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Re: 晴天の空【オリキャラ等々募集中!】 ( No.105 )
日時: 2015/03/26 09:41
名前: レム* (ID: sSv6cHIH)

【祝・50話記念小説 ヒーローだから】
 

<Noside>

「……お、兄ちゃん……?」

 紅い華が咲いた道路に、虚しく少年の声が響く。
 時が止まった様に動かないトラック。
 呆然と立ち尽くす人々。
 なんだなんだと、この光景を見物にする人もいれば。
 こんな騒ぎ馬鹿馬鹿しいと、目もくれない人もいる。

 ——数分前に遡る。
 少年の腕から脱走してしまった一匹の子猫。
 思わず少年は、「あっ」と声を漏らす。
 そんな声など気にせず、猫は悠々と道を駆ける。
 ……ダッと、道路に飛び出した。
 そこで猫を待っていたのは——

 赤に変わった信号機。
 そして、飛び込んでくるトラックだった。

 トラックの運転手は驚き、ブレーキを踏んだ。
 しかし時既に遅し。
 無残にも、猫の元へと突っ込んでいった。
 ——それは、子猫の運命だったのか。

 猫の様子に気が付いた青年、瑞希は、飛び出していく。
『グシャッ』と、妙にエグい音がすると、辺りは紅く染まった。
 
 瑞希は猫を抱き抱えた少年に笑いかける。
 ——そして目を閉じた。

 しばらくして、周りの人々は異変に気付く。
「お兄ちゃん……!?」
 ゆっくりと、瑞希の体が消えていっていたのだ。

 完全に体がなくなった——
 その状態が、今なのだった。
 誰も、頭が着いていけない。
 そんな白昼の町に、救急車の音だけが響いていた。
 


 お兄ちゃんが消えて、1週間が経った。
 その時間は嫌なくらいに遅く、苦しく感じた。
 今日はお兄ちゃんの葬儀の日。 
 ——死体がないのに、行われた。

「瑞希……」
「相良君……っ」

 お兄ちゃんの同級生や、友達がたくさんいる。
 それだけ、お兄ちゃんの存在は大きくて、大切な物だった。

 ——お兄ちゃんが死んだ?
 そんなの、あり得ない。
 ——死体が、消えた?
 なぜ? どうやって?
 
 ただ自問自答を繰り返し、涙を溢すだけ。

 ——お兄ちゃん、本当に、死んじゃったの……?

『大丈夫、俺が守ってやるから』
 昔、お兄ちゃんに助けられたことがたくさんあった。
 笑わせられたことがたくさんあった。
 お兄ちゃんは私のヒーローで。
 私の大事なお兄ちゃんで。

「——お兄ちゃんがこんなところで、死ぬわけない……っ!!」

 泣いてなんかいられない。
 お兄ちゃんは生きてる。
 きっと。
 ……ううん、絶対に。

 私をいつも、助けてくれたのはお兄ちゃんだから。
 ——今度は、私がお兄ちゃんを助ける番だよ。



*作者後書き*

 さて、少しシリアスっぽくてすみません。
 知夏ちゃんがミズキを助けようとするところを描いてみました。
 少し文が適当ですね……
 いや、横でお兄ちゃんがうるさいんですよ、代われって。
 まぁそんなことは置いておいて。
 知夏ちゃんの思い、ミズキに届くでしょうか……?

                          ——50話記念小説 END——