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Re: 春風〜千の想い〜 ( No.37 )
日時: 2015/02/04 13:12
名前: Va*Chu (ID: vAYBtxw9)

50:誕生日2

「榊と藤堂くんて、誕生日いつなの」

 カラオケにて。いつもの6人に加え、海(不本意だが楓目当て)、修一(千風に捕獲された)の計8人で遊んでいた。みんなはしゃぎつかれて、誰も歌わなくなったときに、千風が唐突にそう言ったのだ。

「私は6月14日だよ」
「へえ、なんかそれっぽい」
「誕生日にそれっぽいとかあるの?」

 華織がそう答える。千風は藤堂くんは? と聞く。修一はジュースを飲みながら、こん中の誰かと一緒、と言った。

「へえ、楓と一緒なのね」
「え!? 俺そんなこと言ってねーよ」
「だって、こん中の誰かって、藤堂くんは楓のしか知らないでしょ」

 ぶっと楓が吹き出した。修一が笑ってんじゃねーよと言うが、楓は笑っている。

「間抜けな修一、久々に見た…ふはっ」
「笑いすぎだ馬鹿」

 千風はそっかぁ、と言ってから、修一と楓を見比べ、呟いた。

「どっちかってーと、藤堂くんのが年上に見える」
「思う、超思う」

 千春が激しく同意した。同じ日に生まれたとは到底思えない。

「あーあ、結局海が一番年下かぁー」
「そうだね、辰野が最後だね」
「榊さんが海より年下ならよかったのに」

 海は、楓と付き合っている華織に相当嫉妬しているようだ。由莉は苦笑して、いいじゃん、と言ってみる。しかし、海はそっぽを向いてしまった。

「いーいなぁー、俺、同じ誕生日の人なんて会ったことねーもん」
「別によくはないよ、ねえ修一」
「えー、俺は運命感じてるけど」
「きっしょおおお」

 楓もそっぽを向いてしまい、修一が泣きそうになりながら俯く。そんな彼の背中を、ポンと翔が叩いた。

「最近、楓が俺のこときしょいって言う…」
「キモいじゃなくて?」
「ああ、きしょいって…」
「きしょいことしてんじゃねーの」
「してねーよ、断じて」
「しーてーるーしー」

 楓が華織のコップを持って立ち上がるついでとでもいうようにそう言った。そして、修一は何飲む、とコップを持って付け足した。

「じゃあコーラ頼むわ」
「わかったメロンソーダね」
「ひでえ、俺がメロン嫌いなの知ってて」

 修一の抗議も無視して、楓は部屋を出ていく。
 そのとき、翔が話戻そうぜーとマイクを使って言った。

「さて問題! 俺と忽那だったらどっちがお兄ちゃんでしょーうか?」
「おい翔、俺を巻き込むな」
「翔だと思う」
「えっ、なんで!?」

 千春が修一につかみかかるようにして尋ねる。なんで翔の方が年上に見えたんだ、とすごく必死だ。

「え、だって頭悪いんだろ?」
「さらっとひどいこと言うなぁ!!」
「残念! 意外にも忽那の方が誕生日早いんだぜ!」
「おい! おい、意外とか言うな」

 千春が翔を睨む。修一はマジで、と笑っているが、千春はしゃれになんねえとお茶を啜る。

「千春は何、頭悪いのが悔しいの? じゃあ頭良くなりなよ」
「そんな早くご飯食べなよみたいなノリで…」

 肩を落とす千春の背骨を、千風は無表情につまむ。

「あいだだだだだだ」
「うるっさいわよ」
「じゃあやめろよおおおお」
「嫌ねえ、本当は楽しいくせにー♪」
「楽しいのは千風だけだかんなあああ」

 変なカップルだなあ。そこにいる全員がそう思った。そのとき、由莉が翔の耳を引っ張った。

「いででで、羽柴さんどしたの」
「翔も早く彼女作りなよ。もうフィギュアでいいでしょ」
「よくねーよ! どしたの!」
「彼氏欲しいいいいい!!」

 由莉と翔までもがぎゃんぎゃんと騒ぎ出した。華織と修一もいつの間にか二人で盛り上がっている。海はもう帰ると言って出て行ってしまった。

「あれ、誕生日の話は?」
「あ、楓くんありがとう」
「いや、いいんだけど、誕生日の話は?」
「地平線の彼方だよ」
「そうなの?」

 楓が戻ってきて、華織に話しかける。その途端、急に場が静かになった。え、と楓は思わず戸惑う。

「ねえ修一、どうしたのこれ」
「お前がいると落ち着くんだよ…コーラさんきゅ」
「そうなの。で、誕生日の話はどうなったの」

 沈黙。すると、翔が口を開いた。

「何言ってんの…誰もそんな話してないじゃん」
「してたじゃん!! めっちゃしてたじゃん!! てか辰野さんは!?」
「何も言わずに去った」
「みんなも何も言わなかったの!? 一体何してたの!?」
「…何してたっけ?」
「っはあああああ!!」

 みんなのグダグダさ加減に楓は叫んだ。そして、鞄を持つと、

「俺もう帰る!!」
「マジか! じゃあ俺も帰る」
「修一は来ないで!!」
「マジか…」

 帰っちゃった。バン、と勢いよく扉が閉められ、その場がシーン…となる。

「俺、フラれた…」
「久々に楓が怒った」
「まだ可愛げがある方だろ…。俺も帰る。千風、行こう」
「わかったぁ、由莉、榊、じゃーねー」
「私も帰るーー!!」
「あ、私も…」
「えーじゃあ俺もかーえろっ」
「じゃあ俺も…置いてかれたけど…」

 結局みんな帰るのだった。


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誕生日の話だっつってんじゃん、って感じになった。スミマセン。