教科書を鞄に詰め込み、2人でゆっくりと教室を出る。
「んー…。今回は本気出そうと思ってるんやけど。」
「あはは、ごめんごめん。
高校、特待生制度で入れるようにって、夏休みから燃えてたもんね。」
そう。普通に入学したんじゃ、莫大なお金が必要になる。
ウチみたいなアホは尚更。公立に失敗したからって、私立に入れてもらえるとは思ってないし。
でも…奈苗ちゃんは…
「どーしたの?暗い顔しちゃって。」
「ううん。何でもあらへん。」
「…そ。」
しばらく沈黙のまま 階段を下り始める。
大きな鏡に2人が映った時、また情けなくなった。
ウチは 背も高いし、髪の毛も茶色だし、可愛い顔でもない…
それに比べて、なっちは 『こうあるべき!』という女の子。
「ねえ、蘭。」
「?」
階段が終わったのと同時に、なっちが いきなり真剣そうな声を出した。
「拓——先輩、どうなの…?最近。」
「え?」
思わず立ち止まった。
拓、という名前に、その辺を歩く女子が数人 こちらをチラチラと見てきた。
「なんや…あのボケ、また何かしでかしたんか?」
拓はウチにとって、兄ちゃんみたいな存在。
結構今まで やり合ったりした事もあったけど、ホントはいい人なんだよね。
「違うよ。…蘭、大丈夫なの?もう 嘘はいいの。」
「嘘て……。何や 人聞きの悪い。」
ウチの言葉になっちは口を開きかけたが、後ろから拓が下りてきたのに気づくと 構わず走り去ってしまった。
「行ってしもた…」
「よ!ボケナス。」
呆然と立ち尽くしていると、拓に肩を叩かれ、ウチらは2人で帰ることになった。
「ボケちゃうわ!ボケ!」
「な、何ぃ?!」
「いいから。はよ帰ろ。」
「…」
- Re: COSMOS ( No.66 )
- 日時: 2015/02/11 17:34
- 名前: Garnet (ID: djZseB/4)
4時半になり 夕ご飯を作るために、勉強は半ば強制的に終了となった。
人参を切っていると、知美ちゃんが台所に顔をだした。
「知美ちゃん…ごめんな、誕生日 お祝いしてあげられんくて。」
「大丈夫。知美なんかより、奈苗ちゃんを祝ってほしいもん。」
奈苗ちゃんを———?
「なんで、知美ちゃんは そんなに謙遜するんや。
たまには 我が儘言うてもいいんやで?」
「だって…」
知美ちゃんは、視線を落とし、俯いた。
それと同時に 上着の裾をぎゅっと握っている。
何となく…考えていることは分かる。
「誰しもが皆、デキる奴ばっかだったら、つまらんよ。
ウチも、奈苗ちゃんは 憧れみたいな存在やもん。拓や黒江さんだって、それは同じだと思う。」
「そう…かな。」
潤んだ瞳が ゆっくりとこちらを向いた。
「そやそや!…知っとる?拓な、小学一年で ようやく、『え』が書けるようになったん!
笑ってまうやろ?」
「へえ。」
こわばった表情が、ようやくほころんだ。
知美ちゃんは 字が上手だから、敢えてこのことを話した。
「じゃあ…一緒にカレー作ろう、知美ちゃん。」
「うん!」
大きめの台を引っ張り出すと、彼女は嬉しそうに飛び乗った。