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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.15 )
- 日時: 2015/02/08 18:35
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
- 参照: episode2:生徒会と、それから、私
「あああもうっ!! なんなの!?」
突然の呼び出しによって私は走ることになった。
誰が呼び出したのか、なんのために呼び出したのか。
事は数分前に遡る。
——————
「梓ちゃん、教えてほしいところあるんだけど……」
昼休み。
お弁当を広げようとしたら友達に話しかけられた。
同じクラスになった愛利は、それを見て眉を寄せる。
そりゃそうだよね。これからお昼ご飯ってときに話しかけられたらイラっとくるよね。
「ん、なに? どこ?」
でも私はそんなことを表に出さずににっこり笑って言った。
自分に正直なのはいいことだと思うけど、そんなんだと嫌われちゃうよ、愛利。
「数学のここなんだけど……」
「ああ、ここ? これは法則がわかれば結構簡単よ。ここに代入して……」
「あ、代入するの!! ありがとう」
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.16 )
- 日時: 2015/01/04 17:38
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
さすが新入生一位だね!! と言われてもあまり嬉しくない。
一位になりたくてなったわけじゃないし。
おかげで委員長任されそうだったよ。断ったけど。
「よし、お弁当食べよう」
「うん」
愛利は曖昧に頷いた。そして、言った
。
「梓って……ほんとに頭良かったのね」
「喧嘩売ってんの」
声を潜めて低く言う。
「違うよ!! ただ、すごいなーって」
「愛利が馬鹿なだけでしょう?」
「うわひど……」
お昼休みはがやがやうるさいから誰も私たちの会話に気づいていない。
入学して三日経ったけれど私の本性に気づいているひとはまだいない。
愛利は別。愛利は私が猫被る前を知ってるからバレるバレないの問題ではないんだよね。
「私にも勉強教えてよ」
「やだよ」
だから好きなことも言えて結構楽だ。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.17 )
- 日時: 2015/01/04 17:43
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
愛利はプチトマトを箸でつかみながら(つるつるすべってつかめてないけど)、
「そういえば梓さ、なんで委員長断ったの?」
と私に訊いた。
「委員長だと自分の時間減るじゃない」
「えー。梓が委員長だったら絶対クラスまとまってたよ」
それに、と愛利は続ける。
「個人的なアレだけどさあ、委員長になったあの……七海さん? ヤなんだよ」
「へえ、愛利は七海さんにどんな恨みが」
「恨みじゃないし!! あの子私無理なんだよ。生理的に。確かに可愛いけど、なんかそれ利用して男に色目使ってる感じ」
「ふーん」
男に色目使ってんなら私もおんなじじゃないかな?
少なくとも良く思われようとして動いてるから。女子にも男子にも。
「そういえば、副委員長かっこいいよねえ。凌くんだっけ」
愛利はイケメンが好きだ。
今までの告白を断った本当の理由は「イケメンじゃないから」だし。
馬鹿ってほんとに馬鹿なことしか言わないよね。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.18 )
- 日時: 2015/01/04 18:00
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
「へー、愛利って凌くんみたいなのがタイプ?」
「モロ」
モロって。
苦笑いしながら私は卵焼きを食べた。
確かにかっこいいよね。わかるわ。
見た感じ凌くんが副委員長やるって言ったから七海さん委員長に立候補したっぽかった。
馬鹿だな。
愛利は七海さんが嫌いみたいだけど私は七海さんに感謝しなくては。
私が委員長を押し付けられそうになったとき、凌くんが「俺副委員長ならやります」つって。
そしたら七海さんが二拍くらいおいてから「私委員長やります!!」って。
副委員長ならやるってなんだよ、とは思ったけど七海さん委員長になってくれたし良かった。
これで部活とか楽にできる。
——……そう、思っていた。
のに。
«ピーンポーンパーンポーン»
少し間抜けな音がスピーカーから出た。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.19 )
- 日時: 2015/01/04 18:06
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
それを聞いたみんなはぴたりと静かになる。
しーんとなった教室は凄く違和感があって、いつもこうだといいのにと呑気なことを思っていた。
……そして聞こえる、とても綺麗な男の人の声。
『生徒会長の長瀬紘斗です……』
途端に「きゃっ!!」とうるさくなる教室。
マジで!? 紘斗さんじゃん!? と興奮した様子で騒ぐ女子。
視界の端に、七海さんが入った。
きゃーきゃー言いながら、顔が真っ赤だった。
『えー……一年生から募集した会計と書記の件ですが、今年は指名でいきたいと思います』
「指名ってなに」
愛利は小さくつぶやいた。
「強制ってことでしょ」
それに小さく返した私は、興味がないので箸を持ち直した。が、
『1年A組……黛梓と同じく笠原凌。至急三階生徒会室まで来てください』
名前を呼ばれて、箸を落としそうになった。
——……え。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.20 )
- 日時: 2015/01/04 18:11
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
目の前の愛利が、ばっと勢いよくこっちを見た。
——いやいや、見られても困るって!
