コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS ( No.86 )
- 日時: 2015/02/22 09:52
- 名前: Garnet (ID: .NK6C5YY)
「そんな…」
声にならない声が、漏れた。
「ひどいよ…。みんな、無責任だ…
母親なのに、父親なのに、子どもが生まれたら それでおしまい?」
——実は、お母さん…
遠いとおい所に行くことになったの。
そこには あなたが来ることは出来なくて、
私も、あなたのいる所には 戻ることができない…
あ。
あと、この事も言っておかないと。
…お父さんも、お母さんと同じところにいる…って。
ちょっと難しかった?
ごめんね。
でも これも、
奈苗…あなたの為なのよ。
———辛いときは、夜空を見上げてごらん。
そこには たくさんの先人たちがいるから。
雲で空が覆い尽くされていても、見上げてごらん。
その向こうには、必ず答えがある。
心の瞳で、見るんだ。
2人の声が、聞こえた。
もう何度も 頭の中でリピートした、2人の声。
でも
それは絶対に、テープのように 擦り切れたりはしない。
みんな、同じように 持っているんだ。
決して癒されることのない、深い切り傷を。
「「奈苗ちゃん…」」
短い爪が、掌に食い込む。
涙が、あふれる。
「奈苗ちゃん、帰ってもええんやで…?」
蘭ちゃんが言った。
私は、首を力いっぱい振った。
「私たち…生まれ変わっても…、
折角 神様からチャンスを貰っても、これじゃあ まるで変わらないじゃない…。
きっと そうなんだ…」
- Re: COSMOS ( No.87 )
- 日時: 2015/02/22 09:55
- 名前: Garnet (ID: .NK6C5YY)
「この広い『宇宙』で、
私には 何ができるんだろう…
こんなちっぽけな 子どもが、何を残せるんだろう…
私は———」
言いかけたその時、『この人』の目が、ゆっくりと開いた。
- Re: COSMOS ( No.88 )
- 日時: 2015/02/22 19:40
- 名前: Garnet (ID: .NK6C5YY)
「あ、貴方?!」
三枝さんが 彼に駆け寄る。
すると、彼は身体を起こした。
「君…
奈苗…エイリー・奈苗と、言ったね?」
酸素マスクでくぐもった声が、私の耳に届いた。
「そうですけど何か」
「は、は…
さすが Rubyの娘だな…彼女にそっくりだよ…」
Ruby…
ルビー…
それが母の名前なのだと、一瞬で解った。
彼を睨みつけていた 蘭ちゃんが、更に 視線を鋭くした。
「何やねん!起きて早々、嫌味か?!
いい加減にせえ!ボケナス!!!」
跳びかかろうとした蘭ちゃんを、三枝さんがすごい力で、でも片手だけで、止めた。
「母を、知っているんですか?」
「ああ…本当に短い期間だったが…
何でも、度々家から姿を消してしまう母親を 探していたんだとさ。」
「祖母を…?」
「そうか。君からみたら、母方の祖母にあたるね。」
「…」
「臨月だったって…何時君が産まれても おかしくない状態だったっていうのに、
年をとった母親を、とても大事にしていたよ。
彼女が母に 家を出て行っていた理由を聞いたら、なんて返されたと思う?」
彼は 最後の言葉を嘲笑気味に言うと、蘭ちゃんの腕から 三枝さんの手が、そっと離れた。
「『私やお前のような末路を辿る者を、1人でも この世から失くしたい。
心に暗闇を持ったまま、大人にはなってほしくないから。
だから この1週間、スルガトモミのことを見ていたんだ。』
…とね。」
私と蘭ちゃんは、雷に撃たれたかのように 身体が動かなくなった。