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Re: 哀昧喪糊。−あいまいもこ− ( No.25 )
日時: 2015/04/02 18:37
名前: めろんそーだ (ID: hDs6F9Z9)

「勿論。友達なめんなよ」

にかっ、と歯を見せて笑う汐に、安心した。
こいつと友達で良かった、と改めて思う。

「来栖さん、知らないんだよな」

俺のその問いに、彼は小さく「うん」と頷く。
無駄なことは言わずに、相手の話をよく聞く。
これが、汐の良い所だと思っている。

「俺、リュウが行ってから皆にもう一度聞いたんだ。
 来栖萌湖さんを、知っている人を探してさ。
 何人かは知ってたけど、その人たちが言うに…………」
「……解ってるよ」

俺はその言葉を遮った。
もう、あの事実は思い出したくないから。

汐は一言、「ごめんな」とだけ言って、静かになった。

「……来栖さんを、探してるんだ」

そっか。
小さく微笑んで頷く汐。

「きっと、見つかるって。
 そう思ってたんだ。
 なのに……、なのにっ…………!!」

感情が高ぶって、また涙がぼろぼろ零れる。
汐は黙って俺の話を聞いてくれていた。
それだけで十分だった。

「……俺、来栖さんのこと、何も……わかってなかった…………っ」
「そんなこと、ないと思うよ」

突然口を開いた汐に、顔を上げた。
彼は俺のほうを見てにこ、と笑っている。

「今まで独りぼっちだった来栖さんを見つけてあげたのは、お前だろ?
 友達になれたのはお前だろ?
 だったら、それまでのことが無駄だったみたいに言うなよ……」

「………それは」

「今までの来栖さん、どんな表情だった?」

「……あんまり、笑わない人だった」

それならさ、と問いを重ねる。

「リュウといるとき、どんな表情だった?」

言われて思い出してみる。
いつも優しくて、あったかくて。
何より彼女は…………

「笑顔、だった……」

そうだ。
俺はあの優しい笑顔に見惚れて、友達になっていったんだ。

「それってさ。
 リュウといたから、笑顔になれたってことだよ」
「俺と、いたから……?」




「______リュウといたことで、少なからず来栖さんの気持ちは変わったんだよ」




そう言った汐は、太陽みたいに眩しく笑うのだった。