コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.1 )
- 日時: 2015/02/08 18:36
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
- 参照: episode1:そんな私
三人兄弟の一番下でぬくぬくと育った私は、五つも八つも歳が離れている兄に甘やかせられながらも自分というものを持っていると思う。
甘ったれにはなりたくない。
ていうかそんなのキャラじゃないって。
ぬくぬくとまるでお姫様のように今まで生きてきた私だが、どちからというとお姫様より女王様の方があっている気がする。
でもキツい性格はみんなから好かれないし穏やかな性格の方が何かと都合がいい。
表の私を言葉で表すのなら『温厚』。
みんながそう、私に思うように偽って生活してきたのだから。
——対して。
私の裏は。
普通に暴言だって吐くし反論だってするしで。
表の面影なんて一切ない。
それが、私、黛梓(まゆずみ あずさ)。
そんな黛梓は今日高校へと進学します。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.2 )
- 日時: 2015/01/04 17:27
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
「梓もついに高校生か」
私の方を見ずにそういう私の兄。
まぁ、みたらよそ見運転なんだけれど。
「なに。なんか変? 光汰にい」
「いや別に。でもさ、あんなに小さかった妹が大人への階段を着実に上ってるのって、結構変な感じだよ。なあ? 篤」
「そうだな。あんなにチビだったのにな。……あ、今でもチビか」
後部座席に座って悠々とスマホをいじっていた篤にいは、声だけでも意地が悪い。
実際ミラーで顔も見たけれど、意地の悪い笑みを浮かべていた。ドSめ。
「155あれば充分でしょ」
「へえ。梓それしかないのか」
「うわ。それしかとか言われた。光汰にいも篤にいと同じで最低だ」
日本人女性の身長を侮ってはいけないよ。
「ごめんて。小さい方が可愛いよ」
やっぱり小さいとか思ってんじゃん。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.3 )
- 日時: 2015/01/04 17:27
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
「ていうか早く篤にいも免許取れよ。バイクだけとか馬鹿にしてんの」
「うわひでぇ。俺が車の免許取ったら足にする気だろ」
「当たり前」
ぎゃーぎゃーと小さい頃から変わらないくだらない会話をする内に今日から通う高校が見えてきた。
随分遠いな。電車通学は確定か。
「綺麗な学校だね」
ニコリと、学校に負けないくらいの綺麗な笑みを作った光汰にいは身内の欲目なしでかっこいい。ほんとに。
篤にいも見習えよ。
「入学式、ちゃんと梓ズームで取れよって父さんに言われたから俺頑張るね」
「いやいやがんばるってなに!?」
「俺ら来れない母さんと父さんの代わりだから」
いやまぁそれは知ってるけどどっちがお母さんでどっちがお父さんよ……。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.4 )
- 日時: 2015/01/04 17:28
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
ちょーっと親バカ……いや、バカ親な両親からこんな冷めた私が産まれるなんて生命の神秘だと思う。
そんな二人だが、娘の入学式に来るなんて小学校以来ない。
忙しい仕事だからしょうがないんだけどね。寂しいとも思わないし。
逆に卒業式には毎回来て大泣きして去って行く。
ほんと迷惑な親だよ、まったく。
「愛利ちゃんも光成だっけ?」
「うん」
光汰にいに言われてくるくるとした髪の毛の彼女を思い出した。
橋本愛利。
保育園からの友達で兄ズとも何げに仲が良かったりする。
「へえ、愛利も光成なのか。良く入れたな」
「またそういう意地悪言う。愛利は私のことが好きなんだから、数段レベル上げてでも私と同じとこ入るに決まってるでしょ?」
「凄い自信。意地悪なのはお前の方なんじゃねえの」
そんなことないって。——
言う前に止まった車に若干びっくりしつつも、篤にいにミラー越しににっこり笑った。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.5 )
- 日時: 2015/01/04 17:28
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
「自信とかそういうんじゃないよ。毎日好き好き言われれば嫌でも自覚するでしょう?」
光汰にいにありがとうと言ってシートベルトを外した。
周りには何台もの車が停まっていて、家から学校までの距離の遠さがわかる。
「ほんとに綺麗なとこだね。中條高校にしなくて良かったね」
「中條は問題外でしょ。偏差値低すぎて先生にも親にもギョッとされるわ」
家からすぐ近くの中條高校。
偏差値40の所謂バカ高。
家から近いという理由で一瞬候補にいれたけど、それは本当に一瞬ですぐに除外した。
家の周りを制服を気崩しすぎた中條の生徒がうろうろしているのを見たことがある。
言うと、愛利は中條が丁度いいくらいの頭なんだったんだけど猛勉強の末なんとか光成に合格。
中條の偏差値の倍近くあるのに凄いよね。
無謀とか思わなかったのかな。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.6 )
- 日時: 2015/01/04 17:28
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
「行こうか。緊張してる?」
「するわけないじゃん」
緊張してもしなくても、うまくやっていける自信は変わらない。
今まで何事もそれなりに出来てきた。それはこれからも変わらない。と思う。
学校の裏の駐車場を抜け、校舎の横を通ると校庭があった。
桜の木が植えてあるが、比較的寒い地域のここは、桜が咲くのは五月ごろだろうか。
そのころにはクラスにも馴染み、楽しく学校生活を送れているーーはずだ。
「あ、おーい! 梓ぁー」
「愛利! おはよう」
パッと切り替える。
切り替え早ぇ、と隣で篤にいが呟いた気がした。
巣で無邪気(というか馬鹿)な愛利は、兄ズに向かって勢いよく頭を下げる。
二人は笑顔でおはよ、と返していた。
篤にいは笑顔なんて私の前では滅多に見せないからな。貴重だよ。
私なんかより篤にいを撮った方が面白いと思う。