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- Re: Eternal flowerー花言葉と君と。ー【挿し絵付!】 ( No.69 )
- 日時: 2015/08/23 23:36
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
僕の最初の記憶はアネモネという女性の、どこか狂気を孕んだ笑顔だった。
「ああ、目を覚ましたんだね!」
そう言って彼女は僕を抱きしめた。
「ここは……どこで、僕は……誰、なんだ……?」
僕はそう呟いた。すると、彼女は僕を抱きしめたまま囁いた。
「きみの名はアイビーだよ。アリスティドなんて名前、もういらないよね。そしてぼくはアネモネ。きみの恋人さ。
ああ嬉しいよアイビー、今日からぼくときみはずっとずっとずっとずっとずっとずーっと、一緒だ」
「そう、なのか……?」
訳が分からずそう尋ねると、嬉しそうにアネモネは言った。
「そうさ。でもきみはぼくがいるのに他の女と仲良くしてたんだ。ぼくは我慢してたのに、きみはいつまでもそいつと仲良くし続けるから、ぼくが怒って喧嘩になったんだ。
それで色々あって、きみは記憶を失くしてしまった」
少しアネモネの声が沈む。
「でも!きみはこうして生きている!それだけでぼくは幸せさ。ああ、本当に綺麗だ、アイビー。愛してる。心から、愛してるよ」
なぜか悪寒が走った。しかし、僕はそれを無視した。
「愛してる。ああ愛してる。愛してる愛してる愛してる愛してる」
延々と呪いのように囁かれる愛の言葉。なぜかそれがとてもおぞましいものに思えたが、無視する他なかった。
記憶が一切ない中では、彼女の言葉を信じる他なかったから。
それからアネモネと過ごした数ヶ月間、一度もアネモネの家の外には出られなかった。アネモネが禁じたのだ。しかしそれにも僕は従っていた。
正しい、普通のことだと思っていたのだ。アネモネ以外の人間と触れ合わなかったため、いつの間にかアネモネに洗脳されていたのかもしれない。
不便はなかった。欲しいものは全てアネモネが用意してくれるから。
アネモネの病的なほどの愛の言葉も慣れてきていた。慣れないと、とても生きていけなかったんだろう。
そしてある冬の日。
何か胸騒ぎがした。上手く言い表せないが、何か秘密がばれそうな時のような、嫌な緊張感を感じた。
その胸騒ぎは当たった。