コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.59 )
日時: 2015/12/28 10:55
名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)

そう言いながら僕は頭を下げた。
「うっわぁ。ま、でも唯のだもんねぇ、誰でも見たくなっちゃうわ」と口を挟むよなっち。
「………………えとっ、これって……見ました?」
苦々しい顔で小説を取り出すつっくー。更に頭を下げながら僕は謝る。
「ごめんなさい!最後まで読んじゃいましたっ!」

さすがに失礼だったよな。どうしよう嫌われたかもしれない。
頭の中がぐるぐると渦を巻く。
「………………な、何で読んじゃうんですかぁ……」
震える声で言うつっくー。ああごめんなさい。
今まで積み上げてきた信頼全てが崩れ落ちていく音が聞こえた。ほとんど積み上げてないけど。
でもそんな震える声のつっくーも可愛いなんて思っておりません。決して(大嘘)。

「………………ひ、引きますよね……?こんな小説書いてるなんて」
「…………んっ?」
しばらく頭を下げていると、予想外の言葉が降ってきた。
思わず顔を上げると、つっくーは不安げに僕を見つめていた。
……もしかして、勝手に小説読まれたことに怒っていたんじゃなくて、「こんな厨二臭い小説書いてるなんて知られちゃった」と焦っているんだろうか。

「……えぇっと、すごくアレなこと言うけど」
「……はい」
「…………これ、続きってある?あったら是非読みたいなー……って、勝手に読んどいて何言ってんだって話だけど」
「……えっ!?」
つっくーは驚いたように僕を見つめる。
「こ、こんな小説書いてて引かないんですかっ!?」
「逆に何で引くの?」
「だ、だって、設定がすごく……」
「厨二臭いってこと?確かに設定が複雑だとは思ったけど、僕こういう設定好きだよ?」
「えッ!?ほ、本当ですか!?」
「うん」
驚愕したようにつっくーは目を剥いた。そんなに驚くようなことだろうか。というか驚いたつっくーが天使過ぎて辛い。

「お、面白かった……ですか?」
「うん、かなり。キャラも個性があって読んでて楽しかったし、続きがすごく気になる書き方だと思った」
すると、つっくーは笑顔を咲かせた。
「そうですか……っ!宵那以外の人に褒められるのって初めてですっ……!えへへ」
つっくーはノートを両手で持ち、口を隠すようにして照れ笑う。

僕は、世界が一瞬時間を止めたのを感じた。音もミュートをつけたように小さくなる。
そして、つっくーの笑顔だけが世界の全てになった。
心音がやけに鳴り響く。……あれ?これってもしかして。
「……えと、ゆうさん?」
つっくーの声で我に返った。
危ない。つっくーが可愛過ぎて、よく分からない世界にトリップしていた。
……でも。もしかしてこれって萌えじゃなくて____恋心?
なんてね。そんな不相応なこと思う訳がない。

「よかったねぇ唯。ゆうさん、アンタもいい人だねぇ」
よなっちはそう言うと、訳知り顔で笑って手を振る。
「アタシん家近いから先帰っちゃうねぇ。じゃ、お二人さんごゆっくり」
つっくーは一度首を傾げ、すぐに慌てたようによなっちの方を振り向いた。
「宵那っ!違いますからねっ!?そんなのじゃなくて……!た、多分……あ、あれ?」
「はいはい分かってますよぅ。ゆうさんならアタシも応援できるなぁ」
そう言いながら含み笑いをして去っていくよなっち。
「だ、だから……!ゆうさんはそんなのじゃ……!」
「……そんなの?」
「わわっ、違います!違いますから気にしないでくださいっ!」
なんだかよく分からないが、一つだけは言える。
慌ててるつっくー可愛い。可愛いは正義だ。


「……じゃ、帰ろっか。送ってくよ?」
「……えっ?そ、そんな、悪いですっ!」
「悪い、って。月詠さんを暗い中一人で歩かせるなんて、そっちの方が出来ないよ。僕が勝手に送りたいだけだから気にしないで」
そう言いながら自転車を取りに行く。

そして、手でハンドルを持って押しながら、つっくーに問う。
「家どっち?」
「えぇっと、こっちです!ここからだと少し遠いんですが……」
申し訳なさそうに上目遣いで僕を見るつっくー。
やめてくれ、そんな顔されると襲っちゃうぞなんつって。冗談にならない冗談はやめておこう。

「全然いいよ。どうせ家帰ってもやることないし。勉強だってどうせしないしね」
そう言いながら自転車を押してそっちへ歩いていく。
「そうなんですかっ?でもゆうさん確か、社会と国語の全国模試で、上位の成績とってましたよね?」
そんなこともあったような。というか毎回そうか。
「あーそうだっけ。まぁ僕が全国模試のテストと相性良いだけじゃないかな。たまたま点とりやすい問題なだけでさ」

僕とつっくーは、そんな話をしながら歩いていった。


その間中ずっと高鳴る心臓に、僕はため息を吐いた。全く、そんなにうるさくされると認めざるを得ないじゃないか。
これは偶像崇拝じゃなく、恋心だ、って。