コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 晴天の空【オリキャラ等々募集中!】 ( No.121 )
日時: 2015/03/30 20:16
名前: レム* (ID: sSv6cHIH)

#55 昼寝



「……で?」
 無言が続いていた。
 その沈黙を破ったのは、ルーナだった。
「え、いや、『で?』って、何?」
「いや、だから。悠ちゃんに会いに行かなくていいの?」
「あー……」
 どうしたものか。
 現在時刻夕方5時。
 恐らく家で寝ているだろう。
「……え、寝てるの?」
「あぁ。多分な」

 彼奴は寝るのが好きで、いつも寝坊しては、俺が起こしに行っていた。
 そのせいで学校は大体遅刻。

 中学にあがると、悠は喧嘩ばかりするようになった。
 喧嘩を吹っ掛けられれば買い、ボコボコにして帰ってくる。
 実は仲間思いだったりするんだが、貶されたりすれば、思いっきり暴れる。
 それを止めるのも俺の役目で、違うクラスになったことはなかった。

「……行って、みるか」
 見覚えのある道を、進み始めた。



『ピンポーン』と、インターホンが鳴る。
 一度押しただけでは返事はなく、もう一度押してみた。
「うーい……」
 そう声がし、ドアが開いた。
 ……インターホンにマイクがある意味なくねぇか?

「誰」
 たった一言そう発し、俺とルーナを見る。
「酷いなぁ。これでも中学の頃会長だったんだけど?」
「……え。緑山の?」
「えぇ」
「あぁ、そう」
 起きたばかりなのだろうか。
 眠そうに目を擦り、欠伸を手で抑えた。
「そっちは?」
「田中」
「ふぅん……」
 もうその普通過ぎる名前には突っ込まねぇぞ。
 
 と、悠はスタスタとこちらに歩み寄る。
 俺の前に立つと、肩をぐるりと回した。
 ——来るっ!!
 そう、反射的に思った。
 悠の手が迫る。
 ——ガッ……

「……っふぅ……」
 腕で抑える。
 あまり痛みは感じなかった。
 ……手ぇ、抜いてたな、コイツ。
「——んで……」
 悠が、何かを呟いた。

「なんでテメェがっ!!」

 次はハッキリとしていて。
 その目は、信じられないとでもいう風に、見開いていた。
「……その構えは、瑞希にしか教えてないのに……」
 悠のその言葉で、ハッとする。
 ——そういえば、コイツに教えてもらったんだった……

Re: 晴天の空【オリキャラ等々募集中!】 ( No.122 )
日時: 2015/03/30 20:18
名前: レム* (ID: sSv6cHIH)

#56 変わらない



「——そ、そうなのか?」
 これは誤魔化すしかないだろう。
 他言するなと、悠には言われていたから、迂闊に「瑞希に教えてもらった」などと言ったあかつきには、瑞希の体で会った時に殺される(色々な意味で)。
「……あぁ。これはあたしが考えた」
「……いや、きっと似てただけだろ」
「……そう」
 まだ少し(いやかなり?)不服そうだが、なんとか誤魔化せた。
「まぁいい。中入るか?」
「いいの?」
 ルーナが聞けば、黙って中に入っていった。
 キョトンとするルーナに、「入れってことだ」と告げる。
 なぜか感嘆の声をあげるルーナに、早く入るよう促した。

 
「……で、あたしになんの用?」
 部屋に入ると、胡座を掻いた悠がいた。
「……貴方の幼馴染みの、瑞希のこと」
「っ……!」
 ルーナの言葉に、悠は顔を歪めた。
「……あぁ、ごめんね? 聞かない方が良かったかな」
「いや……いい」
 だが、未だ苦虫を噛み潰した様な顔を浮かべている。

「……変わんないようにしてる」
「え?」
「……多分、知夏とか裕也もだろうけど。あたしは瑞希が死んだなんて思ってない」
 !!
 ……コイツもか……
 嬉しかった。思わず笑みが溢れる。
 でも、嬉しいだけじゃなく、どこか悲しくも感じた。

「いつか瑞希が帰って来たときに、例えば悲しんでたりしてたら、きっと、嫌だろうからさ」

 ……みんな、優しすぎるんだ。
 ——コイツの優しい笑みも、裕也の優しさも、知夏の笑顔も、変わらない。
 この変わらないコイツらが、俺は、大好きなんだ。