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#38　お姫様



「すー……すー……」
　夜。
　賑やかな町に静寂が訪れた。
「寝たね」
「あぁ。……でもやっぱコイツの馬鹿でかい態度は気に喰わん」
　少しおどけて言ってみる。
「まぁ、仕方ない気もするけどね」
「んあ?」
「この子、クウェードに住むエミリア王女の娘なの」
　……娘って……
「貴族!?」
　ルーナは顔をしかめると、「シーっ」と人差し指を立てた。
　夜だったの忘れてたな……

「まぁ、貴族よね。王女も忙しいし、嫌でもああなっちゃうんじゃない?」
「言い訳にも聞こえるがな」
「……そうね」
　そうだ。
　いくら忙しくたって、彼奴の親なことに変わりない。
　ただの、言い訳に過ぎないんだ。
　……ただ、『忙しかったから』『仕方ない』って、逃げ道を作っているだけ。
　自分が悪いんじゃなく、自分が忙しかったことが悪いんだって。
　もしも失敗したときの言い訳。保険。

「ズルいよ、大人は——」