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Re: 桃乃吹雪〜キャッスル〜 ( No.3 )
日時: 2015/02/01 11:32
名前: 伊吹吹雪 ◆u2YjtUz8MU (ID: nZYVVNWR)

城では、今日と明日に盛大な宴が開かれようとしていた。
誕生日の姫君のための宴ではない。
姫君の腹違いの弟である、ヴァイス王子の誕生日ための宴である。
ヴァイス王子と姫君の誕生日は偶然にも同じで、1年違いである。

王子は女王に溺愛されている。
次期国王の誕生日には、たくさんのプレゼントとたくさんの客が来ていた。

「宴の前に会わないと!」
ドレスの裾を持ち上げて、走る姫君。
それを追いかける騎士ソウク。
「待ってください〜」
姫君は女王がいる部屋へと向かっているのだ。

「着いたわよ!」
「早いですよ、白様。」
「静かに!」
姫君はコンコン、とドアをノックした。
「どうぞ、お入りください。」
と女中の声がした。
「入るわよ!」

「女王陛下。」
姫君と騎士はひざまずいた。
「下がってもらえる?」
と女王が言うと、女中はどこかへと消えた。
「何の用なの?」
女王は言った。
姫君は顔を上げた。
「約束を守ってもらいに来ました。」
姫君は言った。
「何の約束?」
「約束したではありませんか、去年の私の誕生日に。」
「ああ、今日はあんたの誕生日でもあるのね。王子が14歳だから、あんたは15歳ね。」
「それを今、思い出したんですか?」
女王は姫君の問いかけに応えなかった。
「外に出る権利を約束してたわね。」
「生まれてこのかた、城の外に出たことがありませんので。」
「…それが私のせいだとでも言いたいの?約束は取りやめよ。あんなの嘘に決まっていたのに、そんなに必死になって。」
「え、そんな!今まで言うことは聞いてきたじゃない!」
「お黙り!縫い物とハープを弾くことしか能がないんだから!今日失敗なく演奏して、明日までに王子の服を縫わないと、分かってるわよね!」
「…ソウク、行くよ。」
姫君と騎士は、女王の部屋から出た。

姫君は王女であることを認められていない。
宴があるときは、楽器を弾く者として紹介されている。
外にも出ていないから、存在さえも知られていない。

「約束したじゃない…!私をどうしたいの!」