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Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.19 )
日時: 2015/02/14 12:41
名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)

参照400回&500回&600回突破記念!!



 今日(更新日)が丁度「節分」だったので、5人の節分でも書こうかなって思って、突破記念を企画しました(^^)
 ……前半部分は作者のおふざけです。ハイ。節分関係ないです。個人的に佑里&遼の絡みが好きなだけです。
 此処だけの話、多分ですが、遙は登場の機会を狙っていたと思われます(笑)
 ※本編では、1月の中旬頃です。時の流れがかなり遅いです。
 


 

【小さな豆粒は大きな幸福を呼ぶ】


「ねぇねぇ、今日が『節分の日』だって知ってた?」

 何かを期待しているかの様な笑顔で佑里の首に両手を回し、頬と頬が当たりそうな程顔を近付けて、いきなり抱きついてきた遼は、傍から見れば可愛らしい子供に見えているのだろう。
 しかし、抱きつかれた本人は身体を小さく揺らして「またか」とでも言う表情をしながら、溜息を吐いた。その表情は、警察の取り調べに観念した泥棒に似ていた。
 因みにだが、今この空き教室、別名ゴミ屋敷にはこの2人しかいなく、伶、旭、遙の3人はまだ来ていなかった。
 
「…………知りませんでした」

 佑里は長机に映った自分と遼の影を見ながら、遼の返事を待った。そして、佑里の思った通り、間を空けずに元気良く声が返って来た。
 
「やっぱり! いやぁ、佑里ってバカだから、そういうの知らなそうだなぁって思ってさー」

 遼は楽しそうに喋りながら、両手で佑里の首を軽く絞めた。直後、佑里の口から苦しそうな声が漏れたが、遼はお構い無しで今度は自分の顔を佑里に近付ける。またもいきなり近付かれたからか、佑里は先程と同じ様に身体を揺らす。その様子を見ると遼は不気味な笑みを佑里見せ、首に回した両手を佑里の膝に乗せて、もっと顔を近付ける。佑里は不味いと思ったのか、逃げようとしたが後ろは椅子の背もたれ、前を向けば遼、左右は遼の手によって逃げようとも逃げられない。焦りつつも、目の前にいる少年特有の甘い花の匂いで鼻を刺激されていてどうにもならなかった。もう逃げられないと佑里は目を瞑ると————

「……あれ、2人ともそんな所で何してるの? もしや、キスの予行練習?」

 佑里は吃驚して声のした方を見ると、そこには一体何時からいたのか、遙が片手に大きなビニール袋を提げて2人の事を見つめていた。
 言葉通りならば、遙は「来たばかり」のはずなのだが、嗤った所を見ると「来たばかり」では無いらしい。佑里は口がきけない状態になっていたが、我に返ると自分に馬乗りしていた遼を勢いよく突き飛ばし、顔を赤らめて抗議した。

「あたしと遼くんが、キ、キ、キ……キスっ何て、する訳無いじゃない! す、するとしても、強引な遼くんじゃ無いもん!!」

 佑里は精一杯否定したのだが、遙の方は「そっかぁ」と全く聞いていない様子で、まだ嗤っていた。佑里は顔を真っ赤にして、もう1度否定しようかと思ったが、どうにも舌が回らない。
 一方で遼は、突き飛ばされた勢いで唇を切ったのか、左手で口元を拭っていた。特に反論をする気は無い様だ。当然と言えば当然だが。
 遙VS佑里の対決が始まるかと思われたその時、3人の耳にドアノブを回す音が聞こえて来た。伶は時間にルーズな為に、何時も遅れてやって来るので、3人は旭かと思っていた。——しかし。
 
