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代々木の叫び声が響く。それと同時にざわっと教室が色めき立つ。
「う、嘘だろ？月詠ちゃん、好きな人がいたなんて……」
「やっぱり俺じゃダメだったのか……」
「あぁ俺の唯ちゃんが……」
という気持ち悪い呟きが漏れた一方、
「吉岡め……！！」
「あの野郎、呪ってやるぅ……！！」
「月のない夜道には気を付けろよな……」
という攻撃的な声もちらほら聞こえた。うわぁ怖え。だから嫌なんだよ。
「そ、そんな、吉岡くん……」
「相手が唯ちゃんなら諦めなきゃだよね……」
「唯ちゃんになんて勝てっこないもんね……」
あれ、幻聴が聞こえる。
「…………で、吉岡、本当に付き合ってないのっ？」
息を飲んで皆が俺を見つめる。あと、男子の方から、禍々しいオーラを感じる。唯本当に人気だなあ。さすがアイドル。
「あぁ」
俺が肯定すると、再び、安堵したような雰囲気がクラス中に流れる。
女子まで安心するなんて、何故だろう。
……まさか。このクラスはそういう趣味の持ち主だらけなのだろうか。
せっかく共学なんだから、男女で恋愛した方がいいような気がする。まあ、個人の自由だが。
そして、さっきのことがなかったように、いつも通りに戻ったクラス。代々木は違ったが。
「よ、吉岡っ。あのさ、えとっ……」
何故か赤くなって口ごもる代々木。代々木らしくないしおらしさだ。今日は雨だろうか。
「なんだよ」
「えっと、あ、あたしも下の名前で呼びなさいよねっ！！」
「……へっ？」
待て待て待て。そんなことを言われたら、少しはそういう期待を……、
「三澤とか菜々架は呼び捨てなのにあたし違うし、唯ちゃんまで呼び捨てだし……、べ、別にそういう意味じゃなくて、あくまで友達としてだからね友達としてっ！！勘違いしないでよっ！！」
早口でまくし立てて何故かそっぽを向く代々木。
「えーっと、桃音？」
よよ……桃音は途端に嬉しそうに顔を明るくした。
「あたしも友哉って呼ぶから！で、異論は認めないからっ！」
友達として、って言ってたけど、やっぱちょっと恥ずかしいな、と思う自分を少し情けなく感じた。せめて返事ぐらい元気にしよう。
「おう！」