コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.10 )
- 日時: 2015/02/10 20:35
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
季節は冬から春へと変わろうとしていた。
しかし、まだ外の空気は凍る程冷たく、吹雪く風も到底温かとは言えないだろう。
そしてそんな夕暮れ。4人の少年少女達は放課後、疲れ切った身体を空き教室の暖房で温めながら、強制尋問を受けていた。
「何で帰ろうとしていたのかは、大体分かった。今回ばかりは俺も悪かったしな。すまない。——で、お前等は、そいつと顔見知りだったのか?」
今度は何の尋問なんだと耳を立てていた少年少女は、予想とは全く違った質問に、口を開け、酷く間抜けな表情をしてお互い顔を合わせる。
というのは、元々この黒髪の少年が自分達に無断で呼んだという、名も知らぬ少女の事を彼等は驚いて聞いたのは、今日の朝だ。登校中だ。しかもその時、きちんと知らないと伝えたはず。
それが何故、この少年には顔見知りの様に見えているのかが、3人には良く解らなかった。
そいつと呼ばれた少女の方は、この状態を理解していないようだが。
「え、バカにでもなったの? 万年1位の優等生さんが度忘れしちゃうって……大変だよ。至急病院に行けば? 顔見知りな訳無いじゃん。そう言ったよね、バカなの?」
「りょ、遼君のは言い過ぎだと思いますけど、あたしも朝、知らない人だって言ったはずです。それが何で、顔見知りだって思うのかが分かりません! 顔見知りなら、もっと楽しかったです!!」
今にも立ち上がり騒ぎ出しそうな2人を、衝動的に遙が両手で肩を押さえ宥めて、何とか止める。
だが。遙の顔にも『理解不能』と、どでかく油性ペンで書かれていた。
その隣では少女が、自分は何も知らず連れて来られたのに、この人達、何で今此処で言い合いしているの、と頭を抱えているのが、少年は至って冷静だった。
「今朝は名前を言っただけだから、顔だけ知っているのかと思ったんだ。それに、案外仲良さげに見えたもんだから。だけどお前等、そこまで否定する事か?」
黒髪の少年がそう淡々と言うと、散々バカにしていた少年も意味が解らないと声を上げた少女も、泣かれた事を知られたくなかったのか、何も言わず椅子に座り直す。
その様子をずっと見守っていた少女の方は、もう直ぐ終わりそうだと陰で胸を撫で下ろした。
遙も息を吐くと、笑って言った。
「顔見知りならこんなゴミ屋敷、見せられないよ。でも知らない人だったから、気にせず入れたっていう事」
黒髪の少年は、何を言ってんだ、と呆れて苦笑する。
「初対面だって同じだろ。この荒れようはもう、ゴミ屋敷ランキングでギネス新記録に登録されても可笑しく無い。まぁ誰かさんが片付けてくれれば、直ぐに終わるんだがな……」
少年の鋭い視線が向けられたのは——やはり、彼女だった。
視線を受けたと同時、椅子から小さく飛び上がった少女は、引きつった笑顔を見せ、この場から逃げようとした。が。
「え、そっそうなんですか!? わ、私てっきり、物置部屋か何かだと思っていたんですけれど……あ、此処って、ちゃんとした教室だったんですね!!」
ずっと黙っていた少女は、何を思ったのか、「凄い……っ」と先程の泣き顔はどこかへ飛んで行って、生き生きとした眼差しでショートヘアの少女を見つめる。きっと、改造か何かを想像したのだろう。現に、固く握り締められている両手はこの教室をとんでも無いものへと作り替えそうだ。
変な汗をかき始めた。それを2人の悪戯っ子がからかう様に、目を細め嗤っている。
「そ、そんな、凄い事じゃ無いよ。あははは……は……」
彼女はこれからも、ゴミ屋敷の中で過ごして行くのだろう——