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Re: 第一章【時を拒む者の案内】 ( No.4 )
日時: 2015/02/22 21:21
名前: 莢咲フレイ ◆4z4yLUbQKo (ID: jyOVwInT)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

第一章【時を拒む者の案内】


零話 闇に満ちた者 


『昨日、五時半ごろ、××インターチェンジ付近で、乗用車が炎上しました。』
『この事故で、星永市、月乃区に住む琴吹京太郎さん(35)、真奈(35)さん、楓花(12)さん、優真(8)さんが死亡しました。警察によると、……』









「——————……。」
ひたすら、声も涙も出なかった。


弟も、母も父も、誰に書けても電話は繋がらなかった。


「…おかけになった電話番号は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため繋がりません。」
と、トーキーが虚しくかかるのだった。


警察にも電話を掛けた。

「…あの。」
どうしました?と緊急を急ぐような急かし方の警察官だった。

「わたしって死んだんですか?」
そのまま「ツー」と電話は切れた。

イタズラだとでも思ったのだろうか。
所詮小学生だもんね。

わたし。


焦って何も考えられなかった。


翌日、警察署へ自転車で向かった。


「どうしたのかな?」
その年で迷子なのか という扱いだった。

「……今朝、私が死んだ、とニュースでやっていたのを見たんです。私は死んだんでしょうか?」
その後は、わたしの名前などの聞き取りがあり、もう一度調べてみるとのことだった。

自称、わたしの家族は、××インターチェンジ付近で炎上し、黒こげになって死んだそう。
その後、身元の特定と検死が行われ、わたしたちの家族が死亡したとされたらしい。

しかも、アルコールとか見通しが悪いとか、特別な理由もなく、ただただ注意ミスだとされたそうだ。

Re: 蝋燭(ロウソク)の火は溶けることを知らない ( No.5 )
日時: 2015/02/22 21:46
名前: 莢咲フレイ ◆4z4yLUbQKo (ID: jyOVwInT)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

その後のテレビの報道で間違いが伝えられた。

両親と弟は確実に死亡が確認され、わたしは、損傷が激しく、わたしかどうかの確認が出来なかったという。

(わたしは死んだのかな。)

祖父母やいとこなどの親戚は身内に存在しなかった。




———私は今度こそ一人だ。





わたしはどうすれば良いのかな?

涙があふれ出してきて止まらなかった。




隣の家の伊藤さんが、色々と手配をしてくれ、葬式も出来た。
父や母が、伊藤さんと親しくしていたおかげだった。

わたしは死んでいないのだけれど、両親と弟は他界したのだから。葬式もしなければならなかった。

伊藤さんは 落ち込むわたしに、食べさせてくれたし、幾らお礼をしてもすまなかった。


毎日が泣く泣く日々だった。
寂しくて寂しくて、学校も不登校だった。

ある日、わたしは「ゆうなぎ児童養護施設 ゆうなぎ乳児院」という施設へと足を踏み入れた。

伊藤さんの家には、わずかなお金を残した。


「いままでありがとうございました。」
置手紙をし、家の前で深々と礼をした。

Re: 蝋燭(ロウソク)の火は溶けることを知らない ( No.6 )
日時: 2015/02/22 21:46
名前: 莢咲フレイ ◆4z4yLUbQKo (ID: jyOVwInT)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

養護施設の園長に会った。

わたしは、ここで暮らすしかない。


児童養護施設は、保護者のない児童や、虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を入所させて、

そんな児童たちを養護して、退所した者には、相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設だった。


わたしは今までのことを話すと、園長は、心優しく承諾してくれた。
わたしたちの事件は、今やニュース、新聞と報道されているからだろう。


また、伊藤さんが、色々と手配をしてくれた。



僅かなお金を置いて家を出た時から、縁を切ったつもりだったのに。伊藤さんは最後まで色々と世話をかけてもらった。

もう一度大声で、ありがとうございます。と言い、頭を下げた。


わたしは家の荷物をまとめ、ゆうなぎ児童養護施設へと向かった。

残った家は、園長や伊藤さんが何とかしてくれるそうだった。