コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 妹さんの誕生日 ( No.6 )
日時: 2015/01/11 19:04
名前: 独楽林檎 (ID: FTx5/VHw)



 学校にたどり着いたら、次に目指すは私が所属する6年1組……ではなく、学校1の読書ガール、春宮千紗さんがいる、6年2組!
 
 靴箱で靴を履きかえて、一気に階段を駆け上がるっ!
 4階に着いたら、廊下を突っ走り、6年2組のドアをガラガラッ!

 で、

「失礼します!春宮千紗さん、いらっしゃいますか!」

 叫んで、返事を待つ!

 靴箱に始まり、ここにてゴール。
 その間、大体1分45秒!

 さいこうきろく、こうしんだドン!

 ……ぜえぜえ、はあはあ。

 特に、最後のモノマネが応えたかも。

「えぇ、春宮さん?」
「どこかにいる?」
「教室にはいないよ?」
「じゃあ、いつものとこ?」
「そうだねー」

 教室がざわめいている。

「ということで、いつものところにいると思う。探してみて」

 6年2組の担任の先生が言った。

「え、いつものとこって、ど」
  ピシャッ!

「ふええぇぇ……」

 質問しようとしたけどドアが閉められて、怖気ずく。
 こわぁ……。

 それに、

「いつものところ、て」

 どこなんですか、6年2組の皆さま!
 心の中で強く問いかけても、返ってくるのは虚しい沈黙だけ。

「……はぁ」

 でも、よく考えてみると、春宮さんって

    ザ☆読書ガール

 だったよね。

 なら、「いつもの場所」って言ったら、あそこしか、無いジャン!

Re: 妹さんの誕生日 ( No.7 )
日時: 2015/01/12 15:13
名前: 独楽林檎 (ID: FTx5/VHw)

 となったら、目的地までダーーーーーーーッシュ!

「廊下は走らず歩こう!」

 ポスターが見えたけど、3月3日を盛り上げるためだ、この際気にしない!

 見えてきた!

 けど、あそこまで突っ走るのはさすがに良くないから、ペースダウンする。

  ガラガラッ。

 ドアを開けるのは、やっぱり勢いづいた。

 で、ここの……図書室にいる人の視線が、本から離れる。

 こちらを向いていてもらえるならば、見つけやすい。

 春宮さんなら、今も本に目を落としているはず……


  いた!


 黒い髪を、5年間ほど伸ばしっぱなしにしていそうな、イメージカラーが黒の人!

 春宮さんの所まで、ダッシュ……せずに、きちんと歩く。

 ふう、歩くのって久しぶりかも。

「春宮さん」

 相手との距離が1m以内になったところで、声を掛けてみる。

 さて、どんな反応をされるか……

「……何……」

 あ、返事はあった。

「あのさ、友達の誕生日がもうすぐで、パーティを行うんだけど、その時に出す食べ物が、なかなか決められなくって……」

 我ながら、説明が下手だなぁ。

「……助けてほしい、という意味……?」

「うん、そう、そうなの!」

 ぎゃっ、すごく大きな声になっちゃった!
 どんな反応をされるか……

「しっ……」

 あれ、そんなにリアクション大きくないのね。

「……司書さんに怒られるよ……」

 そして、3点リーダが多くない?

「……分かったから、付いてきて……」

「……ハイ……」

 うわっ、口調がうつったじゃんよお!

 そして、この人、アドバイスをしてくれるのだろうか……

Re: 妹さんの誕生日 ( No.8 )
日時: 2015/01/16 21:49
名前: 独楽林檎 (ID: FTx5/VHw)


「ここです」

 言われて、彼女が指さした方を見る。

 こうしておびき寄せられた(←)のは、学校の中で、イチバンお高い場所。

 屋上。

「なぜ、ここへ……」

 つまるところ、ほかの場所でも話ができると思うのは、私だけでしょうか?

「邪魔をされないため……」

 はあ、邪魔をされない……

 春宮さんらしいといえば、春宮さんらしいのかも、しれないなぁ……。

「じゃあ、改めまして」

 私が背筋を伸ばすと、春宮さんもそうした。

「助けてください」

 頭は下げずに、相手の目を直視。

「……はい……」

 この人、中身はあっさりしてるなあ。

 じゃなくて。

 本題、本題。

「まず、その友達は、和食が好きで、ケーキも大好き。肉は嫌いで、一番好きなのは魚介類。中でも、サザエが好き。」

 エミが言っていた通りに言えば、間違わない!

