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Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.57 )
日時: 2015/12/28 12:51
名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)

「あ゛ー、つっかれたぁー。アタシにダンスは向かないんだってばぁ。もーアタシはライブ出なくっていいよ、ひたすらバラエティー出てるから」
「駄目ですよ、宵那。諦めたらそこで「試合終了?試合終了?」
にやにやしながら言う星河 宵那にわたしは苦笑いで返した。いきなりス○ムダンクのネタを持ち出されても。

わたしと宵那は今、ダンスレッスンの帰りで一緒に帰っている。そう、宵那はわたしと同じ『Blue Night』に所属しているアイドルなのだ。
と言っても、同じグループだから仲良い訳ではない。気が合うから仲良いのだ。事実、わたしは他のメンバーとは仲良くない。
宵那はファンの間では「よなっち」と呼ばれていて、独特の立ち位置にいる。と言うのも、宵那の売りは歌でも顔でもダンスでもない。
やる気の無さから来るゆるーい雰囲気と、それに似合わぬ毒舌っぷりなのだ。
しかし仮にもアイドル、それもスカウトされたくらいだ、決して可愛くない訳ではない。むしろかなり可愛い。
ポニーテールがよく似合う、目鼻立ちがはっきりした顔だ。

「でもさーぁ、アタシからやる気の無さ取ったら何も残んないよぉ?例えばさ、いきなりアタシが
『皆ーっ、いつも応援してくれてありがとーっ!皆のこと、だーいすきっ♪』
って言い出したらどうよ、キモくない?てか不気味じゃない?」
「それは確かに」
「頭打った?大丈夫?ってファンに言われるね、間違いなく」
「でしょうね」
アイドルとしては普通なんですけどね。

「そういえば、さ」
思い出したように宵那が言う。わたしは首を傾げて宵那を見た。
「友哉くん、だっけ?とはどうなったのさ?」
途端に苦味が口の中で込み上げてくる。その苦味をどうにか飲み下し、息を吐いてから答えた。
「……フラれました」
すると宵那は目を剥いた。
「ええぇッ!?唯をフッたりするような男っていたんだっ!うっわ、人間国宝レベルじゃない、そいつ?唯の何が不満なんだろ、逆に知りたいわぁ」

少し大袈裟な言い方に苦笑しつつ、わたしは付け加えた。
「友哉くん、好きな人がいたみたいなんです」
「はぁ、なるほど一途なのね。いいねぇ一途。アタシなんか、すぐ恋に落ちて一週間くらいで冷めちゃうからねぇ」
うんうんと頷く宵那。そして、「ま、でも?」と笑った。
「唯なら男は選び放題だしぃ?落ち込み過ぎんのも毒だから、さっさと別の恋見つけちゃいなさいな」
宵那はどんな重たい話題でも、何でもないようなゆるーい話に変えてしまう力を持っている。これに何度救われたことか。

「別の恋、ですか……」
ふと、ゆうさんの顔が浮かんだ。
……って、ゆうさんはわたしを元気付けるためにあんな冗談言っただけ、なのに。変に意識しちゃって馬鹿みたいです。
でも、髪型が違って眼鏡をかけていないゆうさんは、控えめにいってもかっこよかった。
「お?なになに?もう候補いる訳?きゃー、案外恋多き女な訳ぇ?」
「そ、そんな訳ないじゃないですかっ!あ、そ、そういえばわたし、新しい小説書いたんですっ!」
誤魔化すように話題を変えた。宵那もあっさりと興味の対象を変える。
「よっ、来ました唯先生!」

そしてスクバを開けてみると__
「……あれッ!?」
そこにはわたしのものは何一つとしてなかった。というかこれ、
「……バッグ、取り違えました……」
ゆうさんのスクバだった。
__どうしよう、あの中には中二感満載の設定の小説があるのに。見られたら死んじゃいます。