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#16　あの時の声



「くっそぉ……！」
　戦おうとも武器のない俺は、ルーナに短剣を借りた。
　勿論使いこなせる訳もなく、ゴブリン一匹に手こずっている。
　ちなみに出口担当で、回復したルーナが校内担当。
　ひたすら攻撃を避けるだけで、攻撃など出来ない。
　ドンッと壁に背中があたる。
　そして、ゴブリンの爪が振り降ろされる。
『ガッ』という音と共に、衝撃が走った。
　あーあ、やっぱり無力だなぁ、俺。

——私の力が必要か?——

　お前は、あの時の……

——今主は、私の力が必要か……?——

　今は……
　……必要、かも知れねぇな。

——ならば、私の名を呼べ。私の名は……——


「そ、うか……」
　俺の声と共に、体が光に包まれた——

#17　目覚めの時



「さて……これはどういう状況なのか……」
　傷だらけだった俺の体はピンッピン。
　服も全て元通り。
　なぜか手に剣持ってるし。
〈ちょっとー?　早くゴブリンやっちゃいなって。またやられちゃうよ?〉
「うおっ!?　誰だお前！」
〈そんなことは後回し！　ルーナちゃんももうそろそろ来るよ?〉
「えっ……早くね……?」
〈ミズキが遅いだけだよ。あたしの言葉を真似すること！　いいね?〉
「あぁ」
　よくわからねぇが……
　とにかく今はゴブリンだ。

〈自然の主が命ずる〉
「自然の主が命ずる……」
〈草花よ、我の力となりて〉
「草花よ、我の力となりて……」
〈我が敵を……〉
「我が敵を……」
『打て！』
　声を揃え、手にある剣をゴブリン達に向けた。
　すると、 矢の様な形ができ、ゴブリンを攻撃する。
　エグく、リアルな音と共に、ゴブリンは倒れた。
〈……うん。初めてにしては上出来ね〉
「あ……俺、殺しちまった…………それと、お前は誰だ?」
　俺が聞くと、「あぁ」と言って言葉を続けた。
〈あたしは草花。貴方が呼び出したのよ?〉
「草花って、俺が名前呼んだ……」
〈そうそう、それだよそれ〉
「何処にいるんだ?」
　さっきから周りに人はいねぇし……

「その手の中だよ」
「え?」
　後ろからルーナの声がした。
「草花ちゃんだよね、久しぶり」
「え、知り合い?」
〈うん。でも話せないんだよねー〉
「知り合いって言うか、草花ちゃんってソウルだし」
「え?」
「まぁだから、ミズキも魔法使いになっちゃった訳だ」
　ルーナが淡々と告げた。

「はああああああああああああああああ!?」

　血塗られた学校に、俺の叫び声が響いた。