「……メモしてね。」

 言われて、ちゃっとメモセットを取り出す。

 それを見て、

「寿司、天ぷらの盛り合わせ、ざる蕎麦、冷奴、湯豆腐、がんもどき、肉じゃが、すき焼き、赤飯、手巻き寿司、粕汁、魚の照り焼き、もんじゃ焼き」

 ああ、ものすごく早口ですね、春宮様!

 さらに、提案された数、13個!

 すごくない?すごくない?
 春宮さん、すごすぎない?

 あ、でも、

「サザエが無い……?」

 思わず声に出してしまったことを後悔すると、なぜか(←)答えが返ってきた。

「あ、忘れてた……なら、サザエは、壺焼きとバター炒めで」

 ええ!?
 春宮さんも、何かを忘れることが、あるのぉ!?

 ふええぇぇ……。

 あ、壺焼きと、バター炒めね。メモメモ。φ(..)

「その友達の誕生日、呼んでね……」

 3点リーダを後に引きながら、春宮さんは、身をひるがえして図書室へと帰った。

 帰る場所が図書室って、すごい話だけど。

Re: 妹さんの誕生日 ( No.9 )
日時: 2015/01/18 18:27
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)


 私は教室には戻らず、屋上を見渡す。

 6年生の3月だし、もう、ここに来るのは最後だったりして。

 む〜。

 ここって、いい場所だと思うな〜。

 思い入れがあるわけでは無いけど、理科の授業で使ったことがある。

 何かしら、文字でも残そうかなぁ?

 書くとしたら、やっぱり油性ペンか彫刻刀?

 ないよね、彫刻刀。

 油性ペンはあるから、これで書こう。

 いや……書くとしたら、だよ?

 決まったわけじゃないよ?(本当は文字をのこす気満々です)

 で、内容は……やっぱ、イニシャル?それとも、今、やりたい事?それか、後輩へのメッセージを書いちゃったり?

 う〜む、定まらん。

 ……あっ!

 将来の夢!?

 よっしゃ、書こう!










 どこにだよ!

 うぅ、もう、そんなことはどうでもいい。(←)

 一番近いところに、書いちゃえっ!

 油性ペンを取り出し、なんとなく寄りかかっていた塀に、落書きをした。




  お誕生日に関係なくて、ごめんなさい!

Re: 妹さんの誕生日 ( No.10 )
日時: 2015/01/23 21:42
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)


 無事に、将来の夢を書くことができた。

 さて、次はエミがいるはずの6ね


  キーンコーンカーンコーン!


 チャイムが鳴った。

 つまりこれは、朝休みの終わりを表していて……

 そして、学校に来て一度も6年1組の教室には顔を出していないわけで……

 さらに、いま、ランドセルを背負っていて……

「うわああぁぁぁっ!」

 ある意味でいう、遅刻だあぁぁぁっ!

 は、早く、教室に行かないと……

 本日3度目、ダッシュ!

 しながら、

 うあーん、これ、エミと妹さんのせいだよぉぉぉ。

 なんていうくだらないことを考えている。

 と。


 ピーンポーンパーンポーン♪
 ガチャガチャッ。
「えー、今のチャイムは誤報です、今のチャイムは誤報です、引き続き、朝休みを元気に過ごしましょう」
 パーンポーンピーンポーン。


 最初の「ピ」から最後の「。」まで、わずか10秒!

 放送委員さん、早口すぎない!?

 ……って!

 護法!?五報!?ごほう!?ゴホウ!?

 ……やっぱり、誤報だよね。

 よかった!

 んだか、

 ムカツク!

 んだか。

 はっきりしろ、私の気持ち!









 まあいい!

 あとは、6年1組へと駆けこむだけだ!

 立ち止まっていた足を動かし、本日4度目、だ———っしゅ!

「廊下は走らず歩こう!」

 さっきのと同じポスターが目に入ったけど、そんなの無視無視!