うまく状況を呑み込めずに困惑していると、「あーあ、梓ちゃんかあ……。ま、梓ちゃん凄く可愛いし凄く頭いいし当然だね」と、女子からの落胆? 諦め? の声。
凌くんは他の場所でお昼を食べていたみたいで教室にはいない。
……行くしかない……の?
嫌な予感しかしないんですけど。
ちょうど最後の一口だったミートボールを食べて、お弁当を片付けて、席を立った。
「梓ちゃんー頑張ってー! あとで感想教えてねー」
なんのだよ。
女子のセリフにツッコみをいれつつ、愛利に
「ごめんね、用事できちゃった。お弁当箱バックに入れといて? 愛利ちゃん」
と、100%嘘の私で言う。
「はーい。いってらっしゃい」
それに手を振ると、私は走り出した。
そして、冒頭に戻る、と。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.21 )
- 日時: 2015/01/11 10:08
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
道中色々な人にじろじろ見られながら走ってきた。
生徒会室。
音楽室の近くにあるから場所が覚えやすくて助かった……。
身なりと息を整えノックする。
走って来たって思われたくないし。
「どうぞ」
——扉の向こうから聞こえた声は、放送のひとの声とは違ったけど、またもや綺麗な声をしていた。
「失礼します」
ガラガラ……と音をたてゆっくりと開く生徒会室。
「いきなり呼び出しちゃってごめんね? 梓ちゃん」
そこにいたのは、ソファに座る四人の男子生徒、プラス凌くんだった。
……え、ソファ?
「そんな怖い顔しないで?」
前を真っ直ぐ見ると、人の良さそうな笑顔。……わ、かっこいいひとだ。愛利が好きそうな爽やかさがある。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.22 )
- 日時: 2015/01/11 10:14
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
「あの……」
「まあ、とりあえず座って」
二人掛けのソファを指差す爽やかなひと。
そこには凌くんが座っている。
いやだから、なんでこんなとこにソファーがあるの。馬鹿なの。
そう思いながらも凌くんの横に座る。目が合うと、にこりと微笑まれた。爽やかだな。
「二人にさ、話したいことあるんだ」
さっきっからこのひとしか話していない。生徒会長……ではないから、副会長かな? しっかりしてそうだし。
「ね、紘斗?」
首を可愛らしくかしげた……爽やかさんは、私たちの前の四人掛けのソファーに座った男の人を見た。
うわ、このひとも凄いかっこいい。てか、全員かっこいいな。愛利とかいたら失神しそう。
「あぁ」
初めて言葉を発した紘斗さん。
——声でこのひとが生徒会長だということがわかった。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.23 )
- 日時: 2015/01/11 10:20
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
隣の凌くんを見たら、目の前の四人に負けないくらい綺麗な顔で……あ、あれ?
イケメンの人口密度多くない? ここ。
「いきなりだけど」
生徒会長は、恐いくらい整った表情を少し緩めて言った。
「お前らに、生徒会役員になってほしいんだ」
——は。
放送で言ってたのってつまり、このことか!!
