コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ヒーロー達の秘密会議。【7/12更新】 ( No.44 )
- 日時: 2015/09/09 15:04
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
基本活動は此処、空き教室で行う。活動内容は悩み事を抱える人を見付け、その悩みを能力で解決するというもの。自分1人で出来る悩みならば1人で解決して勿論良いが、2人以上の能力を必要とする場合は、一応此処で話し合い——即ち会議を開いてから解決を目指す。それをまあ、今回は別として『秘密会議』と呼ぶつもりでいる。集まりも定期的ではない。だからといって、集まってはいけないという訳でもないが。以上が『お助け団』の説明になる。
伶が響かせる言葉1つを旭は耳にしながら、胸の中で暴れる苦い思いを閉じ込めるのに必死だった。“寂しい”感情なんて今まで自分に秘められた能力の所為で、数え切れない程作り出して、感じていたというのに。まるでそれが初めて湧く情の様で、我慢しないと瞳から溢れてしまいそうになる。一層の事、溢れ出てしまえば楽になるのだろうか。判らない疑問を自分に投げかけるが、自分でも判らないのだ。どちらが正解なのかの答えは現れない。
「別に『お助け団』を作る事に関しては、何も言わないけどさあ。その困っている人、どうやって探す? 方法はあるの?」
机に肘を置き、その上に顎を乗せている遼は上目遣いで伶に訊いた。そういえばそうだなと、旭の右側へ座る佑里は思い、彼と同じで何処までも黒い瞳を見つめる。遼の質問に伶は「ああ」と小さく呟いてから、目を細めて笑う。
「佑里に見つけ出してもらう予定だ」
「はっ?」
まさか同様の質問を抱いていた自分の名が出て来るとは、微塵も思わなかったのだろう。唇を半開きにしたままフリーズした。隣で遙がその様子を面白そうに見ているが、脳内を疑問符で埋め尽くす彼女は気付こうともしない。伶に訊いた本人は、佑里とは違いきちんと納得したのか礼を言う。旭はというと、当然ながら疑問符を彼女に負けないくらい描いている訳だが。
自分だけ理解していないのだと勘違いした旭は、恥ずかしそうに佑里に耳打ちして問いかける。しかし、残念な事に問われた相手も何の事かと頭を捻らしている現状。解らないとはっきり言ってしまえば良いものの、先輩としてのプライドからか考える振りをして誤魔化し始める。佑里の様子を見ていた遙は、目を擦って腹を抱える。その後「遼、説明してやってー」と答える側を交代させた。遙の言葉で旭は身体を反転させ、遼の方を見る。運良く助かったかと思いきや、口に手を当てた遼から「伶の言葉聞いていなかったの?」と挑発的な態度をとられてしまう佑里。この会議が終わったら、一言,
言うと決めた瞬間だった。
「だからさ、佑里の能力を使うって事。でしょ?」
「そうだ」
「ええ!? あれ使うんですか? 嫌ですよ、違う方法考えてください」
いきなり立ち上がり、言い終わればやる気が失せた小学生みたく座っては机に突っ伏す。遼や伶の言葉を聞いた瞬間、幼い女児に変わった佑里へ、どういう事だと旭は首を傾げた。佑里の能力は探索可能な広範囲で使用出来るものなのだろうか。では、何故彼女は嫌がっているのだろうか。浮かぶ疑問を察してか遙が教える。
「佑里の能力ってね。今いる場所から見えない場所でも視えるんだよ。この前は——」
「それ以上喋らないで」
不機嫌な状態の佑里は、自分以外に説明されるのが耐え切れなかったのか、彼の口を両手で抓んだ。遙に何かを語らせると無駄に長くなるというのは、まだ逢って数日の旭でも知っていた。なので、止めてもらえて正直良かったと旭は思ってしまうが、それは仕方がないのであろう。こればかりはどうしようもならない。
2人が落ち着いた所で、向かいに座る伶は少し驚いた様な顔をして「嫌なのか?」と佑里に訊く。年上とはいえ、長い時間一緒にいる伶相手なのに、大声で「嫌です!!」とは口が裂けても言えない佑里だ。伶が聞き取れるのか心配になる音量で「…………面倒臭いので」と言った。それが聞こえた遼は、だから掃除出来ないんだよと言ってはならない言葉を言ってしまう。終わってから一言ではすまされないだろうと、旭は真ん中で苦笑する。
「他の方法で考えているのは、地道にクラスメイトから悩みを聞き出すくらいだが。その方が良いか?」
「……能力使います」
吐き捨てた答えに「分かった」と返した伶に、戸惑いつつ片手を上げる人物がいた。どうした、片峰。伶の声に肩を跳ね上げ、小声で何か告げるが誰の耳にも届かない。出逢って最初はこんな風だった旭だが、此処数日では慣れて声も大きくなった。その彼女が頬を赤くしてまで言いたい事なのだから、相当の質問だろうと4人は想像し、そちらを見る。旭の口から漏れるのは、口内で遮断出来なかった部分な訳で、何を言おうとしているのか予想も不可能。緊張しなくても平気だよと、旭の背中を擦りながら佑里が先を促す。息を飲み込んでから、顔を上げた。
「み、皆さんに…………なっ、名前で呼ばれたい……です」
飛び跳ねる旭の心臓とは違い、はい? とでも言いたげな表情の4人は、言い終わった後でも旭から目を離さなかった。