 こちとら急ぎの用だいっ!

 あ、6年1組!

 駆け込みだ!




 はあはあ、ぜえぜえ。

 セーフだぜっ!



 時計を見る。

 ただいまのじこくは、はちじごふんです。
 ちなみに、はちじじゅうごふんまでにきょうしつにはいれ、といわれています。

 ちょっと、この文章読みにくいな……

 え〜っと、8時5分?

 いつもより少し遅いぐらい?

 ええぇぇぇ。

 走らなきゃよかった!

 でも、このままだと宿題を出せない!

 まず、持ち物をしまおうっと。

 その次には、エミを呼び出すから!

 待ってろよ、エミ!

Re: 妹さんの誕生日 ( No.11 )
日時: 2015/01/24 22:56
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)


 宿題だして。

 ランドセルの中身を机に(無理矢理)押し込んで。

 2月後半にしては厚い上着を脱いで、ランドセルにぶち込んで。←

 ランドセルを後ろの棚にガシャッと。

 して、完了!

 その間、約5秒!



 え……いくらなんでも速すぎだって?

 しょうが無いじゃん、独楽林檎が適当に書いたんだから。

 ……だが、この過程をこなした後にも、すべきことが山ほどある。

 いざ、6年3組へ!

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

「失礼します!」

 ……って、独楽林檎!

 勝手に飛ばすなよ!

 特に何も起こらなかったとはいえさあ!


 おっと、台詞、台詞。

「村咲笑さん!いらっしゃいますよねぇ!?」

 ……なぜに門前払い?

 なんていう自分に対する疑問は置いといて。

「は〜い、っとぉ、アオイかぁ!」

 エミ本人が返事をした。

 コノヒト、おしゃべりが大好きだもん、教室にいないわけがないのだ!

「何用にございますかぁ?」

 それにしても、エミって、相変わらず、マヌケなしゃべり方するねー。

「妹さんの誕生日の話なんだけどさ、」

 簡潔に話をまとめたい。

 と思ったら。

「ん、じゃあ屋上行こっかぁ」

 ここでいいのに、あろうことかアノ場所に誘われた!

「え、エミ、ここでい」

「いいからいいからぁ」

 言葉も遮られるし!

 その間にも、どんどん6年3組の表札が遠ざかっていく。

 つまり、引きずられてるよ!

 あんたねえ……!

 私を片手で引っ張っていくって、肩が丈夫すぎるんですけど!

 それに、もう一つ。

「なんで、よりによって、屋上なのよおおぉぉぉっ!」

Re: 妹さんの誕生日 ( No.12 )
日時: 2015/02/10 20:45
名前: 独楽林檎 (ID: chZuMjzt)


「ほい、着いた!」

 そう言ってエミが立ち止まると、私、ざっと立ち上がった。

 そしてエミを見る。

 にこにこにこにこにこにこにこにこぉっ!

 そんな満面の笑顔だと、立ち去りにくいんですけどっ!


 そして、なぜ立ち去りたいかというと。

 エミが立っている場所の後ろに、私が落書きした壁がそそり立っているから、だよぉっ!


 お願いだからエミ、そのニコニコ攻撃(名付けてニコニコ波)をやめて!

 そして、今のところ無事だけど、あなたの後ろにある壁、見ないでね!

 割と、背の低いあなたの目線だと、見えざるを得ないからねっ!

 と、心の中で叫ぶも。

「でぇ、何ぃ?もうちょいぃ、ラミの情報聞きたいぃ?」

 エミ、あんた、いつでも陽気だよね。

 頬をひきつらせつつも、

「今日さ、エミの家行ってもいい?」

 出来るだけ怒りを抑える私、逃げない私、えらいでしょ?

 それにも気づかず、

「ん、いいよぉ?」

 エミ、あんたさ、本当に陽気だよね!

「そ、れだけ、だか、ら」(^言^)

 こんな顔文字を書きつつも、怒りを、出、来、る、だ、け、抑える私、えらいでしょ!?

 さすがに私の殺気に気が付いたエミは、

「じゃ、じゃあ、ラミにも伝えとくから!」

 あっちから逃げて行った。

 そこで、放送のBGMが消えた。

「もうすぐ、チャイムが鳴ります。教室に入って、朝学の用意をして、静かに、席に座りましょう。これで、朝の放送を終わります。」

 さっきの放送とは違って、この人の声、ゆっくりしてて聞きやすい!

