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石碑の謎解き〜読めない魔法文字⑤〜 ( No.45 )
日時: 2015/07/05 11:10
名前: 詩織 (ID: TtFtbd5q)

数千年の昔、古代と分類される時代。
異国で使われていたらしいこの文字は、まだ全て読み解かれてはいない。
分かっているのは表音タイプの文字ということ。
いくつかの音の読み方、それらを並べた単語の意味。


シルファとイルナリアはその文献に没頭していった。
途中、食事や修練の時間を挟みながらも、交代で本を読み、必要な資料は書き写す。

彼らにとって、相当興味深い世界だったようで。
と同時に、ぜひとも有力な情報を見つけ出して、帰ってきた友人たちの驚く顔が見たいというシルファの小さな野望もあったりして。
そこから数日間の2人の集中力は目を見張るものがあった。


「ねぇ、シルファ。私思うんだけど・・。」
数日後、一通り調べられることは調べ尽くした頃。
書き出した資料と広げた文献を前に、呟いたのはイルナリアだった。

「これって本当に、村の為に・・宗教的に造られたものなのかしら。」

先に口にしたのはイルナリア。
だが、シルファも全く同感だった。
ジェンとマリーの話によれば、村に点在する石碑は村人の信仰心の象徴であり、祈りを捧げる場所。村の守り神を祀る意味を持つはず。

けれど、魔法使いの目を持つシルファとイルナリアには、全く別のものに見えたのだ。

「手がかりがこれだけじゃ、まだ確証はないですけど、・・」
「この魔法文字の属性と文字を点在させる手法・・、もしかして・・」

すなわち。

「「古代魔法による、魔法装置」」

視線を合わせると、2人同時に呟いた。
「でも、なんでこんなところに?」
シルファの問いに、イルナリアはただ黙って首を傾げた。


・・・・・・・・・・・・
「魔法文字を使って発動させる魔法道具って割とメジャーなんだよ。だからこの手法自体は別に珍しいものじゃないんだ。」

黙って自分の話に聞き入っている友人たちを見回して、シルファは言った。
「ただ、使われていたのが特殊な古代文字っていうのと、今現在誰もその意図を知らないっていうのが気になるところだけどね。」


そこで一旦言葉を切ると、ふぅ、と息を吐いて手元のカップに手を伸ばした。
一気に喋って乾いた喉に、少し冷めたお茶がちょうど良い。
そんなシルファに、ラヴィンが同じくカップを手に取りながら言う。

「じゃあ、つまりさ。村の人たちは神様の為にあの石碑を祀っているけれど、遡ると、本当は別の意図で造られたものじゃないか、ってことね。そしてそれを知らずに、あの村は石碑を守っている。」
「うん。」
彼女の言葉に素直に頷いて、シルファはジェンに目を向けた。
「ジェン、他の石碑のスケッチもある?あと、村の全体図って分かるかなぁ。石碑がどういう形で配置されているかも知りたいんだけど。」
シルファの問いにジェンは
「ああ、ちょっと待ってろ。」
と立ち上がると、資料机の上からノートを手に取りシルファに渡した。

「お前の言うとおり、それぞれの石碑には全部違う文字が彫られてたよ。あとはだいたいだけど、村の地図。それから・・簡単にだけど、村長に頼んで村の過去の年代記も写させてもらった。」
「うわぁー。さっすが!ありがとう!」
パラパラとノートをめくりながら、シルファは嬉しそうに歓声を上げた。