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Re: 僕にしなよ、先輩。【 600hit__Thank you!】 ( No.35 )
日時: 2015/03/27 12:37
名前: 涼那 ゆた ◆VoHZnMKTK2 (ID: b9lAghYk)



・04

「えっとね……ここの1年生なんだけど、青波くんって言うんだ。……その子ね、すっごく可愛いんだよ!」

葵の頬が紅く染まる。
いや、夕日の斜光と相まって余計に紅く見えた。

葵は凄く惚れやすい。一目見ただけで好きになったという人は幾千といた。
しかしその反面、冷めやすいのも葵である。
その青波とやらも、その1人に過ぎない。
だいたい、可愛い男子ってなんだ。


_______________絶対、優人の方が良いよ。


私は言いかけたその言葉をぐっとこらえて、小さく俯いていた葵に問うた。

「でも、本当に好きなわけじゃ……ないんだよね?」

いつもなら_________その相手のことを本当に好きではなかったら、葵は即答するはずなのだ。

『ふぇ? 好きだよ?』と。

これ以外の応えを、私は今まで聞いたことがなかった。

_________________今日、この瞬間まで。

「う……ん? 分っかんないなぁ……」

葵は、私の目からほんのちょっと視線を右に逸らして言った。
______________葵が、嘘をついていないときの癖。

「……分かんない?」

嘘だ。
葵は、優人と結ばれなければいけないんだ。

駄目だ。
優人が哀しんでしまう。

「うん、分かんない」

葵は瞳を潤ませて、私を見ていた。

____________それはそれは、儚くて。


________________それはそれは、美しくて。

初めて見る、葵の顔だった。


辺りを流離う微風が葵の髪を躍らせた。
放課後はまだ、終わらない。