 ……じゃなくて。

 早く「教室に入って、朝学の用意して、静かに席に座」らないと!

 でも、「もうすぐ」とはいえ1分は余裕があるし。

 もうやることはないし、歩いて帰ろうっと。

Re: 妹さんの誕生日 ( No.13 )
日時: 2015/01/29 22:00
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)

   平日ですが、更新します



 〜放課後〜

「ただいまっ!」

 ばたん!どたどたどた!

 帰ってすぐに村咲家に行くことになってるから、結構急いでます!

 ランドセル置いて。

 A6ノート持って。

 冷蔵庫の中の……鯖の味噌煮を4切れ、タッパーに詰め込む。

 ああ、おいしそう……


 じゃなくて。

 よしっ、いざ、出陣じゃいっ!











 着いた!

 家から出て、5秒でインターホンをポチッ!

 いや、速いわけでは無いんだよ?

 だって、青永家の玄関から村咲家の玄関まで、約25mなんだもん……。

 そりゃあ、5秒で着くっしょ!?

 ……じゃなくて。

 自分に突っ込みを入れた直後、

『は〜い』

 エミではない声が聞こえた。

「えっと、あの、エミの友達の、青永葵ともうします、妹さんに会いに来ました」

 大丈夫?

 言葉づかい、間違ってない?

『は〜い、ちょっと待っててね〜』

 また、さっきの声。

  ガチャッ。

 スピーカーの音がして、指の骨をポキポキポキポキっとならす。

 で、それから10秒……20秒……30秒…………5分……

 ちょっと、遅すぎない!?

 5分もかかるかな、普通!?

 ああ、絶叫したい。

 と、その時!

「おまたせ〜、待った?」

 スピーカーの声の主が現れた。

 ええ、待ちましたよ、そりゃあねえ!

 声には出さず、どす黒い笑みを浮かべて深〜くうなずいた。

「あら、ごめんね。じゃあ、案内するから、付いてきてね」

 言われて、その人……エミたちのお母さんかな……に着いていった。

 でも、この時、私は知らなかったんだ。

 ……これから小1時間続く、過酷な命令を……

Re: 妹さんの誕生日 ( No.14 )
日時: 2015/01/30 19:13
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)

なぜまた、平日に更新を……。




 前に来た時のように、エミの家の中身は私の家とそっくり。

 広くなったわけでは無い。

 どうしてこの人、5分もかかったのかな……。

 なんか、怒りも通り越して、呆れも通り越して、自分の気持ちがよく分からなくなって来てる。

 それにしても、どうして私、エミに妹さんがいることを知らなかったのかな?

 ………………………………………………………………………………。

 わかんない!

 まあいいや!(←)

 先の事を、3月3日の事だけを、考えておこう!

「はい、ここだよ」

 左上から声がした。

 え、ここが妹さんの部屋?

「がんばってね」

「へ?」

「……めげずにね」

 は、がんばって?めげずに?

 どういう意味?











 まあ、いいや。

 ドアを開けた。

 途端!

    バッシ—————————ン!

 プリンターが飛んできた。

 左から。

 鼻先をかすめながら。

 右へと。

 ひいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……。

 な、なぜ、プリンターが……

 こんな重いものが……

 あんな高速で……

 その時。

「ノックぐらいしなさい!」

 高くて幼い声が部屋に響く。

 左から。

 恐る恐る、左側を向くと。

 両手に爪楊枝を持った、女の子がいた。





 ちょっ、両手に爪楊枝!?

 片手に持つことはあったとしても、両手で持つ!?普通!

「え、おやつタイム!?」

 うわ、声に出しちゃった!

「違うわよ!」

 鼻先と喉元にそれを突き付け、女の子が何度も叫ぶ。

「問題!」

 いきなりっ!?

「あたしは、誰でしょうか!」

 はあ!?

「1分以内に答えて!」

 ええっ!?

 もう、分かってるんですけど!

「え、エミのいm」

「なんか、質問はないの!?」

 質問を期待してたわけ!?

