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Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.46 )
日時: 2015/12/28 18:06
名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)

「あの転校生の子、変な喋り方してね?」
「あ、分かるー!超うけるよね」
「てかさー、あの天然って計算でしょー?騙されてる人かわいそー」
「それ思ったー。あ、分かった!変な喋り方してんのって私ハーフなんですアピールなんじゃない?」
「何ソレ?意味分かんなーい」
「ねー!皆の気引こうとしても、それウザいだけだって気付けよ」
「ホントそれー!あっはは」
____転校してきたばかりの時、女子たちにそう陰口を叩かれていたのをボクは知っていた。

そんなことを言われても、何がどうおかしいのか全く見当がつかなかった。
だって、家族は全員自分のことを僕って言ってるし、こういう喋り方してるし。天然、なんて言われてもそもそも天然がどういう意味なのかも分からない。
あまりよく分からない言葉で言われていたが、何となく雰囲気から陰口だってことは分かった。でも、普段は皆とっても優しいのだ。
いつか、昔日本にいたイギリスの友達が「偏見かもしれないけど、日本人は表で仲良くしてても、裏ではすごい陰口言ってるから怖いよー?」と言っていた意味がようやく分かった。
分からないことだらけなのに悪口ばかり言われて、転校してから一、二週間ほどはさすがに気が滅入っていた。


「……I don't know what I should do!! Why? Why do they dislike me!?」
誰もいない屋上で、ボクは思わずそう叫んだ。もう限界だ。何でボクは嫌われてるの? ボクが一体何をしたの?
どんどんと視界が滲む。ボク、こんなに涙もろくないはずなんだけどな。それだけ堪えてるのかな、この環境。

「……あっはは、さすがハーフだねー? なんて言ってるか全然分かんないよ」
ふと後ろから声が聞こえた。涙を拭って慌てて後ろを向くと、そこには一人の男子が立っていた。
「Why you came here?」
そう訊くと、一瞬悩んで彼は「あ、分かった何聞いてるかー!」と笑顔になった。
「何でオレがここ来たか、って聞いたんだよねー?
いや実はさ、成宮が思いつめた顔で屋上に上がってったから心配になっちゃってさー?ホラ、場所が場所でしょっ?うちの学校何故か屋上出入り自由だしさーっ?」
「Why do you worry about me? You dislike me too,right?」
「………………ごめん、Whyしか聞き取れなかった。こういう時なんて言うんだっけ……」
その言葉を聞いて、初めて自分は今まで英語で話していたことに気がついた。

慌てて頭の中で翻訳して言い直す。
「At first,ボクはどうすればいいのか分からん、何で皆はボクを嫌うの?って言ったんよ。And,何でキミはボクを心配するん?キミだってボクを嫌いなんやろ?って聞いたんよ」
すると彼は途端に怪訝な顔になった。
「嫌われてる?成宮が?そりゃまたどうしてっ?」
予想外の答えに慄きつつ、ボクは言った。
「それが分からんの!ボク、嫌われるようなことしてる覚えがないけん、余計分からん!」
彼は「うーん」と悩み、思いついたように言った。
「もしかして、成宮を嫌ってるのって田部とか美原とかじゃないー?」
いつも陰口を言ってるのは、確かにそんな名前だった気がする。そう思い、頷いた。すると彼は得心したように言った。

「あぁーなるほど。……あんまり悪口って言いたかないけど、田部とか美原っていっつも誰かしらの悪口言ってるんだよー。で、すごく誇張して色んな人に言いふらすんだ。でも、飽きたら多分違う人の悪口言い出すと思うし、悩むだけ時間の無駄だねっ!気にしなくってだいじょぶっ!
ていうか、成宮すっごい可愛いし、わざとらしくない天然だし、ユーモアセンスあるから皆に好かれてるよー?
悪口言う人が全てじゃないんだから、もっと周りを見なよっ!結構皆、成宮のこと好きだよーっ?」
「…………Reary?」
……ボクは嫌われてるって思ってたけど、嫌ってたのは一部の人だけだったの?なら、ボクはこのままで大丈夫なの?このまま皆と仲良くなれるの?
「えぇっと、イエス!」
そう言って笑う彼を見て、一つ答えを出した。____いいんだ、きっとボクはこのままで。引っ込みかけた涙がまた、顔を出しそうになった。

すると彼は途端に慌てた。
「え、泣かないで!?ほら、成宮は笑ってる顔の方が何十倍も可愛いからさ、笑っててよっ!」
「……ボク知ってるよ、それお世辞って言うんやろ?」
呆れ笑うと、首を振りながら彼は言った。
「違うよっ!本当に可愛いってっ!……てか、今思ったけどオレの名前分かるっ?」
「……No」
「やっぱり?そんな気がした!オレは三澤望っ!自由に呼んでよっ!」
自由に呼んで、と言われたので、適当にあだ名をつけて呼んでみた。
「なら、のんのんって呼ぶけん!いいやろ?」
「のんのん?何か可愛い呼び方だなぁ。まあご自由にっ!じゃあオレも成宮にあだ名つけよっ!んー……あっ、ことりんっ!ことりんって呼ぶねっ!」
本当にいいとは思わず、またあだ名をつけられるとも思わず、ボクは笑った。すると、のんのんは嬉しそうに言った。
「そうそう、そうやって笑ってた方が絶対いいっ!」

____この日から、ちょっとずつのんのんが気になり出していた。
そして、恋だって気づくきっかけは、のんのんの部活の試合を見たことだった。



「三澤、ナイッサー!」
そういうかけ声を聞きながら、のんのんはサーーブをする準備をした。
今は第3セットで23対25、あと1点決めればこちらの勝ちだ。しかし相手チームは強豪校、対するこちらはそこそこの実績しかない学校だった。
そんな状況の中、のんのんは宣戦布告するように、片手で持ったボールを相手チームに向けた。
「……次のサーブ決めて、オレ達が勝つからよろしくっ!」
途端に相手チームからブーイングが沸いた。

しかしのんのんはそれを意に介さず、ボールを投げ上げた。
そして、少し助走をつけて跳ね上がり、勢いよくボールを打った。心地いい音が響き、ボールが飛んでいく。
ボールが飛んでいく先は____人の薄いコート右側。のんのんは左側に飛ばすような素振りを見せていたため、右側はあまり人がいなかった。つまり、フェイントが成功したのだ。
ボールを見て初めて、他の人たちが動き出すがもう遅い。ボールに触れる数瞬前に、ボールはコート上に落ちた。
ボールが転がる様子を黙って全員が見ていた。ボールの転がる音だけが世界のすべてになる。
沈黙が降り、それは試合終了のホイッスルが鳴るまで続いた。

鳴った瞬間、ものすごい歓声があがった。バレー部の人はもちろん、ボクも含めた観戦に来ていた大勢の女子達も、だ。
三澤は安堵したような表情を浮かべていた。そして、いきなり観客席の方へ歩き、ボクの近くまで来た。
「……ことりんっ!ことりんが来てくれたの分かったから、がんばろって思えたんだっ!ことりんがいなかったらあのサーブ、決まってなかったかもしんないっ!ありがとねーっ!」
そう言ってのんのんは、ボクに向かってにこにこしながら手を振った。その笑顔を見たとき、どうしようもなく胸が苦しくなって、頬が熱くなった。
____そっか、これが恋ってやつなんだ。そうボクは不意に思った。