コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 僕にしなよ、先輩。【 700hit__Thank you!】 ( No.42 )
- 日時: 2015/03/28 20:20
- 名前: 涼那 ゆた ◆VoHZnMKTK2 (ID: hamvuQpq)
・06
そして、状況は今に至る。
後悔と罪悪感に身を委ねてただ走っていた私に、行く当てなんかあるはずもなく。延々と続いていく廊下は、まるで私を呑み込んでいくようだ。
堪えきれなかった涙が、次々と私の中を飛び出していく。
それはまるで、巣を飛び立つ鳥のようで。風に吹かれて私の身と流れていく涙は、ご丁寧にも廊下に点々と巣立った跡を残していく。涙と共に私の心の悲哀がすぅっと抜けていくようだった。
寂しげな廊下を、朝日と見まごうような高めの夕日の斜光が照らし出す。
もうすぐ最終下校時刻になるのだろう。
窓から覗く校庭にも、未だ活動している部活は見当たらなかった。
走り過ぎたのかもしれない。先程から足の感覚がない。
弾んだ息が虚空を揺らす。
私は立ち止まった。手を膝について、荒くなった呼吸を鎮めることにした。
その間にも、哀愁の涙はとめどなく頬を伝って、廊下に吸い込まれていく。
先程の光景が蘇る。葵が頬を紅くして、私がばかみたいに焦って葵 に問うて、葵が微笑んで、私が飛び出した。
「私……ばかだ」
声が震える。
何で優人は葵のことが好きになっちゃったの?
何で葵は後輩なんて好きになっちゃったの?
何で……何で私は、優人のことを好きになっちゃったの?
答えのない問いが、私の心を覆い尽くす。透明な水が黒に染まるかの如く、それはゆっくりと、静かに、私をも呑み込んでしまうような気がした。
感覚のない足にだんだんと重くなる心。それは私の身体を支えるには、大分脆すぎた。右手にある壁に手をつく。
_____________と、私が手をついたものが壁ではないことに気づく。
ゆっくりと目をやると、木製の扉。
_________________あぁ、そうか。図書室か。
我が海音学園の図書室は他校と比べて随分と歴史が古い。
50年前の校舎建て替えの際も、図書室に使われていた木材だけはそのまま残しており、今の図書室にも使われている。
今時古びた木製の扉なんて、少々陰気臭い。
それでも、私は何故か扉に手をかけていた。
_______________ここなら、1人になれる。
次に気づいたときにはもう私は、図書室の中に足を踏み入れていた。