コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 晴天の空。 ( No.1 )
日時: 2015/06/26 16:33
名前: レム*@深夜テンションでっすうwww (ID: vWi0Ksv5)

#0 始まりの始まり。



 赤に変わった信号機。
 突如、飛び出す猫。
 叫ぶ少年。
 全てが止まって見えた。
 __飛び出していた。
 猫に向かって真っ直ぐに。

 瞬間、プツッ……と、何かが途切れる様な痛みを感じた。
 身体中の力が抜け、黒いコンクリートに崩れ落ちる。
「う……あ……」
 その時、自分が何を言おうとしてたかなんてわからない。
 ただ痛みを訴えたかっただけなのか、何かを伝えようとしていたのか——

 ざわざわと辺りが騒がしい。
 人混みを抜けて、一人の見知らぬ少年が走りよってきた。

「お兄ちゃん……? ねぇ、死んじゃ嫌だよ! ねぇ……っ」
 猫を抱き抱え、少年はボロボロと涙を溢す。
「泣くな、よ……俺は、だいじょぶ……だ、から…………ほら、笑、え……」
 少年の涙を拭い、俺は笑った。
 視界は霞み、もう意識も飛びかけていた。
 ——あぁ、短い人生だった。
 思うこともそれだけで、世界は暗闇に呑み込まれた。
 最後に見たのは、焼き付ける様に残った、タイヤの跡だった。


 ——青く澄んだ空だった。



Re: 晴天の空。 ( No.2 )
日時: 2015/06/26 16:28
名前: レム* (ID: vWi0Ksv5)

#1 事件は唐突に訪れる



「どこだよここおおおおおおお!?」

 生い茂る木々。
 ジリジリと照り付ける太陽。
 そんな空間で俺、相良瑞希は声をあげた。
 だが思いも虚しく、叫びは空へと消えていった。

 見たことのない木々。
 先程気付いたのだが、何故か太陽が二つある。
「悪い夢なら覚めてくれ……っ」
 というか、俺は死んだんじゃないのか?
 ここは、どこだと言うんだ?
 浮かんでくるのは疑問ばかりで、何も解決にはならなかった。

「そこで何をしている!」
 突如、背後から声がした。
 後ろを振り向くと、女が立っていた。
「……お前こそ、何者だ?」
 俺が言うと、女は、ビシッと俺を指差す。
「何を言っている! それは私の台詞だ。大体、その服はなんだ。この村の衣装ではないようだし、明らかにおかしいだろう」
 俺も、女も、どちらも理解ができていない様だった。

「ちょっとシスル〜? 置いていかないでよね〜! って、誰?」
「……か、会長!?」
「っ!? ……へぇ、あっちの人間か……よし、シスル、その人うちに連れてくよ!」
 事とは唐突である。

Re: 晴天の空。 ( No.3 )
日時: 2015/06/26 16:40
名前: レム* (ID: vWi0Ksv5)

#2 魔法世界



 俺を案内してくれた男口調の女は、シスル=セヨンというらしい。
 そして、俺が『会長』と呼んだ女。それは……
「おーい君、何やってんの。来て!」
 噂をすれば……
 彼女は、普通に俺のいた世界に存在していた。
 そして、俺の通う中学校の会長であった。



 木製の家の中は、日本で言うところの別荘の様だ。
 長く続く廊下を歩いた突き当たりの部屋に入る。

「どういう事だ? 会長さん?」
「さぁ、どういう事でしょうねぇ」
 ニヤニヤと笑い、こちらを見る。
 その様子にイラッと来た俺は、思わず睨みを返した。

「冗談だよ、怖い怖い。で、えーと、名前教えて?」
「相良瑞希だ」
「ふんふん、ミズキね。で、私は会長じゃなくてルーナ・カロンね」
 ……会長じゃ、ない? 
 他の人物だとでも、言うのだろうか……
 思わず眉間にシワが寄る。

「……お前は、俺の知ってる会長じゃねぇのか?」
 結局理解できずに聞くと、ルーナは笑った。
「ははっ、確かに会長だよ。でも、こっちはルーナなの。あ、向こうでは鈴原紫苑ね」
 こっち? 向こう?
「さっきから何言ってんだよ! こっちとか向こうとか、意味わかんねえよ!」
「えぇ、逆ギレされてもなぁ……」
 困ったように頭を書く。
 しばらく「うーん」と唸った後、ハッと手を叩いた。

 そしてふっと息を吐くと、もう一度こちらを向いた。
「……ここは、魔法世界だよ」
 ルーナの言葉に、目を見開いた。
 

Re: 晴天の空。 ( No.4 )
日時: 2015/06/26 16:49
名前: レム* (ID: vWi0Ksv5)

#3 存在するべき場所



「魔法世界って……どういう、ことだよ」

 ゆっくりと、一つ一つ言葉を噛み締めて聞く。
「んー……意味としてはそのままかなぁ……魔法使いが住む世界……あ、いや、魔法の存在する世界ってとこ?」
 ルーナは、カラカラと乾いた笑いを見せた。
「っ……俺は、地球に戻れるのか?」
「うん、それは平気だよ。あーでも……今君は、あの世界に存在してはいけないんじゃないの?」
 ルーナの声音は、やけに意味深だった。
 先程の緩い雰囲気との違いに、思わず背筋が伸びた。
 ていうか、存在しちゃいけないって……
 どういうことだ?