「や、無理っす」
私より先に凌くんが言っていた。
「なんでだ」
「いや俺生徒会とかそういうガラじゃないんで……。それに部活に力入れるって決めてたし」
「……そっちの、黛はどうなんだ」
突然話を振られる。
……いや、
「無理ですね」
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.24 )
- 日時: 2015/01/11 14:14
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: J85uaMhP)
- 参照: 第二章
私がそう言うと、目の前の四人は目をまん丸くした。
「……は?」
生徒会長に至っては、口まで開けてらっしゃる。うける。
「なんでか理由聞いてもいい?」
爽やかさんが私たち二人を見て言った。それを見て、凌くんと目を見合わせる。
いや、だって……。
「いきなり言われて『はいわかりました』なんて言う人いないと思いますけどね」
凌くんは明らかに「コイツら馬鹿なの?」って目で見てる。
そう、それ。それが言いたかった。
「申し訳ないですけど私もほんとに無理です。失礼します」
なんかもうこの人たちも無理。かっこいいけどなんか無理。
そんなことを思い、立ってスカートのプリーツを直していると、
「申し訳ないけど」
——爽やかさんが、にっこり笑顔で言った。
「君たちに拒否権なんてないから」
——は。
思わず出そうになった言葉は、扉の音によってかき消された。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.25 )
- 日時: 2015/01/17 16:03
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
「黛ぃー笠原ぁーいるかー」
扉の向こうに目を向ける、と、
……とこには我らが担任、篠原先生がたっていた。
何しにきた。
「あ、篠原先生。いいところに」
「おぉ、遥。なんだいいところって。なんか俺に用事か?」
この爽やかさんは遥というのか……。なんか、名前まで爽やかだな。
「用事ってほどでもないのですが」
「そーか。でもちょっと待て。俺は黛と笠原に用があってきた」
——用があるっつうか、生徒会の顧問だろ……。
今まで喋らなかった生徒会長の右隣の人が声を発した。
可愛い見た目に似合わず口が悪い。
「篠原先生、生徒会の顧問なんすか」
凌くんが訊く。
「まあな。じゃんけんで負けたからな」
あっははいっそ清々しいカミングアウトだね。
先生方はなにをしてらっしゃるのか。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.26 )
- 日時: 2015/01/17 16:09
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
「まぁそんなことより、黛、笠原。
——俺は俺のクラスから二人も生徒会に出るなんて嬉しいぞー」
大口開けて笑う篠原先生に、目が見開く。
「や、先生、私たち生徒会には……」
「言ったよね、拒否権ないって」
私の言葉は遮られた。遥さんによって
。
「あ? まぁ、そうだな。もう校長も認めちゃってるし今から拒否するのは無理だな」
「え?」
な、なんですと———!!
「してやったりって感じなんだろうな」
隣でぽつり、凌くんは呟いた。
……同感。
「だから言ったでしょう? 決定事項だよ」
遥さんの優しそうな笑みも、今では何故か怖い。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.27 )
- 日時: 2015/01/17 16:15
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
「お前ほんっとに性格悪いのな……」
今まで一言も喋らなかった人が言った。
うんうん同感だ!
腹黒さでは負けないとか日々思ってたけど強敵が現れたね!
「え、なんか言った? 朔」
朔、と呼ばれた人は、遥さんの笑みを受けて顔をひきつらせた。
わからなくもない。
最初は笑顔も爽やかだなって思ったけどなんか……今はもう複雑だ。
「それより自己紹介しようよ」
もはや司会係の遥さんは、ね? と周りを見渡して言った。
篠原先生もうんうんと頷く。この人は馬鹿とみた。
「俺は三枝遥。二年で、会計です」
よろしくね、そう言って笑った。
私も笑う。——今の私の心情を、表情に出したら殺される……!!
