コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.28 )
- 日時: 2015/04/23 22:23
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
佑里と遼の衝突から約30分後。
「はぁ!? 何でそうなる訳? それは関係無いじゃんか、バカもいい加減にしてよ!!」
「遼くんだって、さっきの関係無いですぅだ! それにこれは、関係ありますけどー!!」
2人の口喧嘩の様なものは——収まる所か寧ろヒートアップしている最中だった。
他の3人は流石に此処まで来ると、もう面倒臭くなって来たのか、口出しせずにトランプでババ抜きをしていた。因みにだが、ジョーカーは今、旭が持っている様子である。勝手に遊んでいるのだが、決して彼等が悪い訳ではない。それは間違いないだろう。彼等の努力は実に素晴らしいものであった。
先ず、佑里か遼のどちらかを落ち着かせ様と、3人で協力をして取り押さえ、身動きが出来ない様にしてから、何とか苛立ちを和らげようと試みたが、両者共に聞く耳を持たず、最終的には断念する事に。
その後も、場を和ませる為に色々と気を遣ってはみたのだが、苛々最高潮に達した2人には、思いは届かず、逆に怒らせてしまう羽目となる。3人は何も悪くないのにだ。
そんな彼等に一体何をしろと言うのだ。この努力の結晶は、きっと誰かが後で褒めてくれる事だろう。
「ねぇー……まだそのお話、終わらないの? あまりにも長——」
「外野は黙ってて!!」
「あ、ハイ」
遙が溜息を吐きながら勇気を出して訊いた言葉さえも、今の2人にとっては邪魔なものとなってしまっている様だ。対面して座っている被害者仲間が、大粒の涙を流しながら慰めていた。この光景は何なのだろうか。
まだ終わりを告げそうにない佑里と遼の言い争いを横目で見ては、小さく息を漏らした伶が、眠たげに目を擦っては欠伸をして腕の上に頭を乗せている旭に、躊躇いながらも謝った。
「その……色々と悪いな。何時もは直ぐ終わるもんなんだが、今日は長くて……疲れただろ」
「え、あ、いっ、いやいや! 私も見てて……た、楽しそうですし? 全然大丈夫ですから、あはははは!!」
そんな伶に「と、とんでもない」と両手を顔の前に突出し、左右に振ると、旭の前に座っている遙が「ま、疲れるよねー」と呟き軽く笑った。その瞳は——まるで昨日の息絶えた魚の様である。これではまた、この無数ともいえるゴミを数え始めてしまうのではないかと、旭は内心心配していたが、どうやら遙にはそこまでする気力も残っていない様だ。
そして、その間にも佑里と遼の可愛らしい口喧嘩は、ますます盛り上がっていたのであった。
*
辺りはもう暗くなり始めていた。しかし、旭には時計を見るという行動すら出来る体力が精神的に無かった。とにかく、辺りは真っ暗だった。
旭の隣には、黙々と何かのノートらしきものを開いては、難しそうな言葉や記号を書き込んでいる伶がおり、前には机に顔を横にしながら静かに眠っている遙がいた。どうやら旭も、あの後眠ってしまっていた様だ。横を見ると、口喧嘩に疲れ果てたのか、ソファーで並んで眠り込んでいる佑里と遼もいる。
「……ん、起きてたのか。もう大丈夫なのか?」
「あ、はい。もう眠気は飛んで行ったんですけど、こ、これはどういう……」
伶は旭の目線から、佑里と遼の事を訊いている事に気付くと「あぁ」と苦笑いして答えた。
「お前と遙が眠った後に、佑里も遼も横になって眠ったんだよ。口さえ開かなきゃ合うんだが。どうにかしないとな、本当に」
2人が眠った後からずっとノートに勉強をしていたのか、両手を上げて少し背伸びをし筋肉を解すと、バッグを片手にまだ起きていない3人の所へ向かい、肩を揺らして起こし始めた。その様子を見ていた旭には、何だか伶が皆の兄の様に見えて来て、可笑しそうに口を押えて笑う。
半分眠っている者もいるが、どうにか起こし終わると皆を廊下へ引っ張り出して、ドアの鍵を閉める。廊下で歩いている途中、伶は何かを思い出した様で旭の方へと振り返ると、何時ものポーカーフェイスで言った。
「——お前は、自分の能力が嫌いか?」