「…………じゃあ質問を変えるけど、君はどうやってここに来た?」
「どうやってって、トラックに轢かれて…………っあ!」
 そうだ。
 俺は猫を庇って死んだ。
 それはつまり……
「お、気付いたかな? 恐らく君は、向こうで死んだんだ」
「地球に存在するはずのない……人間」
「そういうことだね」
 淡々と、ルーナは告げた。

 ……じゃあ、ルーナは?
 俺の知っている中で、こいつはいつだって舞台の上で話していた。
 そして、この世界で生きている。
 なぜ? なぜ俺と違う?
「……お前は、どうなるんだよ」
 唸るような低い声で問えば、ルーナは眉を上げた。
「ん? あぁ私? 私はね、向こうとこっちの橋なんだ」
「……橋?」
「そう。地球とここを繋げているのは私自身だ。ちなみに産まれはこっちで育ちは向こうだよ」
「……」
 ルーナは、淡々と言ってのけた。

 地球と繋ぐ橋。
 ……じゃあ、つまり……
 ……俺を連れて来たのも……ルーナ……?

「……な、んで……」
「ん?」
「なんで俺をここに飛ばした!」
「…………わからない」
 ルーナは、自傷的な笑みを浮かべた。
「は?」
 ルーナの予想外の言葉に、抜けた声を発する。
「飛ばしているのは私自身じゃあないからね。わからないよ。ただ……」
「ただ?」

「ここが君の、存在するべき場所なんじゃないかな?」



Re: 晴天の空【オリキャラ募集中!】 ( No.5 )
日時: 2015/06/26 17:00
名前: レム* (ID: vWi0Ksv5)

#4 ツンデレ


「……もう話は済んだか?」
 シスルの不機嫌そうな顔を、ドアから覗かせた。
 その様子を見たルーナが、ハッと椅子から立ち上がる。
「あぁっ、ごめんねシスル!! すっかり忘れてたっ」
 てへ、と舌を出して笑った。
「忘れてたのかよっ!?」
「うん。すっかり」
「流石の私でも傷付くぞ……」
 がっくりと肩を落とすシスルを、ルーナが慰める。
 いや……原因、お前だろ……
 そう突っ込みたくなるのを抑え、苦笑いをするのであった。

 そんな俺を見たルーナが、ぽんっと手を叩く。
「そうだ。そこらへん探検してくる? 私とシスル、案内するけど」
「……あ、あぁ。よろしく」



「言うの忘れてたけど、ここはトレーネ村。結構な田舎だよ」
 ルーナは村の入り口まで来ると、言った。
 門に立ってもう一度村を見ると、確かにかなり小さい。
 むしろ感心してしまった。
「……ミズキ、これ来てろ。その服は目立つ」
 シスルがそう言って、ぶっきらぼうに上着をよこした。
「……おう。サンキュ」
 笑って言うと、シスルは叫んだ。うるさいほどに。

「なっ……礼を言われることなど、私はしていない!」
 思いっきり顔を反らす(首がもげるんじゃないかと本気で思うくらいに)。
 横からでもわかるほど真っ赤だった。
「……ツンデレか」
 聞こえない様に呟いた。
 ……つもりだったのだが。
「だっ誰がツンデ……だ!」
 どうやら聞こえていたらしい。
 怒ったシスルは、先を歩いて行ってしまった。

『ツンデレ』と、言わないように努力しているらしい(その努力は無駄だと思う)。


Re: 晴天の空【オリキャラ募集中!】 ( No.6 )
日時: 2015/06/26 17:14
名前: レム* (ID: vWi0Ksv5)

#5 属性



「ちょっとー、私のこと忘れてない?」
 頬を膨らませ、俺とシスルの間に入ってくるルーナ 。
「……まぁいいや。あ、ねぇシスル。あそこにグリズリーいるんだけど、どうする?」
 自分の後ろを、あれ、と指差した。
「はぁ!? 何故ルーナはそんなに冷静なんだ!」
「えー、別に強い訳じゃないしさー」
「充分手強いだろう!」
 俺の前で喧嘩が始まる。
 いや、俺としてはまずグリズリーがわからないんだが……
 これでは埒が明かない。
 仕方ない、止めに入ろう。
 仲裁に入ると、俺は言った。