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.28 )
- 日時: 2015/01/17 16:35
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
「はい次」
遥さんがそう言うと、遥さんの右隣の朔さんが動く。
「椎名朔。えっと、一応? 副会長です。よろしくね、二人とも」
ニコニコと笑っていた。
なんとなくチャラいかもって分析。
あっ、ていうかこの人副会長なんだ。遥さんじゃないんだね、意外。
そして、可愛らしい見た目の人が口を開いた。
「僕が鈴原英。書記だよ。よろしくね? 梓ちゃん、凌くん」
笑顔可愛い。えくぼの特典付き。
目とかくりっくりしてて……な、なんというか、凄い美少年だ。
そして……一同の目がソファの真ん中に移った。
なんとなく空気がはりつめている。
「……長瀬紘斗、生徒会長。よろしく」
——……入学式のときの『生徒会』らしい感じのない、クールな人だった。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.29 )
- 日時: 2015/01/17 17:20
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
ちょっと意外で目を見開く。
視線の先の人はけだる気にあくびをした。
ちょっとっていうかかなり意外だ。
入学式でサクサク話してたからもっと……いや、なんでもない。
意外さを堪えきれなくて何気なしに朔さんに目を向けた。
朔さんもこちらを見ていた。
「いやー! 噂には聞いてたけど……っていうか入学式の日に見たけど、梓ちゃん、すっごい可愛いね! 肌とかすべっすべ!」
もうちょっとちこう寄れ!
そう言って手招きされる。それを無視して、
「黛梓です。よろしくお願いします」
なんとなく朔さんは苦手だと思った。
「笠原凌です。よろしく」
私に続くようにして凌くんが言った。顔は少しひきつっている。……わかる気がする。
「ああ、そうそう。言ってなかったな」
篠原先生が口を開いた。
篠原先生も、このイケメン集団に混じっても違和感ないくらいにかっこいい。
「笠原は書記。んで、黛は会計な」
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.30 )
- 日時: 2015/01/17 17:33
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
ああ、そのこと。と言われたことを瞬時に理解。
……ていうか。
「は、遥さんと……一緒……?」
思わず漏れた言葉に「なに? 梓ちゃん?」とにこにこ笑顔で律儀に返された。
いやごめんなさい。今のはマジで失礼でしたね!
間違っても遥さんと一緒は嫌なんて思っちゃいけないね!
「おっと。俺もう弁当食べに行かなきゃだから」
親睦深めてろ。そう言って篠原先生は部屋から出ていった。
私もお弁当食べてねえよ。
篠原先生は妻子持ちの愛妻家で、奥さんも篠原先生らぶらしく、イライラするくらい夫婦間が良い。
そのお弁当もどうせ奥さんが作ったんでしょ。
自分作れよ。私もお母さんに作ってもらってるけどさ。
「二人は昼飯食べたのか?」
凛とした声で紘斗さんは言った。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.31 )
- 日時: 2015/01/17 18:04
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: kct9F1dw)
……これ、は。
気を使って食べたと言った方がいいのか。
それとも素直に食べてないと言った方がいいのか。
印象がいいのはどっ——……
「梓さんは知らないですけど、少なくとも俺は食べてませんね」
そっちか。
凌くんに同意する形で「私も食べてません」の行っておいた。
「あー、それは悪いことをしちゃったね!」
本当に思ってるのか、軽い口調で言う英さん。
てか、そう思ったらお腹空いてきた。
早く帰りたい。
そう思って、「あの」と声を出す。
「帰っていいですか?」
——なんとなく空気が止まった気がした。
何事だと思っているうちにそれはなくなった。
何事だよ。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.32 )
- 日時: 2015/02/08 15:12
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
それともここは生徒会の皆さん素敵、みたいな体でずっとここに居座った方が良かったかな。
いやでもそれは私のプライドが許さない。かっこいい人は素直にかっこいいと思うけど基本興味ないし……とぐだぐだ思っていると。
「そうだね。強引に呼んだのこっちなんだし、うん。そうだそうだ。ごめんね戻っていいよ」
