コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 春風〜千の想い〜 ( No.21 )
- 日時: 2015/01/31 14:49
- 名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)
36:メール
「うおおおああああ」
「翔うるせえ、少し黙れ」
「どうしたとかそういう言葉はああああ!?」
翔が生徒会長の席で唸っている。そこ俺の席、という千春の声も無視している。
「どうしたの〜」
「だって、メールが…」
「メール?」
由莉が携帯を取り出し、受信ボックスを開く。千風、千春、楓も同じことをする。
「この昼休みになってからはきてないけど」
「違うわ! 忽那のメールが、…女子っぽいんだよおおおお!!!」
「やかましいわ!!」
なんのことかと思えば、千春のメールが女子っぽいことに腹を立てていただけらしい。
「男子のくせにぃ、絵文字顔文字わんさか使いーの、文字色変えーの、ドキッとするんだよ!!」
「あーそれは私も思う」
「橘さんは無機質すぎるんだよおおお!!」
「なんですってー!?」
千風が翔を殴ろうとするのを由莉が押さえる。千春は、悪かったな、と吐き捨てた。
「そういうお前だって、無機質つーか…静かじゃん」
「普段通りだし」
「普段もっとうるさいし」
ここまで聞いて、由莉と楓が口を開いた。
「私たちはぁ〜?」
「相応、だよね…?」
「羽柴さんは相応だけど、楓は…全部違う…」
「全部って何!?」
楓が顔を青くして叫ぶ。しかし、千風たちも確かに、と頷いている。
「楓はねぇ…全部違うよねぇ…」
「なんか、男子女子より、楓っていう性別よねぇ…」
「ああ…なんか…全部違う…」
「もぉ———みんなしてなんなのぉ———」
今度は楓が突っ伏してしまった。
千風は全員のメールを確認していた。千風のメールは確かに無機質に、文章だけ、または単語だけのメール。由莉はテンプレなども使って可愛らしくして、まさしく女子って感じだ。千春は翔の言った通り、女子っぽい。翔はたまによくわからない顔文字を使っていて、静かめな印象。楓は、千春に近いが、千春ほどの女子力はない。が、普段の言動が…ね。
「翔のメール、静かで怖い」
「怖いっすか。じゃあ絵文字の使い方教えてくれよ」
「お前、そんなんも知らねーの? 貸してみ」
千春が翔の携帯を使って適当に文章を作ってみせた。なんとも女子力の高い文章だ。
「うおおお…さすがプロだ…」
「誰がプロだ。これくらい普通だろ」
「それが普通ならお前は女子だ…」
「次言ったら頭皮剥ぐ」
「やめろエグい」
言いつつ翔は教えてもらっている。千風も由莉と楓に教えてもらって可愛いメールを作ろうと必死だ。
「よっしゃ、これでどうよ忽那」
ふふんと得意げにメールを見せてきた翔に溜息をつきながら、そのメールを見て、———絶句。
なんと、気持ち悪い絵文字を並べ、これで可愛いなどと言ってくるのだ。これはどう見ても翔の携帯にしか入ってない絵文字がある。
「翔、これはどういう状況だろうか」
「状況とかないけど、何?」
「いや…」
いや、こんなん送ってこられたら泣くか気絶するわ。なんて言えず、千春は黙ってしまう。すると突然、生徒会室に悲鳴が響いた。
「「キャ———!!」」
「どうしたのよ、楓まで女子みたいな声出して。何、不満?」
千風のメールのことらしい。どうした、と千春が千風の携帯をのぞき込んでみると———はっきり言って、翔よりも酷いメールが。気持ち悪いというか、どう見てもキチガイの図だった。
「うおー橘さんかわいー」
「でしょー! 翔のも可愛いじゃん」
こいつらはどういう神経をしてるんだ…と千春ら3人は思った。思ってみれば、いつも美術に2がつくような連中だ、無理もない。
「忽那くん、俺たち、いい方かも。頑張っていこう」
「ああ…頑張ろう…!」
「私、一番普通だね」
ここで、千春と楓の間に妙な結束が生まれた。由莉がそんな二人を一瞥し、ボソッと、
「女子力高い男子同盟…」
「羽柴、何か言ったか」
「言ってないよぉー」
未だ千風と翔はたいして可愛くない、むしろ気持ち悪いメールを見て可愛いと盛り上がっている。あんなの送ってこられたらたまったもんじゃないので、さすがに由莉がこう言った。
「でもさあ、やっぱり急に可愛いの送ってこられてもびっくりするから、今までどおりでいーよ」
「え、そうかしら。でも一回送ってみるわ」
「俺もー」
「俺はやめてくれ!!」
「俺も遠慮しとこうかなあ!」
「はぁ? いーじゃない、彼女のメールが受け取れないわけ?」
「楓もさー固いこと言うなってぇ!」
こうして、一番抵抗しなかった由莉は被害を受けることはなく、抵抗した千春と楓には目も当てられないような気持ち悪いメールが送られてくるようになったとさ。