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Re: 哀昧喪糊。−あいまいもこ− ( No.14 )
日時: 2015/03/24 18:25
名前: めろんそーだ (ID: nsETnIj1)

「教えて欲しい?」

俺の考えを悟ったような釈然とした態度。

「勿論」

俺の頷きを確認すると、彼女はきゅっと目を細めた。

「私の手、握ってみて?」

いくら俺だとしても、女子の手を握るなんて気がひける。
そんな風にあたふたしていると、「ふふっ」とオモチャを見つけたように笑う。

「いいのよ、別に深い意味はないわ。
 貴方が私の手を握ったからって『きゃー変態ー』なんて叫ばないわよ。
 …………それとも、こっちがいいかしら?」

そして、俺を試すように存在感のある胸を揺らした。
くすくす、くすくす。
彼女が笑う度に小刻みに揺れるそれに、俺の視線は熱くなる。
おい、やめろよ。俺が変態みたいじゃないか……。

火照っていく顔を隠すようにそっぽを向いたら、「冗談よ、冗談。いつか目いっぱい触らせてあげるわ」と笑われてしまった。触るつもりなどない。

「…………手、握ればいいんだろ」
「そうよ。話が分かっているなら早くして?
 萌湖を見つけたいんでしょう?」

笑いながら手を差し出す彼女。………いや、決して胸なんて見ていないぞ?

「解ったよ………」

呆れ半分で彼女の手を握る。
リア充なんてものには縁もなかった俺は、小学校低学年のときから女子と手なんて繋いだ記憶がない。

いや、正確には『握ろうとした』。
彼女の手は_______。

「……え?」

全く触り心地が無くて。
俺の手のひらは、宙を掠めた。

「ふふ、驚いたでしょう?」

彼女の後ろの窓の桟が滲んで見える。
可笑しい。

人の後ろに立っているものが見えるってことは。
………透けているってことで。

俺は口を半開きにして、ぽかんとしていることしか出来なかった。
意味分かんねぇ、何なんだよこれ。

ぞっ、と寒気が走る。
ぞっ、と恐怖が襲う。

「____な、何なんだよ……っ」
「そんなに怯えないで。直ぐに分かるから」

彼女はぽんぽん、俺の肩を突いて笑う。
しかしその感触も、音すらもしなくって。
そっとその手を払いのけようとしても、俺の手は空を斬る。

_______来栖さんに会いたい、と。

恐怖心からなのか、訳もなくそう願ったのだった。