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Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.4 )
日時: 2015/05/13 22:46
名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)

「えぇっ!? い、いないんですか? 私を呼んだ黒髪の人……」

 その場に崩れ落ちた少女は、魂の抜けたかの様に、虚ろな目でゴミ屋敷を見回していた。
 それもまぁ、解らなくは無い。
 名も知らぬ黒髪少年から此処に呼ばれたは良いが、自分を連れて来たのはまた別の茶髪爽やか少年。ゴミ屋敷に入ったが、呼んだ張本人は外出中。
 少女にとってはもう、涙ぐむ所では無く本気で泣けてくる話なのだ。
 
「何かごめんね。あの人、直ぐどっかに行っちゃうんだよね。んー、もうそろそろ帰って来るとは思うんだけど……」

 少女の顔の目の前で、勢い良く手を叩いては謝っているのは、ゴミ屋敷には似合わない愛らしさが目立つ、焦げ茶色のショートヘア少女。
 そんな可愛らしい少女が申し訳なさそうに俯きながら、自分の様子を窺っているのを見たら、少女はもう何も言えなかった。
 そういえば、先程自分を連れて来た爽やか少年はどうしたのだろうかと、少女が横目でチラリと姿を探せば——いた。直ぐ傍に。
 
「え……何で笑っているんですか……」
「ごめんごめん。いやー、何か面白くって……あはははっ」

 唖然としながら少女は爽やか少年を見つめる。
 少年は、口を両手で押えているのだが、笑い声はどうしても手と手の隙間から零れてしまうらしく、今度は腹辺りを押さえ始めた。笑いのツボにはまった様だ。
 その様子を見た瞬間、少女は耳まで真っ赤に染めて、崩れ落ちていた身体を起こし、少年の傍まで行くと、殴った。しかし、痛さを感じさせられる程、強くは無かった。この場合は叩いたとの方が強さ的に適しているのだが、少女は至って本気だった為、殴ったにしておこう。
 
「……ぶっ!」

 今度は吹き出した。
 少年もある意味顔を真っ赤にさせて、息を荒くし咳き込む。その所為で、少女の不必要な怒りがまた1段と増して行くという事は、分かってはいないのだろうか。
 そして有ろう事か、この後、2人を見守っていた、ショートヘアの少女までもが吹き出してしまったのだ。
 知らない人達に囲まれて、手汗までかいていたというのに、こんな屈辱を受けては、温厚なこの少女も怒らないはずは無く。

「もう、帰らせて頂きます! 失礼しました!!」
「あー! ダメダメ、ねぇ帰んないで!! ごめん、僕が悪かったからさぁ!!」
 
 黒髪少年が帰って来るまで、姫君少女と2人の少年少女の間には、不穏な空気が流れていたのであった。