「なぁ、グリズリーってなんだ?」
 そう聞くと、ルーナはうーんと首を捻る。
「あー…………あっ、熊?」
 熊?
 熊って……
「ヤベェじゃねぇか!」
「そう? じゃあいいや、眠らせよう」
 ルーナは落ち着いた様子でそう言うと、口に指をくわえ、『ピーッ』と大きく口笛を吹いた。
「でけぇ……って、何やってんだよ!? グリズリー来るだろうが!」
「? だって来るようにしてるんだもん」
 当たり前じゃん、とでも言うように、ニヤリと笑った。
 コイツは嫌がらせが好きなのか、それとも天然なのか……
 ……いや、さっきの表情を見る限り、恐らく前者であろう……
 グリズリーが近くまで来ると、ルーナが再び口を開いた。

「風の主が命ずる。風よ、グリズリーに眠りを与えよ」

 すると暖かい風がふいてきて、グリズリーを包み込んだ。
『バタンッ』と大きな音をたててグリズリーは倒れ、気持ち良さそうに眠っていた。

 呆然と、その場に立ち尽くす。
「……なんだ、今の」
 若干掠れた声で問うと、ルーナは笑った。
「魔法だよ、私のね。風の力を借りたんだ」
 ルーナの言葉にシスルも頷き、それに付け足した。
「ルーナは珍しい風属性でな。しかも憑依型だ」
「属性……? 憑依……?」
 意味がわからない。
 説明しながら話してくれ。
「あー、うん。みんな属性は決まってるんだ。ちなみにシスルは水属性」
「あぁ。憑依型魔法使いというのは、その力が物に憑依している魔法使いのことだ」
 どうだ、すごいだろう、と、シスルが笑って見せた。
 ……目で見てしまった以上、信じる他ない、って事か……
 
「あ、ミズキにも憑依してるかもよ?」
「はぁ!? 俺は凡人……ていうか地球人だぞ!?」
 ルーナの衝撃的な一言に、思わず叫ぶ。
 地球から来た俺に、なんで……
 戸惑う俺を見て、ルーナはいたずらっ子の様に笑った。
「ま、わずかな確率だけどね。優先順位的に魔法使いから動物、無理だったら仕方なく地球人だからねぇ」
 仕方なくって……おい……
 別にしてほしいって訳じゃねぇけど、なんか気に食わねぇ……

「とにかく、憑依してるかもしれないという事は覚悟しておくんだな」
 まとめる様にシスルが言った。

Re: 晴天の空【オリキャラ募集中!】 ( No.7 )
日時: 2015/06/28 17:28
名前: レム* (ID: vWi0Ksv5)

#6 魔法学校



「さぁて、最後は学校かな?」
 ルーナの欠伸交じりの言葉に、「は?」と声を漏らす。
「学校だよ、学校。日本語わかりますかー?」
 舐めたような口振り(ようなっていうか、もう確実に舐めてる)に、思わずイラっとする。
「ッチ……」
「おー怖い怖い。冗談だっての」
 ……ニヤケ顔で言われてもなぁ……
 説得力の欠片もない。

「学校と言うのは、私とルーナが通う魔法学校の事だ。色んな事を教えてくれる」
 シスルがルーナの代わりに説明してくれる。
「へぇ……」
「ミズキも転入するところだねっ」
 星が付きそうな勢いで、ルーナが「ブイッ」とピースした。
「おー…………ってはい!?」
 聞いてねぇ聞いてねぇ。
 転入って……おい……
「え?」
「え? じゃねぇよ! それは俺の台詞じゃボケェ!」
「……ふっ」
「鼻で笑うな!」
 俺の言葉を合図に、ルーナは笑い出した。
「ひぃ……面白過ぎるよミズキ……本気で腹筋割れちゃうよー。落ち着こう落ち着こう? ほら、ひっひっふー、ひっひっふー」
「お前が落ち着け」
 そんなルーナを置いて、俺とシスルは歩を進めるのであった。



「ここが、私達の通う茜学園。魔法科と、普通科があるんだ」
 案内された先に、まるで城の様な大きな建物があった。
「うお、でけぇ……で、俺はどっちだ?」
「普通科だよ。流石に魔法科には入れないさー、でもちょっとは魔法の勉強するけどね?」
 結局するのかよ……
 泣きたくもなる気持ちを抑え、続きを聞くことにした。
「私とルーナは魔法科だ。だがたまにそちらに行く事がある」
「へぇ……」
 そのたまにはどれくらいなのか……気になるものだ。
「あっ!!」
「なんだよ……うるせぇ……」
 突然大声を出して目を輝かせるルーナを横目に、俺は耳を塞ぐ。
「向こうに知り合い発見。行くぞーっ」
 ルーナが指を差した先に、数人の頭が見えた。

 ……ルーナの足は、ものすごく速かった。