コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.44 )
- 日時: 2015/08/26 07:59
- 名前: 彼方 (ID: hzhul6b3)
俺を呼んだのは、佐藤陽太というあまり、というかほとんど接点のないやつだった。
俺は一時期、こいつを男装趣味のある女子だと思っていた。しかたないだろ、顔が女子なんだから。低めの身長に、明るい茶髪、そして何より女子みたいな大きくて睫毛の長い目。なんでこいつ男かな、と思う男子は少なくないだろう。
「なんで謝るのっ?……でね、聞きたいことがあるんだけど」
「お、おう。何だ?」
上目遣いと困っている表情のコンボは卑怯だと思う。こいつ本当に男か。
こいつは女子だけでなく、男子にも人気があるらしい。そりゃあ、こんな顔しててさらに明るく活発、とくれば、そっち系の人にもモテるだろう。
苦労しそうだな、こいつ、と変な心配をする俺。
「琴ちゃん、っているでしょ?……望くんと付き合ってるの……?」
至極不安そうに尋ねる佐藤。
接点ゼロの俺に話しかけるなんて何でだ、と思っていたが、そういうことか。恐らく本人達には話しづらく、両方と仲が良さそうな俺に聞いてきたんだろう。
「いや、付き合ってねえよ?」
そう俺が言うと、「よかったぁ……」と安堵したようにふるっと笑った。
「佐藤ー、そういうこと聞くなんて、もしかして……?一目惚れ?しちゃったっ?」
やけに嬉しそうな声で桃音が訊く。女子ってみんな他人の恋愛事情知るのが好きだよな、何でだろうか。
佐藤は「ふえっ?」と顔を赤くして必死に否定した。
「そっ、そそっ、そんなことないよぉ!ただ、ちょっと、本当にちょっと気になっただけで……っ!」
「ふえっ?」が似合う男子初めて見たぞ俺。下手な女子より反応が女子っぽい。なんだこいつ。
「へえ〜?それホント〜?何で気になるのっ?」
「えとっ、それは……っ、うう」
とうとう佐藤は真っ赤になってうつむいてしまった。こいつ、生まれてくる性別間違えたんじゃないだろうか。
桃音はわくわくしながら佐藤にぐっと顔を近付けた。
「で?ことりんのこと、好きなの?嫌いなの?大丈夫、バラしたりしないから」
「……い、言わなきゃ、ダメ……?」
来ました、赤い顔プラス上目遣いプラス涙目の三連コンボ。こいつ、全部天然だったら恐ろしいやつだな。計算でも恐ろしいやつだけど。
「だーめっ!さあさっさと吐いちゃって?」
桃音は一瞬身を引いたが、すぐに同じ調子で言った。
「うぅ……、す、好き、だと思う……。い、言ったよ!これでいいよねっ!」
赤い頬のまま少し怒ったように口を尖らせる佐藤。……俺もうこいつの性別分かんない。
「おおっ!いいねーいいねー、あたし応援す「今の話ホントッ!?」
いつの間にか望が佐藤の近くまで駆け寄って必死な形相で問いかけた。
「おまっ、菜々架はどうしたんだっ?何でここにいんのっ!?」
俺が驚いているのにも意を介さずにただ必死な顔で佐藤を見る望。
「ほ、ほんとだよ……?何でそ「ああっ……!もうホント佐藤様様だよっ!オレの救世主っ!オレ、全っ力でサポートするからねっ!!」
出て行った時とは正反対の、輝いた顔でそう言う望。
「は?お前どうしたの?ちゃんと説明しろよっ!菜々架はっ?何でお前無傷なのっ?」
俺が訳も分からず問い詰めるのも無視して、望は後ろを振り返って、後ろのドアの近くにいつの間にかいた菜々架に対して必死に早口で説明する。
「ねっ?オレはこいつを全力でサポートして何が何でもことりんとくっつけるから、そしたらもうああいう風にことりんが来ることもないはずっ!あれはオレの本意じゃないから、ねっ?」
菜々架はふーっと長いため息を吐いて、薄く笑顔を浮かべた。
「いいわ。あのアマと仲良くお喋りしてたのは望の本意じゃないってことな十分分かった。貴方、一度もアイツを庇わなかったものね」
近くで「ホントにごめんねことりん、オレの命がかかってたんだ……!」と望が呟くのが聞こえた。
そういうことか。望はあの後必死に、仲良くお喋りはしてない、あれはことりんが勝手に、とか言って説得していたんだろう。もしかしたら何かことりんを貶したのかもしれない。
しかしそのことに対して文句は言えない。
望が言った通り、間違いなく命がかかっていた。ことりんを一度でも庇ったりなんかしたら、病院行きはまず間違いなかっただろう。
「そうよね、悪いのはあのアマよね、ふふ。……でも?分かってるわよね?今後、佐藤くん関連のこと以外で貴方からアイツに近付いたら……」
その先はあえて言わずににこっと笑う菜々架。恐らく、俺、望、桃音、そして事情の分かってない佐藤ですらも思ったことは同じだろう。そう思うぐらいに菜々架は悪魔のようだった。