コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 妹さんの誕生日 ( No.30 )
日時: 2015/02/14 13:48
名前: 独楽林檎 (ID: chZuMjzt)

「ほら、早く」

 右手を差し出されて、私は身構える。

 心の中で、数秒待ってから……5、4、3、2、1、

「おいっ!」

 ぜっ……ん?

 左下から声がして、三人で一斉にその方向を向く。

 そっちにいたのは、なんと!


 妹さんだった!


 何も言わずに、私を図書室の近くまで移動させて、私と真矢たちの間に立ちはだかるけど。

 え?何で?

 何で、妹さんがいるの?

 膨れ上がる疑問を抱えている私をよそに、妹さんは言葉をぶっ飛ばす。

「あんたら、何だ?うちのパーティー係に何の用だ?こいつ、図書室に行きたいようだが?」

 初対面のはずの先輩にも、偉そう!

 その口ぶりに、私が感動していた、その時。

 妹さんが、持っている手提げから何かを取り出して、自らの背中に設置した。

 白い画用紙に何かが書かれてる……

 ん?

『先に、図書室に行ってろ』

 ああ!

 さっきの移動には、そんな意味があったのか!

 小さく頷いて、そのまま、図書室に入った。

「あっ、ちょっ……!」

 真矢たちが追いかけてくるけど、無視。

 ほかに、することが山ほどあるし。

 それに。

「通さねぇ」

 妹さんがいるもん、大丈夫!

 これも、妹さんの誕生日を、盛り上げるためだから……!

Re: 妹さんの誕生日 ( No.31 )
日時: 2015/02/10 18:16
名前: 独楽林檎 (ID: chZuMjzt)

「春宮さん」

 飲み物のアイデアを聞くため、声を掛ける。

「……何……」

 相変わらず、三点リーダが多い返事。

 が聞こえた、その時。



   バッシーーーーーーーーーーーン!




 学校中に響くのではないかというぐらい、大きな音が、

 ドアが閉まっている、図書室の中にまで、

 聞こえた。

 けど、あの画用紙には、こんなことも書かれていたから。

『何があっても、今日、学校で私に反応するな』

 そして、きっと、今のは、妹さんか真矢たちが立てた音。

 反応しちゃダメ。

 と、先に、メモセットを装備する。

「今度は、パーティーに出す飲み物のアイデアが欲しいんだけど……」

 私が平然と答えることに、春宮さんは少しばかり驚いたみたいだけど、何かを理解したように、長文で答えた。

「緑茶、こぶ茶、玄米茶、豆茶、漬物茶、オレンジジュース、アップルジュース、クリームソーダ」

 本当にスラスラと答えるよね、この人!

「ありがとう」

 答えて、次に、

「3月3日って、空いてる?」

 聞いておいた。

 呼んでね、って言われていたから。

 予定を聞いて、日にちを伝えないと。

「……うん……空いてる……」

「そう?」

 なら、いっか。

「じゃ、パーティーはその日だから。詳しいことは、後日、ね」

 また、春宮さんに、何か聞くはずだし。

「……わかった……」

「じゃあね」

 立ち去る。


 それにしても、春宮さんって、本当に3点リーダが多いよね。

 中身はすごくいい人だし、声だってかわいいのに。

 何より、顔を半分隠しているのが、めっちゃもったいないと思わへん!?



 あっ、ごめん。

 なぜか、1週間に2回ぐらい、関西弁を発するようになっててさ。

 自分でも、変だと思ったけどさ。

 止められ……わ!

 い、妹さんの事、忘れてた!

 何で、忘れるの、私!?

 メモセットに触る前までは、覚えてたのに!

 やばい!

 真矢たちって、自分たちと同じかそれより目上の人には回りくどく攻撃するけど、下の人たちには容赦がないもん!

 妹さん、大怪我してないといいけど……!




 いや、ダメだ。

 というか、きっと、大丈夫だ!

 だって、昨日の事を思い出してよ!
   >>14
 あろうことか、プリンターをブッ飛ばしたんだよ!?

 きっと、大丈夫だって!

 ね、ね!?(焦)

Re: 妹さんの誕生日 ( No.32 )
日時: 2015/02/10 20:37
名前: 独楽林檎 (ID: chZuMjzt)

 きっと、大丈夫だぁ〜。

 大丈夫だぁ〜。

 自己暗示を掛けながらの授業は、流れるように終わった。

 そういえば、何の単元を勉強したっけ?

 なんていう疑問も、

「さようなら!」

「「「「「「さようなら!」」」」」」

 このあいさつで、吹っ飛んだ。

 でも、このまますぐに走って村咲家へと急行できる……なんて、都合のいいものではない。

 なぜなら、私が、みんなが帰った後に教室の後ろのドアを閉める係だから。

 それで、最後の一人が教室から出るなり、かまえていたドアをピシャッ!

 鍵をかけて、当番の仕事を終わらせたことを示すマグネットを裏返す。

 最後に、

「さよーなら!」

 大声で先生にあいさつをして、ものすごい速歩き。

 言ってなかったけど、私の速歩きって、速いんだよ!

 走ってないのに、普通に走るの以上に速い!

 階段を下るのも得意で、これに追いつける小学生は、きっといない!




 じゃなくて。

 早く妹さんの家に行かないと、私の心臓が持たない!

 そのために、こんなに急いでるんだからね!





 ピーンポーン♪

 インターホンの音が、リズミカルに響く。

 と。

「来いっ!」

 誰かの……妹さんの声が轟いた。

「はい!」

 ぱっと返事をして、玄関を通過。

 そして、妹さんと私が行きついたのは。


<迷宮>


 な、何だってぇ!?

Re: 妹さんの誕生日 ( No.33 )
日時: 2015/02/11 21:43
名前: 独楽林檎 (ID: chZuMjzt)

「この部屋から、宝箱を探せ」

 妹さんが、ドアを開けながら命令した。

 いや、それは良いんだけど。

 さっきから、気になってることが……

「そのぅ……包帯は、なぜ……」

 さりげな〜く。

「ああ。それなら、独楽林檎が後で番外編出すらしいから、それを読め」

 は?

 番外編?

 ま、いいや。

 読めば。


 改めて、その<迷宮>を覗く。

 段ボール製の壁があって。

 その壁の向こうは、背伸びすれば見える。

 ちょっと薄暗い……これって、段ボール迷路?

 段ボールの壁の一番向こうに、壁紙があるし。


「毎年、あたしの誕生日にはエミに探させてるんだけど。まだエミが帰ってないし、今年は、あんたがいるからな」

「えっ、毎年!?」

「ああ。今年は9歳になるから、<迷キュウ>にある」

 シャレか!

「特に、時間の制限はしない。とにかく、この部屋にあるから、探せ」

「は〜い」

 返事をすると、

「じゃ」

 と言って、去っていった。

 どうして、ここにあると確信しているのかな……。

 お父さんとお母さんに、昨日あたり、そう言われたのかなぁ?

 ……まあ、いいや!

 探そうっと。