コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: はじまりの物語 ( No.88 )
- 日時: 2015/11/08 14:14
- 名前: 詩織 (ID: 02GKgGp/)
淡く輝く金色の髪と紅い瞳という、ここまで描かれていた女神とそっくりな容貌だけれど。
絵の中の女性は、『女性』というよりもむしろ『少女』と呼べるような年頃に見える。
ラヴィンやシルファと同じくらいの。
確かに美しいけれど、神々しいというのとは少し違った。
同じく優しい微笑みを浮かべてはいるが、それはどこか可愛らしくて。
「この絵、神さまっていうより、人間の女の子みたいね。」
マリーも同じことを思ったようだ。そう言いながら、絵に顔を近づけた。
(だとしたら、誰なんだ?女神に生き写しの『人間』?)
「ねぇシルファ!ここに何か書いてある。これって、あの文字じゃないの?」
「え?!」
マリーの言葉に、シルファも急いで顔を近づけてみる。
確かに、絵の右下隅に小さく書きこまれているのは、あの魔法文字だ。
「ちょっと待って。これは・・・ええっと・・。」
シルファはその文字をしばらく黙って見つめた後、口の中で呟いた。
「・・ユア・・・ラ・・リィ、リー?メイル・・・。」
「どういう意味?」
「ユア、は聖なる、神聖なもの。ラは・・女性。リィ、リーメイル、かな。人の名前?」
「聖なる女性・・。リーメイル。この子の名前かしら。」
2人は、絵の中の少女を見つめた。
「ねぇ、マリー。」
しばらくして。シルファがぽつりと言った。
「なあに?」
「僕、君に聞きたいことがあるんだ。」
「・・・・。」
いつもの彼とは違う、少し緊張の入り混じった声に、マリーは黙ったまま視線を上げる。隣に立つシルファを見上げた。
「ここに飛ばされる前、あの転送魔法のあった場所で、微かに魔力を感じた。今ここに溢れている魔力と同じ質のものだ。あの時、僕はどこかで、この感覚を感じたことがあると思った。それをさっき、思い出したんだ。」
「・・・」
シルファはマリーと目線を合わせるようにしゃがみ込むと、彼女の目を見つめながら言った。
「君と、初めて会ったとき。あの時感じた、僕の知らない魔力の感覚。あれと同じものが、ここには満ちている。」
マリーは口を結んだまま、シルファの瞳を見つめ返した。
ーーーー ー ー ・・・
『・・でも、マリーからは魔法の気配がすごくしてくるんだ。しかもとても濃厚に。』
『なんだろう?よく分からないんだけど、僕が今まで見てきた魔力とは、なんか違う気がする・・・。今まで感じたことのない感覚な気がするんだよなぁ。強力なのに、種類が全く違うっていうか・・。』
『でも、ちょっと事情があって、そういうことにしてる。ごめんシルファ。マリーことは、ここで会ってもそっとしといてあげてくれるかな。』
———— ラヴィンと交わしたあの日の会話が蘇る。
そう、あの時感じた、不思議な魔力。あれは今ここで感じるものと確かに同質だった。
そして、きっとこの古代魔法文字も、そこに繋がっている ————
「君が話したくないことは、聞かないようにと思ってた。僕は、今の君と友達になったんだから。君に嫌な思いはさせたくなかった。」
シルファの瞳には、マリーを気遣う色が浮かんでいた。
「でもね。僕らがここに飛ばされたことに、ここの魔法が大きく関わっている。ラヴィンとジェンを見つける為に、この魔力を知ることがどうしても必要なんだ。」
シルファが言いたいことが、マリーには分かった。
「ごめん、マリー。君の魔力について、・・昔、君に何があったのか教えてくれないかい?」
静かに、真摯な思いを込めて、シルファはマリーに尋ねた。
マリーは、シルファを見つめていた。
目をそらさずに。
そして、小さく頷いた。
「分かったわ。いいわよ、シルファなら。」
そうして、近くの壁まで歩いていくと、壁にもたれるようにしゃがみこんだ。
「そっか。まだ残ってたのね、私の『魔力』。」
憂いを帯びたその呟きに、シルファは両手を握りしめ、マリーの隣へと寄り添うように腰を下ろした。