コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: COSMOS ( No.92 )
- 日時: 2015/02/26 18:28
- 名前: Garnet (ID: X/p7BtY7)
どうしようもなく、悩んだ時。
自分一人が、ホワイトアウトしたブリザードの中に いるような気がする。
でも、空を見上げてみよう。
その視線の先にさえ、何も映らなくても。
この 曇った世界の向こう側には、もっと広い世界がある。
それに気がついた瞬間、猛吹雪は止むんだ。
前を向けば、ほら。
そこには 暖かい春が見えるはず。
「うぎゃあ〜。つっかれた〜」
腕を大きく伸ばし、身体中に 空気を沁みこませる。
制服は相変わらず冷たいけど、今日は 体も心もめっちゃ軽い。
「ははっ。どうだ?450行きそうか?」
「さあ…それはどうだか。」
オレのちょっと前を クラスメートの良樹が歩いている。
振り向いた顔が、まるで 犬のシェパードのよう。
って、例えが微妙になるな。
450…
オレの、憧れの数字。テストの点数。
1教科90点取れば 達成できる。
でも、どうせ無理。
そう言って 今まで、努力というものを捨てかけた。
あの夏の日、そんなバカげた考えが、何処かへふっ飛んで行った。
震える小さな細い指をにぎり締め、紙に鉛筆を滑らせていた奈苗。
色々な人の教科書や宿題をチラリとのぞいては、
九九や割り算、 分数の計算まで、すらすらとマスターしていく。
足し算と引き算はいいのか?って訊いたら、それは知ってるから平気、と 軽く受け流された。
最初のうちは、生まれつきの能力なんだろうなって思って、随分羨ましかった。
でも、気づいたんだ。
アイツは———奈苗は、努力してるって。
いつか、テレビで大人が話していた。
——秀才は努力する。でも、それを努力だとは思わないんだ。
天才は中途半端な努力しかしないんだ。
って。
今ならようやく、その意味が解る。
「さあ、テストという名の地獄が終わったところだし…久しぶりに、サッカーでもやろうぜ。」
良樹がそう言って、近くに落ちていた小石を蹴り飛ばした。
「サッカー、か…
体育の授業以外だったら、もう あの時以来だな…。うし、やるか!!」
「腕…じゃなくて、脚が鈍ったら困るし。」
「あ、サッカー部、明日の朝練習からだったっけ?」
「そーそー。こんな日に練習したって、ほぼ崩壊状態だからな。」
「それ 言えてらあ」
言って、互いに爆笑した。
こんなくだらない話で笑い合えるんだ。
良樹となら、ありのままの自分でいられる。
無理したりしなくていいから。
むしろ、そんなことしたら 一瞬で気づかれるしな。
オレも石を蹴ろうとしたその時…
「あ」
良樹が直立不動になった。
「どうした?」
視線の先には、ランニングから戻って来た女子ソフトテニス部の集団。
あぁ、そうか。コイツ、まだ気にしてる。
誰だってそうだ。起きてしまったことは仕方ないのに…
歩きながら、ガヤガヤとお喋りをしている。
話の中心になっているのは、やはり 蘭だった。後輩まで 一緒になって笑っている。
再び笑顔の花が咲いたと思ったら、
肩に掛けたタオルで汗を拭った蘭が、こちらをチラリと見た。
あっちは、2年はそのままだったけど、
1年生は、とても 気まずそうに 拓を見つめていた。
「拓、悪いんやけど、遊びに行くんだったら 奈苗ちゃんも一緒に連れてってくれへん?
今 1人きりやねん。」
「あぁ、分かった」
じゃあ、と 互いに手を上げると、テニス集団は ダッシュしながらグラウンドに戻って行った。
(まだ終わりじゃないですよ、俗に言う、『つづく』ってやつです(笑))