コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ヒーロー達の秘密会議。 ( No.41 )
- 日時: 2015/06/25 15:58
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
参照1300回突破記念!!
この前、1200回記念をさせていただいたばかりなのに、あ、ありがとうございます!! 嬉しいです!! 先に企画しておかないと、長引いてしまうので、3話は後程。最近『佑里は遼か旭以外に渡したくない』病で、頭が痛いのですが、どうしたら良いんでしょうね。伶と遙、好きだけど……。旭と絡んでくれ!
*
【たとえば、君は寝起きが悪いと知ったなら】
外はすっかり暗くなり、自分と彼以外の生徒はもう誰もいないだろうと、少女は思った。日が落ちるまで、校舎の中に残っているのは初めてだが、彼女の脳内はそれ所ではない。いや、10割中2割程度は占めているけども。
「りょ、遼くーん。そろそろ起きて……きゃっ」
寝不足だった少年は、授業が終わり少女に偶然会った途端、安心したのか眠りに落ちてしまったのだ。いきなり目の前で倒れ込まれたので、電気の点いていない廊下を通り、何時もの空き教室へ入った少女。その時、少年はというと、少女に背負われて幼い顔のまま、違う世界で遊んでいた。思い切り少女を抱きしめて。そんなこんなで辿りついたは良いものの、ソファーに座らせた彼女が、これからどうしようか悩んでいた時、隣に座った衝動でバランスが崩れてしまい、少年の綺麗に整っている顔が、少女にぶつかる。幸い、少年は目覚めなかったのだが、吃驚した所為か少女が小さく悲鳴を上げてしまう。
「心臓が弾け飛ぶかと思った……。もう! 起こしちゃう、よ?」
「んっ」
感情に従い首を動かそうとした少女の身体は、浮いた様に軽くなって数秒後、向きを変えて寝転んでいた。今度は悲鳴を上げずに——上げられずに、頭の整理が終了するのを待つ。確認の為に、もう1度上を見上げる。黒のフードを被った少年がいるだけで、先程と特に変化なし。しかし、少女には落ち着いて判断出来る心の隙間が見当たらない。寧ろ、変化がない事によって更に混乱したというのに、無駄に強がりな性格をしているので、簡単に認めたくない様だ。震えていたが、口調は普段通りに告げる。
「あははは、冗談が過ぎるよー。ほらほら、早く退いてー」
「…………」
少年の返答はなかった。ただ少女の方を真っ直ぐに、開花した蕾を思い浮かばす様な笑みを見せる。自分の知っている彼じゃない彼に、身体が熱くなるのを少女は感じた。これ以上目を合わせてしまうと、自分ではなくなって行く気がし、極力視界に入らなくするが、からかって来ない少年がどうしても気になって、ゆっくり横目で見る。
「ひゃ……っ」
思わず漏れた言葉は、発した少女の耳にさえも届いていなかった。今、彼女の頭が考えているのは、散らばり始めた星でも、難題を問うて来る教師でもない。乾燥を知らない紅色の唇が、伸びた髪に近い首筋に触れている事だ。抵抗も出来たはずだが、何故だか身体に力が入らなくて息を吸うだけで精一杯。時折吹きかかる甘い匂いに、尚更動けなくなってしまい、回り続けていた脳味噌が停止した。赤らんだ頬を隠そうと思っても、柔らかい感触が襲いかかって来る。少女が諦めかけたその時、ずっと首筋に顔を寄せていた少年が位置を離して、笑いかけた。
「——大好き」
え、と呼吸の仕方を忘れて、少女の中にある時計が止まった。嬉しいとも、悲しいとも思えなかった。驚きだけが支配していたからである。解放されたのは、お互いの顔が僅かな距離になった後で、問う事は出来なかった。塞がれる——理解した瞬間そう思った少女だが、不思議と嫌な気分になれなくて、何処からか出て来る喜びに似た感情を、戸惑わずにいられない。諦めよう、少女は震える身体も託す覚悟で瞼を閉じる。
激しく鳴った鼓動はきっと、こんな体勢だからではないんだろうな。そう負けを認めた彼女は願う。相手が君だったから、胸が締め付けられて苦しいのだと。
「…………あれ?」
待っても温かな彼が来ないので開けると、素肌を赤色で塗られた少年が映る。片手で何度も目を擦った形跡があり、口は閉じたり開いたりしているので、少女は首を傾げた。同時に「何を今更慌てているんだ……」と呆れてもいたが。頭を左右に振る少年へ、恐る恐る訊いてみる事にした。彼女が考えている通りならば、今の彼は——
「もしかして、寝惚けてた? 遼くん」
「そんな事っ……なくもないけど」
「やっぱり」
どうりで何時もの彼ではなかった訳だと、溜息を吐く。だが、なら「大好き」とは何を指していたのだろうかと、興味本位で尋ねた。少年の肩が飛び上がり、夜になり始めたが暑い様で汗を掻きながら、何もない方向を見て喋る。
「やー、夢の中でご飯食べててさ。好きな料理出て来てー、うん、寝言みたいなもの」
「そっか。良かったね、美味しかった?」
普通なら通用しないだろう言葉を、少女は疑いもせず信じてしまうので、少々罪悪感を覚えるが、鈍感なのがいけないのだと開き直って、笑い出す。釣られて少女も、理由なく笑ってしまった。心の底から。これからも、一緒にいられたら良いな。思いは風に乗って、伝わる事はなかったが、輝く星空からのプレゼントとして叶う感じが、少女にはした。胸が弾む明日がまた来ると、夜道を2人で歩きながら。