コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 晴天の空【オリキャラ等々募集中!】 ( No.115 )
- 日時: 2015/03/30 13:43
- 名前: レム* (ID: sSv6cHIH)
#54 守るから
「……で、井上って誰?」
裕也の家を出て、すぐにルーナは聞いてきた。
——裕也の言う、井上。
「俺の幼馴染みだ。誰よりも気が強くて、力も強い」
小さい頃から、彼奴はそうだった。
◇
「おーい!! み・ず・きーっ」
前を走る少女、井上悠。
7歳くらいだろうか。
屈託のない笑みを浮かべ、ブンブンと手を振っている。
「ま、待ってよ悠ちゃん……」
その後ろから、小柄な少年がふらふらと歩いて来る。
彼は悠の幼馴染みの相良瑞希。
息を切らし、膝に手をついた。
「おっそいんだよ瑞希はーっ!!」
「いや、多分僕じゃなくて悠ちゃんが速いだけだと思うけど……」
現在とはかなり対照的な瑞希。
一人称も「僕」と、どこか頼りなさ気だ。
「いやいやー。あたしは普通だって。やっぱし瑞希が遅いんだよ」
どっちもどっちである。
悠は速い。
瑞希も遅い。
結果、どちらも正しいのだ。
フッと、場面が切り替わった。
「こんなの、おかしいよ」
赤く染まった空を背に、9歳くらいになった瑞希が言った。
「え?」
隣に座る悠が、瑞希を見た。
その瞳は揺れておらず、真っ直ぐに前を見ていた。
「なんで、一生懸命に生きようとする人が、いじめらなきゃならないの?」
悠は黙って、ただ瑞希を見つめている。
「おかしいでしょ。なんで、人を馬鹿にする奴は、何もされない?」
ギリギリと唇を噛み締める。
目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「……だから、決めたんだ」
「何を」
ここに来てやっと、悠が口を開いた。
「不幸せな人の、幸せを作るんだ、僕が。みんなが笑っていられる様に、幸せを守るの」
悠は一瞬、ポカンとしていたが、すぐに笑顔になった。
「はは……っ!! いいな、それ! じゃああたしは……」
いったん言葉を区切る。
そして、キョトンと首を傾げる瑞希に、笑いかけた。
「あたしは、幸せな奴の幸せを守るよ。その人から幸せが逃げないように」
そう言えば、瑞希の顔はぱあっと明るくなった。
「できるよ! 悠ちゃんなら、絶対」
ニコリと笑う。
そして小指を立てた。
「約束!!」
二人で小指を絡める。
「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます」