コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.13 )
- 日時: 2015/04/23 22:33
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
参照100回突破記念!!
何にしようか散々悩んだのですが、結果、短いお話をやる事にしました。
旭が来る前のお話なので、旭は出て来ません。ゴミ屋敷の実態をお解り頂けたら嬉しいです(笑)
*
【ゴミ屋敷清掃計画】
「あっつぅぅぅぅぅ!! 何此処、蒸し暑いっ。怠いし、暑いし、もうほんと何な訳!?」
先程から口を開いてばかりで、手を全然動かそうとしない遼に、頭を軽く叩く伶。しかし、伶の方も手を動かそうとは思っているのに、中々片付けが進まない様子である。
窓際担当の伶はさて置き、奥にある本棚担当の遼が何故寝そべって窓から外を眺めて休んでいるのかは謎だが、とにかく心も体も疲れ切っていた。
「ほらほら、2人とも! ちゃんと手を動かして。皆で手分けしてやれば、早く終わるからさ」
声がした方向を見れば、遙が何時もの爽やか笑顔を2人に向けていた。ちゃっかりと遙だけビニール手袋をはめているのを見た遼は、横にしていた身体を起き上がらせると遙の後ろを覗いた。確か、遙は壁周り担当だ。かなりゴミは減っているのだろうか。
だが、特に壁の汚れや床に散乱したゴミの数は、先程とあまり変わっていない様に遼の目には見えた。
「……遙だって進んで無いじゃん。何処片付けたんだよ、逆にコレ」
身体は疲れ切っているはずなのに、口の悪さだけは疲れを知らない様だ。
しかし、そんな事気にせず遙は胸を張って答えた。
「壁にかかっていた汚いカレンダーを頑張って取った!」
冗談抜きで真面目にそう答えた遙に、問うた遼と隣で聞いていた伶は、尊敬を通り越して呆れ返った。
2人はやっと意識を取り戻したかと思うと、遼は自分の肘で遙を小突き、伶は遙の頭を優しく撫でた。
こういう真面目な返答に間違って嘲笑ったりすると、後で何をされるか分からないと知っていた。
「しっかし、このゴミの量は異常だよな。何時の間にこんな溜まったんだ?」
伶が遙の頭を撫でながら、誰も答えやしない空中に問う。
この疑問ばかりは、遼も遙も答えられなかった。なんせ、自分がこんなにゴミを溜めた訳では無いからだ。
では誰がこんなにもゴミを溜めたのか——それは彼女である。
「あ……わぁぁぁっ! え、ちょっ、お、落ちるぅぅぅっ!!」
自分から上の方を片付けると言っておいて、椅子からバランスを崩し落ちそうになっている佑里を、近くにいた伶が慌てて抱き抱える。
かなり高さのある椅子を持って来ていて、何やら引き出しには開けた形跡が残っていた。
伶に抱き抱えられたお蔭で、一応、頭は打たなかった様だ。伶がほっと息を吐いたその時。
「……怪我無かったんだったら、早く離れれば? 恋人みたいに抱き着いちゃって、ほんと気持ち悪いから。邪魔。退いてよ」
何処からか罵倒が降って来たかと思えば、声の主は遼だった。その顔は、然も不機嫌そうだ。
唖然として口を開き言葉が出て来ない佑里と、何事もなら動じないはずだが今回ばかりは少し驚いている伶は、遼を見上げたまま固まった。
元々口が悪いとはいえ、こんなにも遼に罵声を浴びせられたのは2人とも初めてだった。
「遼……お前どうした。何か、何時も以上に口が悪くなって無いか?」
そう伶が言うと、遼は身体を少しだけ揺らして「別に……」と小声で呟き、背を向ける。まだ驚いている気持ちを沈めようと、2人は黙ってその小さな背中を見つめる。
すると、「あぁっ!」とまた違う声が2人の頭上から降る。遼からその声がする方へと目を向けると、遙だった。
そして、遙の目の先を見てみると——
「さ、さっき取ろうとしてた引き出しが……っ」
そう。佑里が不慣れな椅子まで使い、取り出そうとしていた引き出しが先程の衝動で落ち、その中に入っていた紙やら何やらで、椅子の周りのゴミが増えていた。
疲れ切った3人と、少年に抱き抱えられて動けない少女は、まだまだゴミが散乱している空き教室を見渡しては溜息を吐いた。
どうやら、練りに練ったこのゴミ屋敷清掃計画は、儚い夢として失敗という終わりを告げた様だ。