「悪い、少し遅くなった……って、何で睨み合ってんだ、お前等。喧嘩か?」

 廊下を走って来たのか、少々息が上がっている事情の知らぬ伶は、遙と佑里を見た途端、喧嘩かと思った様だ。相変わらず「少し」所の遅れでは無いのだが、本人は気にしていないようだ。
 それと同時、睨み合っていた——と言うよりは、言い争っていた2人は、曖昧な笑顔でこの場を切り抜いていた。伶には絶対に知られたくないのだ。特に佑里は。
 所で、まだ来ていない旭はどうしたのだろうと、辺りを見回している遼は、不思議そうに呟いた。

「……珍しいね。伶よりも遅く来る人がいるなんて、さ」

 確かに、時間にかなりルーズである伶より遅いとなると、旭は伶よりも時間にルーズな人間なのだろうか。遼には到底そんな風には見えなかったが。
 遙が「まぁまぁー」と言って、何かを思い出した様に手を叩くと、片手に提げていたビニール袋から、これまた小さな袋を取り出した。その袋には、大きく「福豆」と書かれていた。その文字を見て、伶は今日が何の日かを思い出した様だ。
 
「でも……良いの? 旭ちゃん来てないのに、勝手に先食べちゃっても……」

 今にもその袋ごと食べ尽くしそうな遙に苦笑しながら、佑里は伶の方を見て問うた。問われた伶は少しの間考えてから、まだ来る気配の無い旭の顔を頭に浮かべながら「残しとけば……大丈夫じゃないか?」と遙から袋を取り上げ、笑った。取られた遙は、いかにも惜しそうな顔をして、袋を見ていたが、数秒経つと諦めた。
 伶が袋を開けると、1人1人にその年の年齢の数ずつ渡した。渡し終えると、皆黙々と食べていたが、最初に食べ終えた遼は、周りが後1つ2つ残っているのを羨ましそうに少しの間見ていると、動いた。
 まず最初に、最後の1粒を食べようとした佑里の手から、素早く豆を奪い、食べる。次に遙の豆を取り、その後で伶の2粒を口に含む。挙句の果てには、旭の為に残しておいた豆まで、勢いよく口に流し込むと、固まっている3人に向かって、少々小馬鹿にした様な笑顔を見せた。

「——ちょっ! 遼くんっ、いきなり何するの!! あたしの分まで食べて、しかも旭ちゃんの全部食べちゃったじゃない!!」

 佑里は憤慨しながら遼の頬を抓ると、既に食べ終えた遼は小さな舌を出して、佑里を挑発した。頭に来た佑里を伶は何とか宥めると、深く溜息を吐いた。100粒入りの袋を1つしか遙は持って来ていなかった為、旭にはもう、渡せる福豆は無かった。どうしたものかと頭を掻いた伶の耳に、いきなり遙の声が響いた。
 驚いて振り返ると、そこには何と、両手に遙が持って来た袋よりも数倍大きいと思われるビニール袋を提げ、汗だくとなっている旭の姿があった。
 一瞬、驚きのあまり声も出ず、硬直していた伶だが、何秒か経つと旭の元へと駆け寄った。
 
「何か…………凄い、大荷物だな。コレ、重かっただろ。大丈夫か?」
「え、あ、はい。ちょこっとだけ重かったですけど、大丈夫ですよ。少し待ってて下さいね」

 汗だくとなっているその顔を人目見れば、誰でも「大丈夫では無い」と思うのだが、当の本人は満面の笑顔で平気だと答えた。旭は床にかなり重いであろう大きな袋を1つ置くと、もう片方の袋の中を何やら漁り始めた。4人は旭の周りに集まって見守っていると、やっと何かを見つけたのか「あった!」と瞳を輝かせて旭は皆の顔を見る。そして袋の中から取り出したのは——海苔だった。ジップロックに入っている。
 
 4人の顔が、またも固まった瞬間だった。

「今日、節分だって聞いたから、急いで家から恵方巻きの食材とか色々持って来たんですけど……え? 何で固まってるんですか?」

 袋を漁りながら説明をしていた旭は、それぞれの顔を交互に見ながら、不思議そうに問うた。しかし、その答えは直ぐには返って来なかった。
 旭の手には、使い慣れている杓文字が固く握り締められていたのだった。