「じゃ、じゃあ、さっきのプリンター、なんで飛んでいt」

「あんたがノックもせずにドアを開けたから!ほか、質問は!?」

 何を聞いてほしいのよ!

 思ったら。

  ピッ、ピッピッ、ピッ

 タイマーを操作する音が聞こえた。

 近くにあるタイマーをちらっと見ると、その画面は、59、58、57、56、55……。

 1分を計っているのか!

「ほら、質問!あたしが質問してほしいことを答えないと、問題に答えられないよっ!」

「うぅ……あ、じゃあ、妹さんが質問してほしいことって、何!?」

 これでどうだ!

「う、ずる賢い……あたしが何年生なのかってことよ!」

 よっしゃ、答えた!

「じゃあ、妹さんは、何年生!?」

   カンカンカーーーン!

 試合終了のゴングが鳴ったような気がした。

「3年生!問題、答えていいぞ!」

 よっしゃ!もう分かってるもんね!

「村咲笑の妹さん、村咲楽美さん!」

 爪楊枝が喉と鼻から離れた。

「せーかい!」

 やったぁ!

「で、何しにきたわけ?」

 満面の笑顔で聞かれる。

「妹さんの誕生日を盛り上げるために、来ました!」

 答えると……

 ありゃ、妹さん、きょとんとしてる。

「は?あたしに妹はいないけど?」

 ……あ。

「エミの妹さん、つまりラミさんの事なんですけど……」

 そのままにして言うと、なぜか、怒られた。

「あたしは、確かに、村咲エミの妹よ。でも、あたしは、ラミなの!」

 とか、

「信じられない!エミのヤツ、こんなのをパーティー係に呼んだわけ!?」

 とか。

 あのですねえ、言わせてもらうとですねえ、私、仮にもあなたの先輩ですよ?

 「こんなの」とか、言わないでくださいっ!

 そう思ったけど、声には出さない。

 代わりに、

「あのう……こんなもの、持ってきましたけど」

 持ってきた鯖の味噌煮を差し出した。

 すると妹さん……じゃなくて、ラミさん、目を見開いて、

「わあ!?こ、これ、鯖の味噌煮!?」

 タッパーを奪うように受け取った。

「もうっ!こんなの持ってきてたんだったら、先に言ってよ!」

 ものすごい笑顔。

「あ、そうだ!あんたに指令を与える!それをこなせば許してあげる!」

 指令!?

 しかも、「許してあげる」って!

「こっちに来なさい!」

 言われて、付いて行きながら、こう思った。

 さっきのセリフ、「来なさい」って!命令かよ!

Re: 妹さんの誕生日 ( No.15 )
日時: 2015/02/01 21:30
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)


 廊下を歩いている間、妹さん(こう呼んでしまっている)をず〜〜っと観察していた。

 頭はパイナップルで……さっきは黒く見えたのに、今は赤くない?

 それから、半そで&半ズボンでむき出しになっている腕と脚、めちゃくちゃ細い!

 文科系なのか、肌は真っ白で、見た感じは『か弱そう』なのに、中身は……

「ほい、ここ!」

 妹さんが指さしたのは、殺風景な広場。

「あたしの誕生日に使うから、1時間以内に床と壁、ピカピカにしなさい!」

 本当に偉そう。

 容姿で想像した人格を覆すよね、この人!

 ……なんて愚痴っててもしょうがないから。

 電気をつけて、床と壁を見つめる。

 これ、妹さんの肌みたいに真っ白で、すごくつるつる。

 これなら、掃除がしやすい!

「はい、がんばります!」

 おっす!

 と、腰の横で拳を作ったころには、もう、誰もいなかった。

 ……がくっ。

 ずっこけそうになったけど、そんなことをしている場合じゃない!

 部屋を見回す。

 家具が(時計以外)無い。

 飾りも無い。

 こびりついたような汚れも無い。

 あるのは、ただ一つ。

 ふかふかと積もったほこりだけっ!

「わ〜あ、これはすご〜い。」

 目測だけど、このほこり、2cmぐらいの厚さじゃない?

 素晴らしい……悪い方に。

 これを片付けるには。

 ほうき、ほうき。

 ほうきは無い?

 ……無いっ!

