コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.56 )
- 日時: 2015/12/28 12:49
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
つっくーの言葉が、心にぐさっと突き刺さった。
何も伝えてないのに失恋した気分だ。
……違う、これは「娘はやらん!」っていう親父の気持ちだ。そう思っておこう。
失恋の立ち直り方、か。僕が思いつくのなんて二つしかないけど。
「うーん……。やっぱり、忙しくしてみるとかかなぁ」
あえてもう一つは言わなかった。
そう言うと、つっくーは
「忙しく、ですか。……今でも忙しいので、それで立ち直れるとは……。あ、すみません、せっかく言ってくださったのに」
と答えた。
ならばあまり気は進まないが、もう一つを提案しよう。
「なら、新しい恋を始めるとか」
「新しい恋、ですか……?確かに、それも一つの案かもしれません……けど、誰に……?」
なんて答え辛い質問だろうか。
『僕なんてどう?』なんて言えればいいんだけど、駄目だろうしな。
というか僕はしがないドルオタ、つっくーは見てるだけで天国だ。それ以上を望むなんておこがましい。
「うーん……、月詠さんに相応しい人だよね……。あ、三澤さんなんてどう?」
するとつっくーは苦い顔で首を傾げた。何故だ。
三澤さんは吉岡さんに負けず劣らずのハイスペックなのに。
『実はオレアイドルなんですよー』って言われたら百人中九十人以上は「やっぱり」と言うような外見をしているし。
ただ女子に、本当にアイドルかっていうような対応をとるときがある。よく言えば、ファンサービスが素晴らしい。
吉岡さんとは違い、もしかしたら自分のカッコよさを自覚してるんじゃなかろうか。
「三澤くんですか……あの人はちょっと……。____前、偶然友哉くんとの会話を聞いちゃったんですけど、三澤くん、かなりのナルシストだったんです……」
「うっそ、そうなの?もしかしたら自分のカッコよさ分かってるんじゃないかなとは思ってたけど本当に……」
いくらハイスペックでもナルシストは勘弁してほしいよね、うん。
じゃあ駄目元で言ってみるか。つっくーを元気づけるためなら道化にでもなってやる。
「じゃあ僕なんてどう?」
すると、つっくーは目をぱちくりとさせた。うん、相変わらず天使。
「今なら提出課題代行サービスもついてきて、なんと無料でご購入いただけます。お買い求めはこちらから」
両手を広げてふざけてみせると、「えっ?」と言ってつっくーは笑い出した。
「ゆうさんもそういうこと、言うんですねっ、意外です」
「もしかして、ただのお人好しの真面目くんだと思ってた?」
そう言うと、つっくーは苦笑いしながら首肯した。
よく言われるんだけど、全然そんなことないんだけどなぁ。
こう見えても、提出課題以外の勉強は、教科書を十分くらい読むくらいしかしていない。
だって、勉強する時間なんてあったらつっくー(ただしライブ映像)を愛でていたいし。
変態?知ってる。
「ところで月詠さん」
つっくーは首を傾げてこちらを見た。
「時間、大丈夫?この後仕事とかないの?」
するとつっくーはみるみるうちに焦りの色を現した。
「そうでした……!今日ダンスレッスンがあるんでした!」
「それは急がないと大変?」
その言葉に何度も頷くつっくー。
「もう大丈夫?まだ話聞いてほしかったら後で聞くから」
僕は気遣うように言ってみせた。
いえ、決してもっとこの天使フェイスを間近で眺めていたいなどということは思っておりません(大嘘)。
「大丈夫ですっ、わたし結構立ち直り早い方なんですよっ?それに、ゆうさんと話してたら元気が出てきましたっ!」
ゆうさんと話してたら元気が出てきました、って何だこの可愛い生き物は。
これはあれか、強引に迫ってくれと言っているのか(百パーセント違う)。
立ち上がりかけたつっくーだったが、すぐに「そうだ!」と思い出したように制服のポケットから何かを取り出した。
何だと思って見ると、つっくーはメモ帳とペンを取り出していた。そこに何かをさらさらと書きつけると、一枚破り、僕にそれを差し出した。
「……僕に?」
「はいっ、わたしのメアドですっ!あの、相談したいときはメールしてもいいですか……?」
思わず受け取る手が震えた。
つ、つ、つっくーのメアド……だと……!?一生このメモは家宝にしますありがとうございます。
返事をしない僕を訝しんだように見るつっくーに、慌てて返事をした。
「も、も、もちろんしていいよ毎日でも構わないよというかむしろ毎日メールさせてくださいお願いします」
焦り過ぎて気持ち悪い答えになった。ただし本心。
しかしつっくーは気にせず、「よかったですっ」と笑った。どこまで天使だったら気が済むんだ。
「じゃあわたし行くので、また明日っ!」
そう言ってつっくーはスクバを引っつかんで去っていった。
____のはいいが、
「……待って今の僕のスクバだった……!?」
……どうやらスクバを取り違えられたようだ。
別に僕の方は中身を見られても何ら問題はない。やばいものといったら定期入れ(を模したつっくーの写真入れ)のみだが、それは今僕のポケットの中にある。
問題は____
「つっくーのスクバを覗くか否か……ッ」
欲望に忠実になれば、中身を覗いて目に焼き付けておきたい。
しかしそれがプライバシー侵害なのも重々承知している。
覗きたい、いやでも、でも____
「……ち、ちょっとくらいならいいよね?下着が入ってる訳でもないんだし」
……僕は最低の人間だ。
そろそろとチャックを開けていくと、何となく甘く柔らかい香りがした。何を入れたらこんな匂いがするのか。
そして中にあったのは、教科書、ノート、ペンケース、ポーチなどの勉強道具と、スケジュール表、台本などのアイドルで使いそうなもの。それと、
「……小説……?」
表紙にそう書いてある、シンプルなノートが何冊か入っていた。それと、一つ「設定」と書かれた分厚いノートがあった。
中を開いてみると____