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Re: 晴天の空【オリキャラ等々募集中!】 ( No.94 )
日時: 2015/03/16 18:00
名前: レム* (ID: xy9VqjvI)
参照: ※長いです!(1830文字)※

#43 縛り



「あたしとこの人達をお母様に会わせて。大至急よ」
 クレアのいつもとは違う声に、長身のゴツい男が「はい」と返事をした。
 こういうところを見ると、姫って感じがする。
 というか俺、何話すか決めてねぇんだけど……


 
 しばらくして男が帰ってきた。
 俺達の方を向き、「こちらです」と言った声は、見た目と違わず、背筋が凍る様に冷たかった。
 
 長い廊下には、いかにもという絵画が幾つも飾ってあり、少し緊張感を感じさせる。
 男が次に止まったのは、大きなドアの前だった。
 威圧感のあるそのドアは、男の背丈よりも高く、横も俺とルーナ、クレアが並んでもまだ足りなかった。
「クレア。準備はいいな?」
「えぇ。バッチリよ」
 いつも通りの自信満々な声を聞き、『コンコン』と、ドアをノックする。
 返事を待たずに中へ入った。
 ……失礼?
 いや、男に言われたんだよ。「返事は待たなくていい」ってな。

 中の椅子に腰かけていたのは、30後半くらいの女。
 金色の髪をアップにしている。
 目元や顔立ちが、クレアそっくりだった。

「……クレア。貴方がなんの用ですか?」
 きつく、威圧するような口調で、言った。
「それは俺が説明しますよ」
 俺がそう言うと、王女は怪訝そうな顔をした。
 そりゃあそうだ。
 見たことのない男が娘の話をしようってんだ。当たり前。
「貴方は……」
「俺は相良瑞希です。王女にお願いがあります」

「お願い? ……クレアのことですか……?」
 ハッとこちらを見た顔は先程よりも暗かった。
「流石王女。察しが良いですね。……姫の外出を許可してほしい」
 特に何も作戦などない俺は、単刀直入に話を切り出した。
「聞けば姫は、生まれてこの方、外に出たことがないそうですね」
「…………」
 王女は唇を噛み締めた。
「どれだけ姫は出たかったことか。貴方はご存知でしょう?」
 ……いや、監視役までつけて、知らねぇなんて言ったらぶっ飛ばすけどな。おう。
「ただの旅人の俺達にまで頼み込んで来たんです。認めてもらえませんか……?」
 あーもう、敬語とか凄い嫌だ。
 虫酸が走る。

「……どうして貴方が、それを頼みに来るのです?」
 王女の言葉に、ルーナが何かを察したらしく、言った。
「姫、席を外して頂けますか?」
「え?」
 何故、という風に聞いてくる。
「クレア。外しなさい」
 王女の声にビクっとなると、部屋から出ていった。
「周りの者達もよ」
 え。
 何もそこまでしなくても……

 少しすれば、もう俺と王女とルーナだけになっていた。
「ふう……。さて、もうここには3人だけよ。いつも通り話してちょうだい」
「! ……はい」
 王女はきっと、俺達に気を使った訳ではない。
 ただ、対等に話したかっただけなのではないか?  

「姫は……クレアは、ここから出たいと、願っています」
「そうね……でもなぜそこで貴方が来るの?」
 もう……いいよな。

「んだよ。彼奴は鳥か? 籠のなかの鳥か? 違うだろ。姫で、お前の娘で、俺達の友達で。それで、まず一人の女の子だ」
「当たり前でしょう? 貴方は何が言いた——」
「城に籠りっきりの彼奴を見て、何も思わなかったのか?」
「子供を思わない親がいると思っているの?」
 少し顔をしかめ、言う。
 その言葉に反応したのは、ルーナだった。
「いるわ、そういう親も。子供が嫌い。産まなければよかった。憎い。醜い。——こういう言い方もどうかと思うけど、現実では、必ずしも親が子供を愛してるとは限らないわ」
 そういうルーナの顔は悲しげで。

「彼奴は……クレアはっ……! 外の世界を求めてる。ここにいる誰よりもな。いいか? 人の気持ちも、自分の気持ちもわかんねぇで、王女なんかできねぇんだよ」

 王女はクスリと笑った。
「ふふっ、許可がおりたとはいえ、私にこんな風に話せたのは、貴方達が初めてよ。でも……」
 再び真顔に戻ると、言う。
「クレアが外に出て、貴方達になんの得があるの?」
「得ねぇ……。なんかあるか?」
「無いわね。さっぱりよ」
 即答だった。 
 いや、微妙に俺のセリフと被ってたぞ。
「じゃあ何故? 何故そこまでクレアを外に出してあげようとするの?」
 俺とルーナは顔を見合わせた。
「彼奴の願いが叶うから」
「クレアの、人一人の願いが叶うから」

『人助けに、理由なんていりませんよ』

Re: 晴天の空【オリキャラ等々募集中!】 ( No.95 )
日時: 2015/03/16 18:22
名前: レム* (ID: xy9VqjvI)

#44 許可



「つくずく貴方達は面白いわね。そして、不思議」
「不思議とか面白いとか、忙しいですねぇ」
 思ってもないことを言ってみる。
「で、彼奴を外に出してあげられるのか?」
 ……と、王女はふっと息をついた。

「私はね、出ちゃ駄目なんて言ってないのよ? ただ、あの子が、あの子自身が出たいと言ったなら、もちろん出してあげたわ」
 え。
「なんだよ。結局彼奴が悪いんじゃねぇか」
「クレア。聞いているのでしょう? 入ってきなさい」
 聞いてたのかよ!?
 えぇ、出した意味ねぇじゃん!
 とか思いつつも、入ってくるクレアを見る。
「クレア。貴方の気持ちを教えて?」
「…………出たい」
 小さく、声が聞こえた。
「……どうして? どうして出たいと思ったの?」

「外の世界を見てみたい。お母様や、お姉様に話を聞くんじゃなくて、自分で行って、自分で感じたいの!!」

 クレアの思いを聞けたからか、王女は頷き、笑った。
「合格よ、クレア。外に行ってもいいわ」
 そして俺達の方を向き、「それと」と付け足した。
「ミズキ、ルーナ。貴方達に、クレアの護衛を頼んで良いかしら?」
「んな!? いや、騎士団とかに腕利きが——」

「命令よ。断った場合は死刑だから」
「ひでぇ!!」
「ていうか、騎士団なんかよりもS級魔法使いの方が強いわ」
「光栄です」
 いや、何それ。
「茜学園のルーナ・カロンよね? 理事から話は聞いていたわ」
「えぇ、どうも」
 いやだから、S級って何。