コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: はじまりの物語 ( No.42 )
- 日時: 2015/06/29 22:00
- 名前: 詩織 (ID: TtFtbd5q)
彼の指した先には、本に半分埋もれたシルファのノート。
開かれたページは、あの魔法文字。
「あ・・。」
しまった。
またこんなものに首つっこんで、とからかわれるのが嫌でとっさに誤魔化したのに。
気まずそうに目をそらすシルファに、リュイは構わず言った。
「お前、今手に持ってる本。ちゃんと読んでみな。」
「え?」
今持ってる本?
これは休憩がてら見ようと思っていた、無関係の・・。
兄を見上げると、意味ありげにニヤニヤと笑って自分を見ている。
よくわからないが、とりあえず言われたとおりに本を開いた。
何気なくページをめくっていく。
そして。
「「あ・・」」
あった。
シルファとイルナリア、2人同時に呟いていた。
そこに書かれていたのは、あの『文字』。
「・・古代魔法の関係だったのか・・。」
「まだほとんど未解明のものだったのね・・。現代の魔法文字ではなかったんだわ。」
気を抜いたタイミングであまりにも軽く見つけてしまった答えに、2人はしばしぼーっとしてしまった。
「兄上、なんでこれを?」
呆気にとられた顔で兄を見上げると、仕掛けたイタズラが成功した子供のような目をするリュイがいた。
「仕事だよ。今関わってる案件で、ちょっとな。内密な調査でその文字を少し調べた。というか、お前らこそなんでそんなもん調べてるんだ?」
リュイの問いに、シルファは口ごもる。
ラヴィンたちと知り合ったことや、最近あの店に入り浸っていること、今もこうして彼らとの遊び(?)に夢中になっていることなど、兄には何も話していない。
からかわれるのが嫌だったのと、最近、王宮での仕事が忙しいらしく、兄たちとシルファがゆっくり会話する時間がほとんどなかったからだ。
そんなシルファの様子を見て、まぁいいけどな、と軽く言いながらリュイは部屋を後にした。
これから仕事だから、と言って。
シルファはなんとなく、その姿を見送った。
「なんか、兄上、変?」
「変?どこが?」
シルファの呟きに、きょとんとしてイルナリアが聞いた。
「どこが、って・・・。いつもだったら、もっと容赦ない突っ込みっていうか、意地が悪いっていうか、からかい方がねちっこいっていうか・・」
「・・シルファ、あなた兄様とどうなってるの・・。」
額に手を当てて、呆れたように言うイルナリア。
けれどシルファは真顔だ。
「仕事、よっぽど大変なんですかね。なんか・・遺跡調査?でしたっけ。単なる護衛任務だと思ってたけど・・違うのかな。」
「さあ。私も詳しくは聞いてないわ。でも確か、お父様と兄様たち、今回は同じ任務に当たっているって聞いた気がするけど。」
任務に関しては機密事項も多いため、家族といえども全て把握しているわけではない。
2人は顔を見合わせたが、結局分からないものは分からない。
「とりあえす、せっかくリュイ兄様が教えてくれたんだもの。この本を徹底的に調べましょ。」
気を取り直して。
向かいにいたイルナリアはシルファの隣に移動し、2人で頭がくっつきそうになりながら、一冊の本にかじりつく。