コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 獄寺啓という男。 ( No.3 )
- 日時: 2014/12/25 16:30
- 名前: 優斗 (ID: 8hur85re)
『お前は人殺し!兄ちゃんをどこへやった!?』
叫ぶ夢を見た次の日、買い出しに出ると叫ぶ少女によく似た女に出会っ た。
「澤…」
誰も見えない暗い部屋のカーテンを握り締めた。 日当たりも悪く、毎日が寒い啓の家に薪ストーブは欠かせなかった。マントの下のYシャツにカイロを貼り、身を丸めながらベットへよじ登る。
目の下のクマ、貧血による立ち眩み、引きこもりだったからの筋肉痛。全てを忘れて布団をかけるが足元に妙な暖かみを感じた。
「…澤?」
「んー、あれ、見つかっちゃいました?」
「バレバレだ。」
澤米太郎(タクマイ タロウ)は伸びた黒髪を束ねながらに啓に言った。
「朝御飯は昼と兼ますが良かったですか?」
「うん。いつも悪い。」
「いえ、これが私めの役目ですから。」
ゆっくりとお辞儀をし、太郎は啓の口に優しく触れる。
「啓さんも私に食われないように…」
固まった啓を包むように肩を抱き寄せ、耳を甘噛するような吐息と共に声をかけた。
「あーらら、私に隠れてイチャイチャして。」
「花子。おかえり。」
「チッ。クソ花子。どこほっつき歩いとった。」
「別にー。アンタには関係無いわ。それより…」
花子は鞄から沢山の資料を取り出し、啓へ渡した。もう一度舌打ちをした太郎は奥の闇へと消えていく。
呆れたのかなんなのか、啓と花子はただ見つめるだけだった。
「気を付ける。ボサッとしてると、ホンとに食われる わよ。」
「分かってる。で、これが…」
「そ。十数年殺された、更木真太郎の資料。」
「…ありがとう…」
更木真太郎という男は下水を啜って生きてきた様な男。
その正体は親に捨てられた可哀想な子供だが、世間からはこの言われよう。殺人犯が責められず、殺された輩がとやかく言われる世の中は怖いものだ。
「手短に説明するわ。」
警察が死体を解剖するため、死体を警察署へ運び込んだ。
そして、司法解剖の結果、他殺ということが分かったものの、その部屋から五分離れた間、死体は消えていた。
冷めた血がドアに向かい、まるで生き返った様に立ち去ったのだ。
「更木というのは拾った男の名字。男は更木自身が殺したらしくてね。本当の名字を調べるにしても分から ないのよ。」
「ふーん。」
「あら、楽しくなさそうね。」
「美味いのかな。コイツ。」
「分からないわ。アンタの調理次第よ。」
首をかしげてそう言い残し、コートを脱ぎ捨てて花子は自室へ戻る。コートの下は黒く汚れていた。よっぽど大変な仕事だったのだろうか。 太股に備え付けられたナイフは赤く濡れているのも分かる。
一瞬の間でそこまで把握できた自分の目を啓は不思議に思った。何かの力というよりは、何故花子の太股を見ていたのかが分からなかっただけである。
どうでもいい事だと思い、啓は栞を挟んだ分厚い本を手に取り、紅茶を啜った。