コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.58 )
- 日時: 2015/12/28 12:52
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
「……あー、どうしようかなぁー……」
つっくーのスクバの中にあったノートを持ちながら、僕はため息をついた。
小説らしきものを外で読むのも何だと思って、スクバを家に一度持ち帰ってしまった。
だが、考えてみれば酷い話だ。
人の私物を勝手に読み漁るなんて、やっていいと思ってるのか、僕。
一応、
『スクバ取り違えてるみたいだけど大丈夫?届けに行くよ、今どこにいる?』
とメールを送ってみたんだが、一向に返信が来ない。
____これはもしや、神様が読めって言ってるのか?そうなのか!?
僕は時計を仰ぎ見て、しばし考えた。
____つっくーから返信が来るまでは、読んでみても構わないはずだ。神様だってそう言ってくれている、うん。
「____って、結局読み終わっちゃったよ……」
時間にして五十分ほど。
もう少しだけもう少しだけ、と言い聞かせているうちに、最後のページまで読んでしまった。
そのノートの中身は、正真正銘小説だった。それも、つっくーの直筆らしきもので書かれていた。
控えめに言っても、かなり面白かった。
勉強運動何でもできる美少女で、文才まであるとは何事だ。神に愛され過ぎだろう。
ただ、設定がかなり複雑だった。やたらとルビも多かった。
だが、設定が書かれているノートも一緒にあったので、何とか読み進められた。
一言で言えば、厨二臭いファンタジーだった。いい意味で。
よくもまぁ、こんな緻密な設定を創り上げられるな、と尊敬してしまう。
そういう設定が苦手な人はとことん苦手かもしれないが、僕は案外こういうものは好きだ。
つっくーの書いた小説をまた読みたいと思うくらいには面白かった。
それに何より、つっくーがこの本格ファンタジーを書いているんだと思うと、ギャップがたまらない。可愛い。つっくー本当天使。
____もう一回読み返そう。
「……あ、ちょうど返信来た」
もう一度開こうとしたその瞬間、メールが来た。
開けて内容を確認してみると、件名なしでこう書かれていた。
『すみません!わたしは今トワイライトっていう喫茶店と日代神社の間にいます。ゆうさんはどこですか?』
トワイライトって喫茶店、か……。僕の家から近いじゃないか。これは届けに行くしかないな。
僕はスクバの中に小説を元あったように入れ、自転車の鍵を取って家を出た。
自転車を飛ばしてから大体五分。つっくーの姿らしきものが遠くに見え、僕は自転車を停めて走った。
つっくーは驚いたような表情をしていた。僕何か変かな。
「届けに来てくれたんですかっ?そんな、わたしが取り違えたから私が取りに行くのに……っ」
何だ、そんなことか。
「そんな、家から近かったしこれくらい、どうってことないよ。それに、月詠さんを僕の家まで来させるなんて感じ悪いでしょ?」
それに、家に来たりなんかしたら、何しでかすか分からないぞ、僕。一応健全な男子高校生ですからね。
「ほらねぇ。言ったでしょぉ、唯。ここで届けに来なかったら男じゃない、ってさーぁ」
その声の方向に振り向くとそこには、
「よな____星河 宵那さん、ですよねっ!?」
つっくーと同じグループのメンバー、よなっちがいた。
うっわ、本物すごく可愛い。アイドルでは、つっくーの次に好きなんだよな、よなっち。
「おっ、アンタアタシのこと知ってんのぉ?嬉しいねぇ」
「当たり前じゃないですか!星河さん、よくバラエティ番組出てますよねっ?」
意を得たりとばかりににやけるよなっち。
「そーよぉ?アタシはアイドル界のバラエティ女王だからねぇ、なんつってあっはは」
「アイドル界のバラエティ女王、もうなってると思いますよ?テレビで見ない週ってないですし」
ただ単に、僕がよなっちの出ているテレビを全てチェックしているだけかもしれないが。
「あらそーぉ?嬉しいこと言ってくれるじゃないの。じゃ、特別にタメで話すことを許可してあげるぅ。てか、アタシ敬語嫌いなの。えーっと、ゆうさん、だっけぇ?」
そう言いながらつっくーの方を振り向くよなっち。つっくーは頷いた。
「そうです、ゆうさんですっ」
「おっ、当ったりぃ。んじゃゆうさん、よろしくぅ」
「よろしくね、星河さん」
____僕は世界一幸せなドルオタじゃないだろうか。何たって、二大好きなアイドルと対等に話せるし。
「じゃあ月詠さん、これ」
そう言ってスクバを手渡すと、「ありがとうございます」と言いつつも、浮かない顔のつっくー。
首を傾げながら「どうしたの?」と問うと、しばらくしてつっくーが口を開いた。
「…………あの、中、見ました……?」
…………なんて答えるのが正解なんだろうか。正直に言う?いやでも……。
「…………えーっと……。ごめんなさい、見ました」