 これで、どうやってピカピカにしろとおっしゃるのですか、妹さま!
 もしかして、道具も自分で考えろってこと!?
 そりゃあ簡単には許してくれないでしょうけどね!
 どうすればいいのか教えてください!
 どうすればいいのかを!

 ……はあ。

 考えることだけに、一生かかりそう。

 ……。

 あっ!

 部屋から出るなとは言われてない!

 よしっ、家から取ってこよう!

 ついでに、ぞうきんも持ってこよう!

 よかった、一生もかからなかったじゃん!








   〜取って来て〜







 よしっ、掃除再開!

 ……じゃなくて!

 だから、独楽林檎!

 飛ばすのやめて!

 何事もなかったとしても、面倒でも!

 なんて、バカ相手に抗議している暇もないし。

 やらなきゃ!

 ガシガシ、パタパタ、ゴシゴシ、キュッキュッ。

 ……スッテンコロリン!

 うぅ、痛ててててて。

 ほこりで滑ってこけた……

 私の日常生活の中では無かった体験デス。

 持ってきたのはほうきとぞうきんとちりとりと水入りバケツだけだし……

 壁はもう磨き上げたけど、床はまだこれからだし……

 残り時間、あと20分だし……!

 急がないと、間に合わないよっ!

Re: 妹さんの誕生日 ( No.16 )
日時: 2015/02/02 21:49
名前: 独楽林檎 (ID: iFTmHP4V)

 ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシッ。

 只今、青永葵、家からもう一回持ってきたモップの二刀流に挑戦しています!

 これで時間も短縮!

 ……って!

「あと、5分!?」

 や、ヤバい!

 急がないと、本当に妹さんに許してもらえなくなる!

 許してもらえなかったら……

 エミの頼みをのんであげられなくなる!?

 うわ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!

 急げ、青永葵!

 この部屋全体を100で表すとしたら、残ってるのはあと25ぐらいだから!

 ぅおりゃぁぁぁ!










「は〜い、ちょうど1時間経ちましたヨ〜ン」

 妹さんの声が聞こえて、顔を上げる。

 今、モップが壁にぶつかったところ。

 つまり、ギリギリ間に合ったってこと!

「はい!今、終わりました!」

 いつの間にか閉まっていたドアの向こうに聞こえるように叫んで、

   ガチャッ。

 ドアを開ける。

 すると。

「うわあぁ!?」

 妹さんがすごい声をあげた。

 どうしたのかなぁ?

「ラミさん……?」

 声を掛けると、凍っていた妹さんが解けた。

 で、大きな声でわめきだす。

「ちょっと!これ、どうやったの!?あたし、無理な数字を設定したつもりだし、道具だって無かったでしょ!?」

 ……1時間もありゃ、出来るでしょ!

 そんな心の叫びも知らずに、まだまだ叫ぶ。

「これじゃあ、許すどころか認めないとならないじゃん!……あ、道具はあんたの家から持ってきたのね、あたし、「部屋から出るな」なんて言ってないもんね!あんた、なかなか頭がさえてるじゃん!」

 ……え〜っと、今、褒められたよね?

 珍しいな、妹さんが人を褒めるなんて!

「よし!これなら、パーティ係はあんたで決まり!今日は、もう、帰っていいよ!」

 言われたけど……まだ、私の要件を済ましてません!

 抗議すると、

「ああ、じゃあ、何?早くね!」

 急かすように言うのはやめてほしい……けど、それを声に出して言うのはおかしいから。

「今のところ、パーティのメニューはこうなっているんですけど、何か足したいものなどは?」

 A6ノートを見せながら聞くと、

「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜、もう少しデザート類を増やしてほしいね。それ以外は、いいぞ!」

 わ、デザート?

 そうか、それも必要!

 なんてったって、誕生日だもんね!

 そう思い、ノートに「デザート」と書いた。

 それを見て、

「はい、もう質問はないね。帰っていいぞ!」

 妹さんに押されて、私たちは村咲家の玄関へと向かった。

 腕で押されている感覚が無くなると、もうそこは玄関だった。

「じゃあ、明日から3月3日まで、家に通うこと!また明日ね!」

 そう言い残して、妹さんは、バッターーーン!とドアを閉めた。