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Re: 妹さんの誕生日 ( No.92 )
日時: 2015/04/05 15:52
名前: 独楽林檎 ◆tr.t4dJfuU (ID: vLlTyC08)

 ———それから、流れるように時間が過ぎて……。

 パーティー前日、つまりエミの衝撃報告から数えて7日目、その夕方……

「結構サマになってるな」

 私の隣で妹さんが呟いて、私は満足げにうなずいた。

 只今、ステージから会場を見回してるとこ!

 このステージもあって、机もあって、壁の飾りもあって、もうバッチリ!

 すっごく綺麗!

 ……なんだけど。

「で、パーティーの進行はどうするんだ?そして、あの空っぽスペースはなんだ?答えろ」

 そうっ、司会がいないしプログラムも無い!

 でも、あの1平方メートルのスペースは真矢たちに「用意しとけ」って言われたんだよ!しょうがないでしょ!

 とは言えず。

「えぇっと、プログラムは今日仕上げます、司会は……私がやります……」

「聞こえないよ!お前、何で後半だけ声が小さいんだよ!」

 ううっ。

 思わずうなだれた、次の瞬間!

  ブオオオオオォォォォォォォン!

 ものすごい音がしたからとっさに玄関まで走って、ドアを開けたら……。

 真矢が、トラックから降りてきた!

 なぜに真矢!?

 なぜにトラック!?

 何、その荷台にあるものは!?

 という3つの大きな疑問は、真矢の次の言葉で吹き飛んだ。

「どうせ、会場に置いて無いんでしょ!持ってきてやったわよ、私の家で一番大きな雛人形!」

 ……ひな人形!?

「それと、人手が無いんでしょう!?……プログラムはもう作った?」

 うっ。

 悔しいけど……首を振る。

 すると真矢はなぜかニコッと笑って、

「司会役は居るの?」

 ううっ。

 これまた悔しいけど……首を振る。

「じゃあ、決定ね!はい、プログラム。勝手に作ったわ」

 ポイッと大きめの紙を渡されて、あわててそれを掴む。

 真矢、作ってた!?

「司会も、私と気保理がするわよ。あの子、今は習い事でいないけど、明日は用事とかないから」

 えっ……。

「だから……これでいいでしょ!?その、いろいろ悪かったわよっ、私は忙しいの、早く雛人形を飾らせて!」

 ぷいっ、と黒い髪をなびかせて横を向く真矢。

 そして、その斜め前でお腹を抱えて笑いをこらえる、妹さん……。

「真矢っ……ククッ、何だよ、態度豹変しすぎなんだよっ……ぶはっ」

 ちょっ、妹さん!

「何よ、謝ってやってんのよ、喧嘩でもしたいわけ!?」

 喧嘩はやめてー!

「ふう……そんな時間はねえよ。飾るんなら早く飾れ。こっちだって忙しいんだ、『ツンデレちゃん』」

 ニヤッ、と笑って真矢を見る妹さん。

 対して真矢は、案の定顔を真っ赤にした。

「何よ、そのあだ名は!もちろん早く飾って帰らせてもらうわ、ラミ、アオイ!」

 プンスカと怒る真矢。

 でも……今までとは何かが違う。

 確実に。


 その後もわあわあと叫びあいながら私たちは、荷台にあるものを家の中へと運び始めた。