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Re: 狼どもと同居中。〜狼さんちの赤ずきん〜 ( No.11 )
日時: 2015/03/07 19:09
名前: 朔良 ◆oqxZavNTdI (ID: 2IhC5/Vi)

【prologue】

 冷たい冬の風邪が私の身体に強く吹きつける。手に持った地図を頼りに辿り着いたのは人気のない道の先、何本もの薔薇が咲き誇る庭園だった。中央にある薔薇の蔓が巻かれたアーチを通り抜けると大きな洋館が見えた。黒を基調としたゴシックな洋館は美しくて妖艶さを放っていた。

「ここが……“星屑荘”?」

 地図に殴り書きされた「星屑荘」という文字を見ながら私はそっと呟いた——。


 二時間前、私は一人寒空の下公園のベンチで途方に暮 れていた 。
 母親は病死、父親はギャンブル好きな最低男。生活もギリギリの中で何とか踏ん張って生きてきた。生きてきたのにーー

『白原さんのお宅ですね。立ち退き強制執行命令が出ています。お嬢さんお一人ですか?』

 黒いスーツに身を包んだ男にそう告げられて私は悟ったのだ。
『ああ、私はお父さんに見捨てられたんだ』と。
 家を追い出され、行く当てもなく公園来てしまったがこれからどうすればいいのだろう。誰も助けてくれない。何の力もない。
 盛大な溜め息が白くなって吐き出される。空を見ることが辛くなり俯いた。すると、上から声が降ってきた。

「お嬢さん、若いのに溜め息なんてついたら勿体ないですよ」
「え……」

 顔を上げると優しい雰囲気を放ったお婆さんが目尻に少し皺をよせて笑っていた。戸惑って何も言えないでいるとお婆さんは隣に座っていた。

「……私で良かったらお話を聞かせて頂けるかしら? 何か役に立てるかもしれないわ」

 それはただの世辞だと思いながらも、私はその言葉にすごく安心した。
今までのことをすべて話しているとお婆さんは頷きながら私の話を聞いてくれた。

「——それは大変だったわね」
「はい、でもあれでも父親で……許せないって思いがないんです」

 父を憎めないことで生まれるやるせない思いが胸を締め付ける。それが苦しいんだ。

「……貴女、お名前は?」
「白原、あゆみです」

 そう告げるとお婆さんは鞄からメモとペンを取り出して素早く何かを書いた。

「あゆみさん、良かったらここに来てちょうだい」

 そう言いながら立ち上がり、私の手にメモを握らせた。そこには地図と『星屑荘』と書かれていた。

「これは……?」
「話は来てからね、私たちは貴女を歓迎するわ」

 そう告げてお婆さんは止める暇もなく去ってしまった。


 ——そして現在に至る。
 私は素直にここに来ていた。何が私を待っているのかは分からない。それでも私はここに踏み込むしかない。
 呼び鈴を鳴らすと先程出会ったお婆さんが現れ、微笑んでくれた。

「いらっしゃい、あゆみさん。さあ、どうぞ——」
「……はい、ありがとうございます」

 そして、私は捕らわれる。五人の狼に——。