誰宛か、わからない雰囲気で遥さんが言った。
私たちに向かって言ったんだろうけどさ。
言われて早々に立ち上がる凌くんに苦笑し、
「失礼しました」
と二人で生徒会室を立ち去った。
——生徒会に入るということがどれだけ異質ということかを、
「ねえねえ、黛さんっ!! どうだった? 生徒会入るの!?」
「私も入りたいー!」
「凌のヤツ、あいつどこ行った!? 逃げたのか!?」
……教室の騒ぎ具合と、道中の廊下での注目ぶりで私は理解した。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.33 )
- 日時: 2015/02/08 18:11
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
その日の放課後。私たち二人はまた呼び出された。
誰から、なんて言うまでもない。
「愛利ごめんね。行ってくる」
小さくそう言うと、愛利は眉を下げながらも「いってらっしゃい」と返してくれた。
あいつら部活見学行かせない気か。ざけんな。
「凌くん行こう」
凌くんに声をかけると、周りの男子もこちらを向いた。
「ああ」
私の言葉に応じるとバッグを持ち私の隣に並ぶ。
じゃあな、なんて言葉を凌くんと交わしてた男子たちはご丁寧にも私にもじゃあねと言ってくれて。
私もばいばいと返すと背を向けた。
二人ってほんとお似合いーとか周りの女子が言ってたけど無視だ無視。
私は生徒会とかヤだからここの座、譲ってあげてもいい。
「梓さん頑張ってー」
——……七海さんの、応援の裏に嫉妬が込められた声は。
地獄耳の私は気づかないフリをした。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.34 )
- 日時: 2015/02/08 18:18
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
道中何気ない話をすると、すぐ生徒会室に着いた。
あああ、ヤだなあ。
凌くんをちらり、ちら見する。
——わー、すっごく嫌そうな顔……。
そうね。嫌なのは私だけじゃないわよね。
「しつれいします」
こんこんとノックをしてから声をかけた。
そしてドアを開ける。
「ごめんね、また呼び出して」
そうすると、遥さんがいた。
げっ、とか思っちゃったけれど顔には出してないたぶん……。
「いえ、大丈夫ですよ」
私がそう言うと、朔さんがにこり笑った。
「ああ、でもな、これから毎日放課後ここで活動するから! あ、新入生歓迎会の一週間前は一年生は生徒会の仕事はしなくていいんだけどね。
一年入ったし楽しくなるな〜」
「へえ、そうなんですか」
……って、ん?
「毎日……ですか?」
私と同じ疑問をもった凌くんが問いかけた。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.35 )
- 日時: 2015/02/08 18:24
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
「まーまー、座って?」
英さんがぽんぽんとソファを叩く。遠慮なく座らせてもらった。
昼休みと同じ位置だ。
「生徒会の説明させてもらうね」
遥さんがそう言うと、
「紘」
と生徒会長に声をかけた。
昼から特に重大なことしてないもんね。
「ああ。……まず、部活動のことだが」
少し間を置いてまた口を開く。
「生徒会に入った者は原則部活動には入らない。生徒会の活動に専念すること」
「——え」
凌くんが声をあげた。
凌くんってスポーツとか万能そうだし、これは残念だろうな。
私は特にしたいこともなかったし、まぁいい。良くないけど。
「ごめんね、凌くん」
英さんが申し訳なさそうに眉を下げた。
- Re: 完璧美少女の苦悩 ( No.36 )
- 日時: 2015/02/08 18:28
- 名前: 浦上澪 ◆rEvr4ZSeHI (ID: xPB60wBu)
謝るんだったら私たちを解放しろよ。
イライラが募るが、「以上だ」と無表情でいう生徒会長に何も言えなくなってしまった。
元々何かを言う気もないけど。
「わからないことは英、または遥に訊け」
「よろしくね、梓ちゃん」
同じ会計だし。
そう言う遥さんに、私は特に文句を言う気にはなれず、
「……そういえば皆さん三年生ですか? 二年生ですか?」
と素朴な疑問をぶつけた。
「俺たちみんな二年生。三年生は何故かいないよ」
首を軽くふった遥さんに、ふーんと思う。
そうか。先輩か。そりゃそーか。
「じゃあ梓ちゃん。会計の仕事しようか」
「はい。遥……先輩」
先輩呼びをした私に、びっくりしたのか目を見開きながらも、「先輩呼びもいいね」ととびきりの笑顔を私に向けた。
生徒会に入るということに抵抗する気は……もはや、ない。
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