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Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.22 )
日時: 2015/05/05 07:56
名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)

参照700回突破記念!!

 

 2回目です(^^)
 今度は、1回目に出て来なかったあの3人の『バレンタインデー』模様を覗いてみたいと思います。
 何だか……S系少年と口悪少年に囲まれたアイドル佑里が、かわいそうになっちゃいますね(笑)
 ではでは——どうぞ、ご覧ください!





【1日限定狼さん】


「あ、佑里やっと来たー。ハイ、下さい?」
「ねぇ佑里ー。早くチョコ頂戴。俺、待ち過ぎてお腹空いちゃったのー」

 アーモンド形の瞳を持ち、焦げ茶色ショートヘアをした、ゴミ屋敷のアイドル————橘佑里は、只今、人生最大とも言える苛立ちの真っ最中だった。

 先程から、佑里の可愛らしい瞳を見つめている少年が2人いる。どちらも佑里の知る人物であった。それは、佑里本人が知ってほしく無い情報でさえ、言ってもいないのに、勝手に知っている様な関係の少年達なのである——が。佑里は何故か笑ってはおらず、怒りと言う感情で満ちていた。
 だが、そんな彼女の表情を目にしても、少年達は笑顔を崩す事は無かった。寧ろ「待っていましたー」と言わんばかりに、2人でハイタッチを交わしていて、それが余計に彼女の怒りに火を付けたのだった。
 
「なっにが、『ハイ、下さい?』やら『チョコ頂戴』よ! そもそも何でいる訳!?」

 何時もより高い声を出して、頭を押さえ、しゃがみ込んだアイドルの肩に、2匹の狼はそれぞれ片手を置いて、黒く染まった笑顔を見せ付けた。その顔は、どう考えても普通では無く、何か企みのある顔であった。
 
「えー。だって僕、2年生だから生徒玄関は此処だよ? いてダメな理由とか無いと思うけど」
「あ、じゃあ…………はっ! 遼くんは!? 1年生だから生徒玄関の場所、違うよね! な、何でいるの……っ」
「んーとね。先に1年の生徒玄関行って、靴を履いてこっち来て、空き箱に入れといた上靴に履き替えた」
「長っ!! 道のり長過ぎじゃない!?」

 狼達は、自分の話を聞いてはオーバーリアクションを取るアイドルを見て、「こんな癒しを求めていた……」と言うかの様な、恍惚とした表情で両手を合わせていた。意味の解らない狼達を睨み付けると、アイドルは自分の下駄箱へと小走りで向かう。もう、こんな狼達には構っていられない様だ。
——しかし。そんな行動、この『悪魔』とも呼べる狼達が許す訳は無く。直ぐに追いつかれて、1匹に抱きつかれてしまい、身動きが取れなくなる。その衝動で、持っていた靴がアイドルの手から離れて落ちてしまう。

「んっ!? ちょっ、遼く……っ! や、止め————!!」
 
 そう言って振り返った瞬間、もう1匹の狼がアイドルの肩に下がっていたバッグを勢いよく奪い取り、ファスナーを開けて中をかき回し始める。その光景を見たアイドルは、手を伸ばして止めようとするのだが、後ろから抱きつかれている所為で、全然届きそうも無い。数秒後に「あった!」と声を上げて、バッグを床に落とした。すると、抱きついていた狼も、目を輝かせて其方へと駆け寄る。
 一方、疲れ果てたアイドルは、床に落とされたバッグを拾い上げ、無気力で下駄箱に寄りかかる。そんな愛らしさを無くしたアイドルに、今度は正面から狼が抱きついて来た。勢いあまり、下駄箱の扉に頭をぶつけそうになったが、今のアイドルには、「怒る」と言う感情は無かった。ただただ、疲れただけである。
 
「ね! ね! コレ、貰って良い奴!? すげぇ上手そう!! 食べて良い? 拒否しても食べるけど!!」
「あぁ、うん。良いよ……って、もう食べてるし」
「コレさ、めちゃくちゃ上手いよ! 佑里凄い!! 毎日食べたいわ俺!!」
「な……何かありがとう。何時もなら『不味い』て怒るのに…………今日は素直だね。どうかしたの?」

 何時もならば汚されている所を、いきなり褒められたので、どういった反応をしたら良いのかが解らずに、慌ててアイドルは狼に問うと、もう1匹の狼が笑って答えた。

「あ、それはねー。遼は朝からずっと、佑里のチョコ楽しみにしてたからだと思うよ。佑里の事ばっか言ってたんだよ。えっと——」
「ちょっと待……っ! 遙っ!! 俺は、別にそんな事思って無い!!」
「えぇ? だって言ってたじゃん。『佑里のチョコ食べられれば、別に他のは——』とか」
「あぁぁぁ!! 分かった! 認める! だから、ちょっと黙れ!! 絶対その先言うなよ!? 絶対だからな!!」

 頬を真っ赤に染めた狼は、仲間であるはずの狼の胸倉を掴みかかり、片手で相手の口元を隠して、何とか止めに入る事が成功した。しかし、半分近く本人に聞かれてしまった恥ずかしさからか、アイドルの方に向き直ると睨み付けた。だが、頬が真っ赤に染まっている為に、直ぐ「照れ隠し」だと伝わってしまい、睨んだ事による効果は狼の思っていたよりも少なかった。
「なーんだ」と息を吐くとアイドルは、2匹の狼に近付き、満面の笑顔でこう言った。その笑顔には、先程の2匹と似た意地悪な思いも含まれていた。


「————それで、お味の方はいかがです? 狼さん達」