コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.35 )
日時: 2015/05/23 06:14
名前: 彼方 (ID: hFRVdxb.)

「質問のあるやつは手をあげろ」という担任の言葉から始まった成宮琴、もといことりん(仮)への質問攻めが、チャイムによって終わりを告げた。
「それじゃあホームルーム終わり!質問のあるやつは後で個人的にしろ。ただし、一時間目には遅れるなよ?」
そう言って担任は教室を去った。
____その瞬間、蟻が散るように一斉にことりん(仮)の所へ人が集中した。驚いたことに、他クラスからも覗きに来たやつがたくさんいた。
席につく暇もなく囲まれたことりん(仮)は、おろおろしつつもやっぱり独特の緩さを醸し出していた。

「「「うっわあ……っ」」」
俺と望と桃音は同時に苦々しげに呟いた。菜々架は声こそ出さなかったが、眉をひそめた。
四人全員、ことりんとは仲が良かったので本人か確認しよう、とそれぞれが思ってたのだろう。なのにあの何重もの人だかり。行き辛いことこの上ない。
「____よし」
しかし望が覚悟を決めたように頷いて、敵陣に乗り込む兵士の如く、人だかりに向かって歩き出した。無駄な勇ましさだなおい。
菜々架がふと呟く。
「望はあそこに何をしに行ったのかしら。……場合によっては、望はお仕置きしなくてはいけないかもしれないわね……ふふ」
昏い笑みを浮かべる菜々架。菜々架は昔からことりんを敵視している。そりゃもう、怖いぐらいに。
でも確かに。乗り込んでいって何する気だろう。……とんでもないことじゃないといいけど。
望は愛想笑い、というか営業スマイルを振りまいて「ちょっとごめんね」と人を掻き分けていく。
そして、ことりん(仮)の肩をぽんぽんと叩いてにこっと笑った。
「ねえねえ。ことりんだよね?」
ざわっと人だかりから声が上がった。
「ことりん?」「こいつら知り合いか?」「もしかしてそういう関係?」「ええーっ!?望様、彼女いたの!?」「琴ちゃん、彼氏いたのか……!?」
あーあ、やらかしちゃったよ望。俺はそうため息を吐いた。
それに加え、菜々架が彼女という言葉に反応して青筋を立てた。爆発寸前に見える。もう少し何か、別の言い方があったんじゃなかろうか。
最初は小首を傾げていたことりん(仮)だったが、みるみるうちに表情を輝かせ、無邪気な子供のような笑顔で言った。
「もしかして……、のんのんっ?」
菜々架の表情がさっきよりも殺気立ってきた。ついでにどよめきがさらに広がった。
「そーそー!覚えてるっ?」
望が嬉しそうに言うと、
「Of course!」
と元気よく言ったことりん。
「ボク、ここにもう一回転勤になるってなった時、のんのんってここに住んどうやん? So I was thinking you maybe able to meet you and was looking forward to me!!」
興奮すると、日本語じゃなくて早口な英語で話し出す癖、変わってないなあと俺は思った。
……でも、早過ぎてなんて言ったかは何となくしか分からなかったが。多分、のんのんに会えるかもと思ってた、とかそんなところだろう。
「But I don't think I can meet you.So I feel very very happy!!」
そう言ってことりんは望に飛んで抱きついた。ことりんは勢い余って倒れそうになったが、望が「おっと」と言って受け止めた。
それは、あたかも望が抱きしめ返しているようで……、死亡フラグ立てたな、望。
クラス内のざわめきがさらに酷くなり、菜々架が何かブチ切れたのか、急に花開くような笑顔になった。
俺は桃音と顔を見合わせた。いきなり笑顔を浮かべるのは、菜々架が切れた時の特徴だ。
「三澤くーん?」
そしていきなり苗字で呼び始めるのも切れた時の特徴だ。
望はようやく気付いたかのように肩を震わせた。しかしもう遅い。
望は恐る恐ることりんを離し、からくり人形のようにぎこちなく振り向いた。
「ナンデショウカ」
「先生が呼んでたわよ。大至急、ですって」
手招きをする菜々架。もちろん、先生が呼んでた、なんて事実はない。
ごめん、先生呼ばれちゃった、とぎこちない笑みを浮かべ、望は菜々架の元へ歩いて行った。
俺の横を通り過ぎる時俺は、望の
「見舞いは漫画持ってきてね」
という囁きが聞こえた。
見舞いというあたりが現実味があって逆に怖い。
「アーメン」
と、桃音は菜々架と望の背中に小さく十字を切った。